旅の準備
レナとラピは、イチの街の北側にある高原に来ていた。この辺りには、ランク白(魔物の魔石15000円)の魔物が出没するのだ。二人は旅に出る為の資金を作りにやって来ていた。レナは火魔法をぶっ放し、ラピは剣一本で次々と魔物を倒して行った。数時間で袋一杯の魔石を手に入れた。
ラピはギルドランク銀であった。魔法は簡単な攻撃魔法しか使えない様だが、剣の腕と、身体能力だけは化け物並に強かった。身長は180センチ位で、見た目は細いが、程よく筋肉の付いた綺麗な身体をしていた。漫画に出てくる騎士様みたいな格好で、とても綺麗で凛々しい顔をしている。
「ねぇラピ、ちょっと休憩しない?」
2人は高原に転がっていた大きな岩の上に座った。
「ラピに紹介したい子がいるの。私の大切な旅のお供、友達なんだ。」
レナは鳥笛を吹いた。
「ピーヒヨロロロ・・・」
すると何処からかトンビが現れ、レナに向かって飛んで来た。レナの左腕に止まった。
「父様が旅のお供にって私に預けてくれたの。名前はスモーキー。」
ラピはスモーキーの顔を覗き込み、
「俺はラピ。これからよろしく!」
スモーキーはラピをじっと見つめてから空に飛び立った。
「理由は分からないのだけれど、スモーキーには一切魔法が効かないの。普段は自由に空を散歩しているけれど、鳥笛を吹けばすぐに来てくれるし、常に私の近くにいてくれてるみたい。私が淋しかった時によく話しを聞いてもらっていてね、とても大切な友達なの。とても頭のいい子だから、ラピが困った時もきっと助けてくれる。」
「それは心強い。」
「それとね・・・、ラピにプレゼントがあるの。」
レナは自分のポシェットから、魔法で作っておいた鳥笛と、レナとお揃いのポシェット三つを出し、ラピにプレゼントした。
「スモーキーを呼ぶ鳥笛と、私とお揃いのマジックバック。良かったら使って!」
「ありがとう!大切に使わせてもらうよ。」
ラピは嬉しそうに微笑んだ。レナはその笑顔を見ると、心がポッと暖かくなった。久しぶりに感じた感情だった。
物をプレゼントするのって何年振りだろう・・・。いつも何がいいのか分からなくて、何日も悩んで疲れ切ってしまうから、ずっと避けてきた。けれど、ラピにプレゼントして本当に良かったな。
レナは青い空を見上げながら微笑んだ。
「あとね、ラピと旅に出る前に確認しておきたい事があるの。」
「うん、何でも言って。」
「私、自分を含めた人間が嫌いでね、っていうか、人間に失望しててね、ほら・・・人間って大人になっても不完全過ぎるでしょ、特に子供は嫌いでね、全く人を信じていなくて、基本的に独りを好んでね、なんて言うか、色々考えてしまう所があってね、小さい事でずっと落ち込んだり悩んだり・・・そのくせ人の目を執拗に気にしてね、なんていうか、面倒で最悪な奴なんだよね・・・。自分の心ばかり守ろうとするし、器が小さ過ぎて、臆病で、きっと一緒にいればわかると思うけど・・・。こんな人間と一緒に旅なんて本当にいいの?なんだか、何を伝えないのか訳分からなくなっちゃたけど・・・。」
「どんなレナでも構わないさ。レナは俺を救ってくれた。どんなレナでも大切に思ってる。だから静かに傍に居るよ。一人になりたくなったり、何かあったら遠慮なく言って。俺、何でも受け入れるからさ。」
レナは違和感を感じた。
何かしら?ラピの言葉は・・・。私への感情が少し変な気がする。確かに助けたけど、何でも受け入れるって・・・、ラピはただものすごく優しいだけ?優しい?何か少し違うような・・・。
「レナ、改めてこれからよろしく!」
「うっ、うん。よろしくねラピ。」
今考えるのはやめよう。いざとなったら記憶を消せばいいのだから・・・。
◇◇◇◇◇
二人は街に戻り必要な物を買い揃えた。レナは短剣や回復薬、野宿に必要なテントや着替えなど、あらゆる物を購入した。魔法があるから必要ないが念の為だ。ラピにはまだ何でも魔法で解決できる事は秘密にしているのだ。ラピも武器や回復薬、テントや着替えなど購入した。
「あとは食料だけね!あれ食べたいな・・・」
「もしかしてあれ?」
「そうそうあれ。」
二人は顔を合わせ、にこっと笑った。この街の露店に美味しいサンドウィッチのお店がある。魔物の肉が甘いたれで焼かれていて、新鮮なレタスがたくさん挟まっている。少し辛いソースも入っていて、とても美味しいのだ。二人の好物だった。大量に購入した。マジックバックの中なら腐る事なく新鮮に保てるのだ。飲み物は、水やコーヒー、お茶や甘い飲み物を大量に購入した。
「スモーキーのお肉や魚、お水も購入していこうかしら?」
「スモーキーは何でも食べるのかい?」
「うん。自分で狩りもして食べてるしね。心配はないんだけど、念の為ね。」
「レナは心配性で色々と考えちゃうね。」
「備えあれば憂いなしって言うでしょ!」
「ラピの事も心配してるのよ。私と一緒の時なら怪我してもすぐに治してあげられるけど、離れ離れになったらそうはいかないんだから・・・。念の為、回復薬系はたくさん購入しておいてよ。」
「わかっているさ、色んな薬を数個ずつ買っておいたよ。」
「なら安心ね!」
「あぁ、安心だよ!」
二人は顔を合わせ、また笑いあった。
◇◇◇◇◇
二人は宿に戻った。買い物であまったお金は全てラピに持たせた。レナには一人の時に貯めたお金がたくさんあった。結構な数の物を購入したが、お金はまだまだたくさん残っていたので、しばらくの間お金の心配をしなくても大丈夫そうだ。
「明日の朝出発ね。今夜はゆっくり身体を休めてね。」
「お休みレナ。」
「おやすみラピ。」
レナはシャワーを浴びベットに入った。
ラピはとても強くて、優しくて静かで穏やかな人。あの瞳、本当に綺麗で怖いくらいだな。全て見透かされてるみたい。まだラピの全てを信じきれない。でも、嫌いじゃないな。父様がくれた世界。思った事は言おう。実行してみよう。全て夢だと思えば自由になれるはず。自分の心を自分でがんじがらめにしてしまっていた世界とは違う。必死に心を守っていた世界とは違うのだから・・・
明日から楽しみね。スモーキーとラピ。なんて素敵な仲間なのかしら・・・。大丈夫、大丈夫・・・
レナは深い眠りについた。
次の日の朝、
「おはようラピ。」
「おはようレナ。」
「お腹すいたし、露店で何か買って食べながら出発しましょう。」
「うん、いいね。やっぱりサンドウィッチ?」
「あは、サーモンが挟まってるのがいいな。あと濃いコーヒー。」
「うん、いいね。それにしよう。」
二人は露店でサンドウィッチとコーヒーを購入し街を出た。
「右行く?左行く?」
「棒を倒して決めましょう!」
レナは近くに落ちていた棒を拾い上げ、地面に立て、手をぱっと離した。
「右ね!」
二人は顔を合わせ微笑んだ。空はどこまでも青くて、二人を歓迎しているように見えた。




