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銀狼物語 ~森で出会った銀狼と紡ぐ運命の物語~  作者: ななお
第一部 第五章 千年前の真実

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第七十七話 外伝:シェザール編 神が落ちた日

「俺の名は、シェザール。この名は魔王様がつけてくれた」


「俺だけの魔王様は、ディグラード。この名は俺が後につけたものだ」


俺と魔王様の出会いは、千年くらい前だ。

今の魔王が、封印されて間もない頃だった。


――おっと、これ以上は本編の核心に触れてしまうからな。今は伏せておこう。


俺はそのころ、小さな魔物だった。

力もなく、ただ小さく怯えているだけの名もなき存在だった。


森にいたころ、地上の街で大きな光の爆発があった。

俺は、興味本位で見に行った。

地面は大きく円形に抉れ、焼け跡だけが残っていた。

街も木々も泉さえも、何もなくなっていた。


そのくぼみの中心に、魔王様がいた。


「初めて見た、神が落ちるところ」


白い姿は、漆黒の姿に変わっていった。

そして、美しい姿とは裏腹に、ものすごい魔力を放っていた。

俺など、近づいただけで、一瞬で消し飛びそうだ。


全てが終わった後、魔王様はずっとそこに立っていた。

俺はずっと見ていた。

何日も、そこに立っていた。

晴れた日も、雨の日も、嵐の日も、雪の日も。

人間の時間で百年くらいたった。


ある日、勇気を出して、魔王様の魔力に触れないぎりぎりの距離で声をかけてみた。


「おーい、何をしているのですか」


こちらを見た魔王様は、顔を緩ませ、気を収めてくれた。


「お前は、誰だ」


「私は、何だ」


「気づいたら、ここにいた」


「何も覚えていない」


魔王様は、誕生の衝撃で全ての記憶を失っていたようだ。


「でも、言葉は話せるな」


そう言って、少し自嘲気味に苦笑いをしたその顔に――俺は完全に惚れてしまった。


「こんな何もない場所にいては何です。俺が、案内しますよ」


「優しいな」


「お前、私と契約するか」


魔王様は、記憶がなくてもそういうのは覚えているようだ。


「その姿では、すぐ消し飛んでしまいそうだ」


そうして、主従の契りを交わして、今の名と姿を手に入れた。


男でも女でもなかった俺に、初めて形が与えられた。


「美しいな」


魔王様は、そう言ってくれた。

けれど、俺は心の底からこう思ったのだ。


「あなたの方が、断然美しいです」


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