二人の想い
二人は淡水の村を出て南に進んでいた。
「なんだか機嫌がいいね。ずっと笑顔だ。」
「わかる?寝込んでいる間、ずっと怖い夢をみていたの。」
「どんな夢だい?怖い夢だったんだろう?」
「ものすごく気持ち悪くて大きい魔物に襲われたの。それであらゆる魔法で攻撃するんだけど、全く倒せなくてね、仕方なく走って逃げた。何日も何日も追われて、疲れ果てて、でも執拗に襲ってきて、もうダメだ、死ぬって思った瞬間ラピが現れたの。それで助けてくれた。ありがとうね。すごく嬉しかったんだー。」
「レナを助けられたなら良かったよ。」
「ラピがピンチになったら、必ず助けに行くからね!」
「あはは、ありがとう。」
「ねぇラピ。私あなたに秘密にしている事がある。実は私、違う世界で生きていたの。それで、事故で死んだようで、この世界に転生してきた。前世の記憶は持ったままなの。中身はこの見た目より、だいぶ上なのよ。だから、この世界の事よくわかってなくてごめんね。こんな話信じてくれる?」
「あぁ、信じるよ。レナはそんな事で嘘ついたりしないだろ?」
「ラピは全く・・・。」
「なんだい?」
「なんていうか、ありがとう。」
ラピは優しく微笑んだ。
ラピの記憶が戻ったら、何処かへ帰って行ってしまうのだろうか。嫌だな。離れたくないな。ずっと一緒にいれたら、どんなに幸せだろうか。あぁ、そうか・・・、私は・・・。
「レナ、あそこの馬車の様子がおかしいよ。見に行こう。」
二人は馬車に駆け寄った。どうやら魔物に襲われたようだ。赤ん坊だけが生き残り、両親と幼い子供が血だらけで死んでいた。
「放っておけないな・・・」
レナは手をかざした。
「待って!」
「ん?」
「そんなに力を使ったら・・・」
ラピが話し出した瞬間、頭上からスモーキーが鳴き出した。
「ピーヒョロロロ・・・」
ラピは我に返った。
あぁ、わかっている。わかっているけど・・・
「い、いや、なんでもないよ。」
「変なラピ。」
レナは三人を生き返らせ、安全な場所に移動させてから、ラピとその場を去った。
「目が覚めるまで様子をみてなくて良かったのかい?」
「うん、いいのよ。またお礼言われるのも面倒だし、口止めするのも面倒。大丈夫でしょ。」
二人は二の街に向かって再び歩きだした。レナは相変わらず機嫌が良く、ニコニコしながら弾む様に歩いている。
レナはきっと、あれ以上の事は話さないだろう。静かに死んでいくつもりなのだろうか。レナの瞳の色は変わり始めている。いやだ!レナを失いたくない。だが、それがレナという人間の選択ならば寄り添うしかない。父上との約束だ。もし自分が、レナの生き方の選択に干渉してしまった瞬間、この世界とレナの魂は永遠に消える。
◇◇◇◇◇
二人は二の街に入った。イチの街より建物は派手で、何というか、賑やかを通り越して煩い感じの街だ。
「先に宿探そうか?」
「あぁ、そうしよう。」
二人は街の外れにある、比較的静かな場所に宿屋を借りた。
「ラピ、私買い物に出てくるね。」
「一緒に行こうか?」
「大丈夫よ。えっと、下着とか色々買いたいから一人の方がいいかな。」
「あぁ、そっか、ごめんごめん。俺も回復薬とか買い出しに出るよ。」
「じゃぁ、今日は別行動ね!それじゃ先に出るわね。」
「気を付けて。」
「行ってきます。」
うふふ、さっき素敵なアクセサリーの素材屋さん見つけたのよね。おぉ、この店、この店。
店の中に入ると、色々な石や皮紐、シルバーの素材などが目に入ってきた。レナが居た世界の店とほとんど変わらない。
この品揃えなら思った物を作れそう。さて、何を作ろうかしら・・・。シルバー好きだから、シルバーにしたいところだけど、何かあった時怪我するかもしれないし・・・、ピアスなら大丈夫かな?いや、やっぱり革の方が安心?アンクレットにしたいけど、ブーツだしなぁ・・・。とりあえず、石を先に選ぼう!石なら決まっているものね!
レナは迷う事なく、紺色に不思議な色が混ざっている石と、シルバー色の不思議な輝きを放つ石と、綺麗で美味しそうなブラウン色の石を手に取った。
「う~ん・・・。シルバーと、革両方買って行くか!」
レナは満足気に店を出て、真っ直ぐ宿屋に戻った。
◇◇◇◇◇
次の日の朝、二人は少し離れた森に魔物退治に出ていた。
「う~ん・・・。今日も完璧ね!」
「あはは。」
「これで金銭面は安心!」
「討伐に出なくても、十分じゃないのかい?」
「だって・・・、もしね、ラピの記憶が戻ったらラピの本来の場所へ帰らないといけないじゃない。その時の為に、お金も余裕があった方がいいと思うの。それに・・・、はい!これプレゼント!」
レナはポシェットから革のブレスレットを二つと、ミサンガを一つ出した。
「昨日これ作ったの。ブレスレットじゃ、色々と邪魔になるかとも思ったんだけど、これが一番いいかなと思って・・・。えっとね、ラピは身体能力や剣に関しては無敵だから、敵意があるあらゆる魔法が効かないように付与しておいたよ。攻撃魔法や、身体異常魔法は一切効かないからね。ラピに不利になる魔法は何も効かないからね。ずっとラピを守ってくれるよ。」
「あぁ、ありがとう。この真ん中についている綺麗な石・・・。」
「あぁ・・・、はずかしいけどね、私の髪色。もし別れがきても、たまには私の事思い出して欲しいかなって・・・、私の髪色の石にしました。すみません。自分のはラピの髪色にしてしまいました。すみません。しかもお揃いにしてしまいました。ごめんなさい。」
レナは頬を赤くした。
「でもね、ラピが心底必要ないと感じた時には、自然にはずれるようにしておいたから心配ないよ。それまでは、えっと・・・、何があっても壊れないしはずれないけどね・・・・。すみません。嫌じゃなかったらつけて下さい・・・。」
レナは恥ずかしさのあまり下を向いた。ちらっとラピの様子を見るとなんだか悲しそうな顔をしていた。
あぁ、私間違えたのか・・・。
「ごめん、迷惑だよね。お揃いなんかにして・・・。ごめんなさい。」
ラピは悲しそうに笑った。
「レナ、それは違うよ。とても嬉しいんだ。涙が出る程嬉しい。でもね、俺は記憶が戻ったとしてもずっとレナと一緒にいるよ。もうレナの隣が俺の居場所だからね。ただちょっと、悲しくなったんだ・・・。レナが別れを考えていたことに・・・。確かに俺は記憶喪失だし、いずれ記憶が戻るかもしれない。だからレナがそう考えるのも当たり前だけど、ずっと一緒にいるつもりでいたからさ、なんだかショックだったんだ。」
「でもねラピ、ラピを待っている人がきっといるよ。」
「そうだったとしても、俺はレナと一緒に旅がしたい。ずっと隣にいたい。」
「・・・。」
レナは空を見上げた。そして静かに目を閉じた。ラピにはレナが何かを決断したように見えた。
「そっかぁ、わかった!じゃぁ、そのブレスレットは迷惑じゃなかったのね!よかったー!もう、不安になっちゃったよー・・・。」
レナはラピを見てにこっと微笑んだ。
ラピは革のブレスレットを左の手首に付けた。ブレスレットの石がキラッと輝いた。ラピはその輝きを見つめながら直感した。
瞳の色が血の色になった時、おそらくレナは姿を消すだろう。絶対に離れるものか・・・。
レナはスモーキーを呼び寄せた。
「スモーキーにはミサンガよ。おいしそうな色のブラウンでしょ?左足に付けてあげる。これでみんなお揃いね!」
レナは少し困ったように微笑んだ。




