物語1 レティーシアと私
短期決戦!!
観覧席から怒号のような声や女性の黄色い声など様々な感情が入り乱れた声がする。
「なんということでしょう!!レイモンド王子と思われていた選手が実はスタン選手だったようです!」
当のレイモンド王子は何処に!?
ザワザワとする観覧席。
「やだ・・・さっきの騎士様?」
マリーナが頬を赤らめて言う。
「騎士様、マリーナはこっちです。レティーシア様と間違えてませんか?」
この娘は何を言っているのだろうという目でスタン様はマリーナを見る。
汚物を見るかのような目になった後、無視することを決めたように目を逸らした。
そして口を開く。
「私、レイモンド王子の護衛騎士スタンはレティーシア様に求婚いたします」
大きな声を出しているわけでも怒鳴っているわけでもないのによく通る声が響くと会場は一気にシンとした。
「お受けいただけますか?」
ふっと柔らかい表情になり、見つめられる。
いや、私は王子に廃嫡させるような失敗をさせた後ザマァする予定で・・・
黄金の薔薇を胸の前で両手で掴んだまま固まる。
「ちょっと待って!!騎士様!レティーシア様は王子に婚約破棄されたんですよ!?傷物令嬢ですよ!?」
まだいたマリーナが横槍を入れてくる。
ひゅう・・・と冷たい空気が動いた気がした。
スタンの目が私を見る時とは打って変わって氷点下の目でマリーナを見る。
その後、少し離れた所に控えていた騎士に合図を出す。
騎士達にマリーナが引きずられながらどこかへつれて行かれた。
「スタン様、お申し出は嬉しく思います。ですが私は傷がついた令嬢であり、身分の差というものが・・・」
正直、婚約の申し入れはありがたい。
だけど公爵令嬢である限り家門のことも考えないといけない。
「では、私は王子の護衛騎士を辞職し、隣国の王太子スタンリー・クレドリックとして申し込ませて頂きたく思います」
「!」
えー!?と叫びそうになった。
スタン様は実はクレドリック王国の王太子?
なぜそんな人がレイモンドなんかの護衛騎士やってたの?
なんというか、まぁそんなことより。
「謹んでお受けいたしますわ」
断る理由なんてない!!
観覧席が湧き上がる。
わああああ!と言う声と拍手。
と、そこに。
「ちょっと待て!!!」
顔面を蒼白にしてふらふらな足取りのレイモンドが出てきた。
「隣国の王太子?なんでそんな奴が私の護衛騎士をしていた!?それに入れ替わりをバラすなど!!」
自分で自白しちゃってるよこの人。
「スタンリー様、入れ替わりをバラすとは?」
この際衆人環視の中で自白させちゃおう。
「・・・1試合目が終わった時に王子から2試合目を負けろと命令され、3試合目から王子の甲冑を着てフルヘルムをかぶって自分の代わりに試合に出ろと言われたのです」
「なぜですか?対戦相手に勝てそうにないからでしょうか」
分かってるけど分からないフリして問う。
「急に腹の具合が悪くなったそうです」
ざわざわとする会場。
そこを鎮めたのは・・・
「このような場で王族の醜態を見せたこと、恥ずかしく思います」
リリアナの澄んだ声が響き渡る。
「わたくしは本日、陛下の代理でこの場に立っております。陛下より不測の事態が起こった場合の指揮権を与えられています」
リリアナは睨むようにレイモンドを見る。
「婚約披露パーティでの暴挙、レティーシア嬢への暴言及び侮辱、本日の替え玉、理不尽な命令」
そこで言葉を一旦切り、スゥ・・・と大きく息を吸い込む。
「王族としての品格に欠けると判断します!わたくしは陛下へお兄様の廃嫡を進言いたします!衛兵!お兄様を王族用の軟禁部屋にご案内して!」
「な、なんだと!?リリアナ!お前にそんな権限があるとでも思っているのか!?
「先ほど申し上げました。不測の事態が起こった場合の権限は得ています」
喚き散らしているレイモンドを衛兵が引きずるようにしてこの場から連れ出した。
「さて、それではスタンリー様とレティーシア様の公開告白ですが、わたくしが婚約を認めます」
王族に認められた。
リリアナはニコニコとしてる。
可愛い。
「お認めいただきありがとうございます」
「兄の護衛騎士をしていた詳細は後ほど詳しくお聞かせくださいませ」
「皇帝陛下はご存知ではありますが、話しても良いと許可が下りたらお話しします」
後半ドタバタしたけど、馬上槍試合は無事終わった。
本当はレイモンドが試合中にお腹痛くなって粗相するくらいを狙ってたんだけどある意味結果オーライかな。
これで間違いなく廃嫡され平民落ちして男爵令嬢と放逐されるだろう。
マリーナ男爵令嬢は半分平民の血が入っているそうだ。
きっと下町に降りてもレイモンドを支えてくれるだろう。
知らんけど!
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その後、私は正式にレイモンドと婚約破棄(レイモンド有責)をし、そのままスタンリー様と婚約を結んだ。
私には弟妹がいるので隣国に嫁ぐことになる。
「そばにあなたがいなくなる事だけがとても悲しいわ」
「リリアナ。離れていても心はずっと一緒よ」
手を握り合って別れの挨拶を交わす。
「これでは誰が恋人同士なのか分からないな」
スタンリー様が苦笑しながら言う。
「スタンリー様、レティーシアを必ず幸せにしてくださいませ」
「もちろん」
リリアナが私についてスタンリー様に念押しをしている姿を見て思う。
ああ、幸せだな。
そう思った瞬間。
レティーシアである自分と「私」である自分が切り離されていくのが分かる。
私のままのレティーシアと本来のレティーシアの魂が混ざり合う。
スタンリー様とリリアナと笑って喋っているレティーシアの姿が斜め下に見える。
今きっと私は「私」の姿をしているに違いない。
ああ、レティーシアとして生まれて生きてきた18年間。
残りの人生をレティーシアとして生きることはできないのか。
少し残念な気持ちになる。
そう思った時、どこかに引っ張られる感覚がした。
次の気高き令嬢は一体どんな境遇だろうか?
私の悪役令嬢死亡フラグをぶっ潰す転生はまだ終わらないようだ。
〜物語1 END〜
こんな感じで短編で書いていこうかと思います。




