物語1 馬上槍試合
さぁ、試合だ!
開会の儀は筒がなく終了し、私は観覧席へ、レイモンドは出場者控え室へと向かった。
冷めたものである。
公爵家の観覧席に行くと、なぜか例の男爵令嬢が居た。
「・・・えっと、マリーナ嬢?」
「あっ!レティーシア様!お邪魔しています!」
無邪気に笑って言われる。
いや、おかしいから!!
「あの、あなたの席はそこではないのではなくて?」
「あ、はい!レイモンド王子がここで観覧すると良いと。婚約者席だとかで」
ちっがーう!!
爵位ごと!!
爵位後との観覧席だから!!
ああ、王族席にいるリリアナが遠い目をしてこっちを見ている。
私は扇で口元を隠してコホンと咳払いをする。
「一応お伝えしますとこちらは公爵家の者が観覧する席で婚約者とかは関係がないのですよ」
「そうなんですかぁ?でももう他の場所なさそうなのでこちらで見てもいいですか?」
直球に言われて断りずらい!!
相手にすると疲れる。
「・・・仕方ありませんわね。その席の使用許可を出します。その代わり、騒がないで下さいませ」
「わかりました!!」
お礼を言わんかい。
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なんだか無駄に疲れた気がする。
気を取り直して。
ハンカチの薬剤の効果が出るのはどのタイミングだろうか。
何組かの対戦が終わる。
レイモンドが意気揚々と馬を操り槍を掲げながら出てきた。
右手に槍、左手に盾。
盾で槍を打ち払い、自らの槍で相手を馬上から突き落とすか槍同士がぶつかって粉砕させるとか細かい取り決めは色々あるけどそこまで詳しくは知らない。
とりあえず、故意に相手を殺してはいけない。
馬の上から落ちることもあるわけだから故意なく亡くなることもあるそうだ。
いくら命を落とす危険があっても名誉と賞金を得ることができるから男達は参加する。
もちろん嫁探しも兼ねているけど。
レイモンドの相手は王子派の貴族だ。
試合が開始すると槍を数回打ち合い、相手の貴族が槍を取り落とした。
わざと手から離したように見えたけどね。
そうだろうね。
レイモンドの試合の後にスタンの試合が行われる。
さすが護衛騎士。
危なげなく相手の槍を落として勝利。
チラリとこちらを見たような気がした。
「きゃっ!あの方、今わたしの方を見ましたよね!?」
マリーナ男爵令嬢が頬を赤らめ黄色い声を出す。
うるっさ。
見てないわ。
私を見たんだわ。多分。
ハーフヘルムから見える顔の一部だけでも整っているとわかる。
顔だけじゃなく、鍛え抜かれた体躯。
他の観覧席の令嬢もざわざわしている。
試合を終えた後の控えへ戻っていく後ろ姿を眺めた。
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レイモンドの2試合目も同じような感じで相手が負けた。
卑怯な。
今大会は決勝まで行くためには3試合勝たないといけない。
2試合目を終えたレイモンドの様子がおかしいと気付く。
顔が青ざめていてひどく汗もかいているようだ。
慌てたように試合後、控えへと馬を走らせていた。
これはあれね。
薬剤が効いてきたに違いない。
私は扇で口元を隠しリリアナの方へ視線を向ける。
リリアナがニヤリと笑う。
そこで2試合目のスタンが登場した。
相手はスタンより年上の騎士。
難なく勝つであろうと思っていたら、数回の打ち合いをした時にスタンの手から槍が落ちた。
「え!?」
思わず声が出た。
わざと落としたようには見えなかったけど、スタンがこんなミスをするとも思えなかった。
馬上でお互いの健闘を讃えあってスタンは控えへと戻って行った。
この時、スタンは私を見ることをしなかった。
違和感を覚えながらも試合は進んでいく。
レイモンドの3試合目。
レイモンドはハーフヘルムからフルヘルムに替えていた。
決勝が近づくにつれ激闘を繰り広げるので安全のためにヘルムを替えることもあるらしい。
試合が始まる。
「・・・・」
ちょっと、誰よあれ。
明らかにレイモンドじゃない。
まさか替え玉!?
運営の杜撰さに嫌気がさす。
それとも買収されたか王族命令を出したか。
なんにしても卑怯。
「きゃー!!レイモンド様!!素敵!!」
先ほどの試合とは打って変わって激しい打ち合いをし、見事勝利する偽レイモンド。
観客は人が入れ替わったことに気付いてない人と気付いてる人とさまざまな様子。
偽レイモンドがこっちを見た。
マリーナ嬢を見てるのかな?
細かいパフォーマンスをするなぁ。
そして、4試合目の決勝戦となる。
出たな、偽レイモンド。
相手は第1騎士団の団長だ。
王子派ではないので手加減やわざと負けたりはしないだろう。
第1騎士団の団長は真面目と聞いているし。
試合が始まる。
騎士団長の初手のひと突きを偽レイモンドが盾で受け流す。
その流れのまま今度は偽レイモンドが槍を突き出す。
騎士団長はそれを槍で受け止める。
同じような攻防が数回続く。
実力は拮抗しているのだろうか。
なかなか強いな、偽レイモンド。
ガァン!
と一際大きな音が聞こえたかと思うと、騎士団長の盾が吹き飛んでいた。
それでも試合は続行される。
偽レイモンドは騎士団長の槍も弾き飛ばした。
ハーフヘルムの騎士団長の目が見開いたのが見える。
両手をあげて降参のポーズ。
観客席が沸き立つ。
「レイモンド王子の優勝です!王子!こちらの舞台へお越しください!」
というアナウンスが聞こえる。
肩で息をしている偽レイモンド。
勝利の雄叫びをあげるわけでもなく、その場で馬から降りた。
スタスタと歩いて舞台の方へ上がっていく。
侍従などが盾と槍を預かる。
「勝利の黄金の薔薇を王子の手に!!」
優勝の証を手渡される。
それを持ったまま偽レイモンドはこちらの方へ向かって歩いてくる。
ちょっと待って・・・
マリーナ嬢にここで黄金の薔薇を渡すの!?
婚約披露パーティの二の舞じゃない!?
レイモンドに恥をかかせる作戦がまさかの私が恥をかく羽目になろうとしてる!?
嫌な汗が背中を伝う。
「レイモンド様ぁ!!」
うっとりとした表情で歩いてくる偽レイモンドを見ているマリーナ嬢。
偽物って気付いてないのか・・・。
ついに、マリーナ嬢の前に偽レイモンドが・・・!
「・・・・」
通り過ぎた!?
「レティーシア様」
「え!?」
レイモンドは私に様付けなんてしない。
そして聞いたことのある声。
偽レイモンドは黄金の薔薇を私に差し出した。
「レイモンド様!?マリーナはこっちですよ!?」
「受け取ってください」
押し付けるように黄金の薔薇を渡される。
う、受け取ってしまった。
「レティーシア様!!その黄金の薔薇はわたしのですよ!!」
横からマリーナが手を伸ばしてきた。
それを遮る偽レイモンド。
・・・いや、
「スタン様?」
「はい」
フルヘルムを偽レイモンド改め、スタンは外した。
その下から現れたのはもちろんレイモンドの金髪碧眼ではなく。
黒髪に赤い瞳のスタンだった。
試合風景を細かく書くかルールとかも悩んだけどメインはそれじゃないからサラッとしたよ!




