最悪な出会い(予兆)
二人はなんとなく気まずいまま二の街に戻った。ギルドに行き魔石を換金し、あてもなく歩きまわっていた。すると覚えのある匂いが漂ってきた。辺りを見渡すと、二人の大好きなサンドウィッチ(魔物の肉が甘いタレで焼かれ、新鮮なレタスたっぷりと、少し辛いソースがはさまっている。)の露店があった。
「あっ・・・。」
二人は互いの顔見ると、クスクス笑い出した。レナは小走りで露店に向かい、サンドウィッチを食べながら戻ってきた。
「はい、ラピのサンドウィッチ。なんかね、イチの街から出張だって!ラッキーだよね!やっぱりいつ食べても美味い!」
「レナ、なんだか、ほら、口にたくさん詰め込む小動物みたいだよ。」
ラピは腹を抱えて笑っている。レナはその様子を見ていたら、こちらの世界にきて、初めて心が満たされた事に気づいた。
◇◇◇◇◇
二人の行動の一連を、少し離れた場所から眺めている男女がいた。男は金髪に水色の瞳で綺麗な顔をしていたが、傲慢そうな顔つきだ。女の方は赤く長い髪、紫の瞳をしていてスタイルも良いが、こちらも傲慢そうな顔つきだ。二人が綺麗な顔とはいえ、レナとラピの綺麗さに比べたら劣っていた。この二人は二卵性の双子、兄妹だ。
「あの女、見た事ないくらい美人で可愛い。絶対俺の女にする。俺の顔で見つめれば、直ぐにメロメロになるさ。これまで落ちなかった女なんていないからな。たくさんの女を落としてきたけど、あの女は格別だ。」
「私もあの男絶対手にいれる。私の美しい顔で見つめてあげて、少し胸を押し付ければ落ちない男なんていないもの。あんな最高級の男他にいないわ。」
「さて、どうするかな・・・」
◇◇◇◇◇
レナとラピは今日も朝から討伐に出て換金し、二人の大好きなサンドウィッチの露店で昼飯を済ませようと思っていたが、露店は見つからなかった。どうやらイチの街に帰ってしまったようだ。仕方なく街の酒場で昼飯を済ませる事にした。
「あぁ残念。」
「昨日はあんな幸せそうに食べていたものね。」
ラピはまた腹を抱えて笑い出した。
「ちょっとー、そんなに笑わなくてもいいじゃない!」
二人は腹を抱えて笑い合った。
「あの、すみません・・・。」
二人のテーブルの前に綺麗な顔の男女が立っていた。
「えっと・・・。」
「初めまして。俺の名前はロキ、こいつは双子の妹ソフィー。」
「初めまして!ソフィーです!」
「初めまして・・・。私はレナ。こちらはラピです。それで何かご用ですか?」
「えっと、お願いしたい事がありまして・・・。相席させて頂いても?」
レナは立ち上がり、テーブルの上の物を移動させた後、ラピの隣に座り直した。二人を手招きで席に誘導すると、ソフィーはラピの前に座り、ロキはレナの前に座った。
「それで何でしょう・・・。」
「実は先程ギルドから出てきたのを目にしまして、俺達も冒険者になりたいのですが、どんなものか詳しく伺ってみたくて・・・。」
「どうして私達に声を掛けてきたのですか?他にもたくさんいるでしょうに。」
「一番話しかけやすそうに思えたので・・・、あはは。」
ロキはレナを、ソフィーはラピを執拗に見続けていた。 レナは警戒した。
あのソフィーって女、さっきからラピばかり見ている。あれは獲物を狙う女の目だわ。しかも何!あの胸!ムキーッ!!確かに美人で、スタイルもボンキュボーン!だけど、確かに私よりは魅力的だけど、こんな怪しい女にラピは渡さないわ。
同じ時ラピも警戒していた。
この男レナ狙いだな。さっきから舐め回す様にレナを見やがって・・・今すぐにでも殺してやりたい・・・。
「悪いが他の奴にお願いしてくれ。明日には街を出るので申し訳ないな。」
「ごめんなさいね。」
レナとラピは支払いを済ませ店を後にした。
「ちょっとロキ、どうしてくれるのよ!あんな男もう現れないわ。」
「仕方ないだろ!あのレナとかいう女、お前のことばかり見て、俺の事ほとんど見てなかったぞ。なんでだ・・・。あぁ、この俺があまりにもいい男なんで直視できなかったか!だから俺を見なかったのか!うんうん、ますます気に入った!ははっ、かわいい女だ。」
「とにかく追いかけるわよ。私が動くからあんた何もしないで。私が男を落とした後好きにしなさい。」
「はいはい、好きにしろよ。お前が男落とした後、ゆっくり俺の顔拝んでもらうさ。」
二人は小走りで店を出た。
「あのぉ・・・、お待ち下さいラピ様。」
ソフィーはラピのもとに走って行き、わざと転ぶ振りをしながら腕にしがみついた。目を涙ぐませ上目遣いでラピの顔を見つめ、胸の谷間を強調し、思いっきり押し付けた。
「・・・。」
ラピは一瞬にして鳥肌が立った。そして表情が怒りに変った。
「触るな!汚い。」
ラピはソフィーを払いのけた。レナは初めて見たラピの表情と態度に驚いた。
「きっ、汚い?この私が?・・・・。」
ソフィーは初めて男に拒絶され、頭の中が真っ白になった。ロキは少し離れた所で一連の様子を見ていたが、レナに向かって歩いて来た。
「あぁ・・・、妹が悪い。」
えっ、この状況で何で私のところにくるの・・・。
レナは呆気にとられていると、ロキはレナの手を取り顔を見つめ口づけしようとした瞬間、
「えっ、!?や、やめて!気持ち悪い!!」
レナはすぐに手を引っ込め、ラピの側に行き腕につかまった。
「二度とレナと俺に近づくな!」
ラピはレナの手を握りこの場から離れた。
ロキとソフィーは、生まれて初めて言われた異性の言葉に、なかなか理解が追いつかず、しばらくの間呆然としていた。
「えっ、私が汚いってありえないんだけど・・・。だって私よ。私。この美しい顔にこの体。落ちない男なんていないはず・・・。ゆっ、許せない!あの男・・・。ちょっとロキ!ロキ!」
「あぁ・・・。」
「しっかりして!私が汚いって言われたのよ!わかってるの!?しかもあなた、気持ち悪いって言われたのよ!許せないでしょ!!ふ、復讐よ。絶対復讐してやるわ。」
「あっ、あぁ、そうだよな。どんな男も女も俺とお前に惚れない奴なんていないんだ!!現にこれまでずっとそうだった。俺とお前の物にならない女と男なんてあってはならない。そんな事は許されない!痛い目にあわせてやるさ。さぁ、復讐だぁ!!!!」
◇◇◇◇◇
レナとラピは宿屋に戻り、すぐに旅支度をした。
「ねぇラピ、あいつらにまた会ったら不快過ぎるから、街の外まで魔法で移動していい?」
「あぁ、同感!頼むよ。」
二人は街の外に移動した。
「あの二人最悪ね!確かに綺麗な顔してたけどラピにはかなわないわ。」
「確かにね・・・。」
「えっ、ラピあれタイプ?」
「えっ!?そんな訳ないさ!確かに綺麗な顔だとは思うけど、レナと比べたら月とすっぽんさ。全く興味ない。」
「それは言い過ぎ。」
二人は大笑いしながら歩き始めた。




