岩の街(後編)
翌朝ラピが食堂に降りていくと、レナが既に座って待っていた。
「おはようラピ!」
「おはよう!よく眠れたかい?」
「えぇ、昨夜はスモーキーが一緒に寝てくれたの。朝起きたらいなくなっていたから、今頃自由に空を飛んでいるわ。」
「へぇ、スモーキーが・・・。」
「ラピ、私今夜片付けてくるね。」
「ん?何をだい?」
「この街の問題よ。」
「えっ・・・。」
「とりあえずご飯食べて、部屋でゆっくり話ましょう。」
二人は朝食をとった後レナの部屋に移動した。
「いったいどういう事だい?そりゃ、レナの力なら簡単だろうけど・・・。」
「子供もいなくなってるって言ってたから早い方がいいと思うの。これ以上怪我人でるのも嫌だしね。」
「心配だから俺も一緒に行くよ?」
「ありがとう。今夜街の全ての生き物には眠りに落ちてもらうわ。それで街全体にバリアを張って行く。私が動いたこと誰にも知られないようにしたいもの。」
「レナに任せるよ。俺はレナの護衛だ。」
「そうね!ラピが居てくれるのが当たり前になっているし、精神的にも安定しそうだわ。」
◇◇◇◇◇
「そろそろいいかしらね。まずラピには身体強化をっと・・・。ラピはとっても強いから必要ないかもだけどね!」
「ありがとう。助かるよ!」
「次は街全体ね。外に出ましょう。」
二人は街の中心に移動した。レナは手をかざし眠りの魔法をかけた。道を歩いていた人達が次々と眠りに落ちていった。
「よし!みんな眠りについたね。次はバリアね。」
レナは再び手をかざし街全体にバリアを張った。
「うん。これでオッケー。行きましょうか。」
レナは手をかざし魔法を使って東の出入口前まで瞬間移動した。洞窟を抜け岩山に囲まれた道まで出た。
「ここからはいつ魔物が出でくるか分からないから気をつけましょう。」
「どこら辺に洞窟があるのかな?左右見ながら進まないといけないね。」
「私は左側を見ながら行くわ。」
「あぁ、じゃあ俺は右側を。」
百メートル程進むと魔物がポツポツ現われ始めた。
「燃えろ。」
レナが魔法で次々倒していった。落ちた魔石を拾いながら更に百メートル程進むと魔物が大量に襲い掛かってきた。
「消えろ。」
レナが魔法を発動させると、丸い黒い闇のようなものが現われ、魔物たちはそこへ次々と吸い込まれ消えて行った。
「一緒に魔石も消えてしまうようだがいいのかい?」
「えぇ、この先は諦めるわ。岩の街では魔石換金しないつもり。これが終わったらすぐに街を出たいの。」
「徹底してるね。」
「えぇ、穏やかに暮らしたいからね。自分の行動の何かがきっかけになって、面倒事に巻き込まれていったら最悪だからね。」
「あぁ、あれが洞窟じゃないか?」
少し先の右側に大きい洞窟が見えた。
「とりあえず入口付近の全部消さなきゃね。」
「よろしく頼む。」
レナは洞窟付近の魔物を一気に消し去った。二人が洞窟に入って行くと二股に分かれていた。
「ちょっと待って・・・。」
レナは手をかざし静かに目を閉じた。洞窟内を探っているようだ。
「右側には何もないみたい。魔物が数体いるだけね。後回しでも大丈夫だわ。。左側は結構な数の魔物と、魔物以外の気配がいくつかあるわ。」
「そうか、じゃあ左側だね。」
二人は左側の道を歩いて行った。
「なんていうか気味悪い道ね。ジメジメ。」
「レナ、この先少し広くなっているみたいだよ。」
二人が広場に出ると、禍々しい気を放っているカエルみたいなとても大きい魔物がいた。どうやらその禍々しい気が魔物を生み出しているようだった。
「うぇ・・・。カエルじゃない!しかもバカでかくて気持ち悪いんですけどー!!紫色なんてありえないから・・・。うぁー、ヌルヌルって・・・。ヌルヌルって・・・。」
「レナ危ない!」
洞窟の天井付近にいた魔物達がレナに向かって襲い掛かってきた。ラピはあっという間に剣一本で全滅させた。
「ありがとう!上にいたのは何だったの?イモリに羽が生えたみたいな・・・。うわぁ、考えるのやめよ。」
ラピはレナを見て笑った。
「さぁ、消しちゃって。」
「任せて!」
レナは手をかざし、
「さぁ、ヌルヌルよ消えちゃって下さい。」
魔物と禍々しい気は一瞬にして消え去った。
「はぁ、小さいのだって本当に気持ち悪いのに、ばかでかいなんてありえない!」
「ははは・・・・。」
「ラピ笑い事じゃないのよ!」
「はいはい。カエル見た瞬間のレナの顔がおかしい・・・、い、いや、可愛くって・・・。」
「失礼しちゃうわ。私虫とか爬虫類系本当ダメだから・・・。しかもでか過ぎですから!」
「ごめんごめん。」
「さてと、あとは残りの魔物を消してっと・・・。あれ?ヌルヌルと共に消滅しちゃったみたい。それじゃ魔物以外の気配の所に行ってみましょう。」
「どこから気配が?」
「来た通路の右側に細い通路があるみたい。そちらの方からだわ。」
二人は細い通路を見つけ入っていった。人が一人余裕で歩けるくらいの道幅だ。しばらく歩いて行くと突然何かが右側からぶつかってきた。
「えっ・・・。」
レナは何か生暖かいものが右腹から垂れている事に気付いた。
「これって・・・。」
「レナ!レナ!」
レナはその場に座り込んだ。ラピはレナを支えた。
「うぁーーーーーー!!!!」
角がある赤白い色の子供が近くで叫んだ。子供は血だらけのナイフを握りしめ座り込んで震えていた。
「ご、ごめんなさい。ごめんなさい。魔物かと思って・・・。僕・・・、僕・・・。」
「あはは、すぐに治るから大丈夫よ。」
「レナ・・・。」
レナはラピに小声で話しかけた。
「ラピ、回復薬飲ませてくれる?自然治癒の事を知ったらびっくりしちゃうわ。」
「あぁ、わかったよ。」
ラピはレナに回復薬を飲ませた。
「ほら!薬飲んだし大丈夫よ!それよりあなたはそこの通路から来たのよね?奥には何人いるの?」
「僕入れて五人。僕は身体能力が優れているか、みんなを守らなくちゃって思って・・・。ごめんなさい。突然足音が聞こえてきたからとうとう魔物がこちらに入ってきたのかと思って・・・。」
「魔物に連れてこられたのかい?」
「違う・・・。魔物が出たって聞いて、興味本位で洞窟に入ってしまったんだ。そうしたら魔物の数が急に増えていってここから出られなくなった。」
「じゃあ、攫われてきたわけじゃないんだね?」
「うん。」
「よく頑張ったわね!怖かっただろうにあなた偉いわ。」
「うん・・・。」
「あっ、ほら!もうほとんど痛くない。仲間の所に案内してくれる?」
「うん。本当にごめんなさい。」
通路を入って行くと少し広くなっており、そこに子供達がいた。通路が狭かったせいで魔物は入ってこれなかったのだろう。
「さあ、街に帰ろうか。疲れただろうからみんな眠るといいわ。次目が覚めたら街に居るから大丈夫よ。」
レナは子供達を眠らせここでの記憶を消した。全員で街の中央に瞬間移動し街のバリアをといた。
「さて、この街を出ようかな。」
「あぁ。」
二人は荷物をまとめ東の出入口まで瞬間移動すると、この街全体にかかっている眠りの魔法をといた。
「さあ、行きましょ。洞窟の前を通るついでに洞窟消しておかなくちゃ。」
「レナ、本当にもう治ったのかい?」
「大丈夫!もう完治してるわ。刺された時は、めちゃくちゃ痛くて『このクソガキー!』って思ったわ。
普通に生きていたら刺されるなんて事ないからね。本当痛かった。」
「ねぇレナ、今回みたいに皆眠らせるとか記憶を消すとか方法があったのに、カン達の村では、どうして記憶を消す方法を選ばず、殺しにくるなんて言ったんだい?」
「そうね・・・。カンとネロはいい人達だったわ。だから自分の事忘れて欲しくないって思ったのかもしれない・・・。私は多分・・・、前世で誰とも繋がろうとしなかったし、それを望んでいなかったから、おそらく誰も私を覚えていない。それってちょっと寂しいのかなって思った・・・のかもしれないわ。」
「そうか・・・。俺は何があろうと絶対にレナの事だけは忘れないよ。」
「ふふ。ありがとう。」
「ところであの街の人達さ、一斉に討伐に行ったらびっくりするだろうね。」
「あはは、そうだね。洞窟消しちゃったしね!」
「う~ん。月がきれいだなー!」




