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岩の街(前編)

 二日程森を歩くと、突然洞窟が見えてきた。洞窟の入り口に、『岩の街入口』と書いてあった。


「ここが街の入口のようだね。」

「こんな入口ってあるのね・・・。ちょっと入って行くのに抵抗あるわ。」

 

 二人は洞窟の中を進んだ。洞窟の中は一定の距離ごとにランプが吊るされており、前方がよく見えた。百メートル程歩くと街が見えてきた。


「街の入口なのに全然人とすれ違わなかったね。」

「あぁ、気持ち悪いくらい静かだ。」


 二人は検問所の兵士に身分証を見せ街の中に入った。レナは淡水の村以降、初めて自分達とは違う人間を目にした。


「角の生えた頭に金色の瞳、赤白い肌の人間・・・。」

「鬼だろうね。身体能力が高いと聞いたよ。あと短気。」

「あっちは、えっと・・・、耳としっぽ?」

「狼だろうね。あのしっぽのおかげでバランス感覚抜群と聞いたよ。あと聴力に長けているらしい。」

「普通の人間も結構いるわね。」


私の為に創った世界と言っていたから、私が居た世界と、色んな事が色んな場面で混ざっているわよね。父様(とうさま)適当に創ったのかしら?他にも見慣れない人間がたくさんいるわ。そもそも本当に人間と呼べるのかしら?イチの街の兵士さんは、他族は少なからずいるというような事を言っていたわ。でもラピは、みんな人間で見た目は進化の途中で枝分かれしていった。私達みたいな人間とほとんど能力は変わらないと言っていた。それにしても外見が違い過ぎるし、普通は〇〇〇族って絶対言うわよね。う~ん・・・。いったいどういう事?日本人と外国人みたいな感覚かしら?同じ人間でも、毛髪の色や瞳の色、足の長さとか微妙に違うものね・・・。こんがらがるからそう思うことにしておこう。


「やっぱり見慣れない人間はびっくりしちゃう・・・。」

「どんな生き物だって見慣れないものにはびっくりするさ。レナだけじゃないよ。」

「ありがとう。そこそこ大きい街みたいだからギルドもあるわね。いつも通り宿から探しに行きましょうか?」

「あぁ、そうしよう。それにしてもなんだか街の人達忙しそうだね。」

「宿見つけてからギルドで聞いてみる?」

「うん。そうしようか。」


 岩の街は細長い地形になっていて低い岩山に囲まれていた。レナ達が入ってきた森に続く西の出入口と、岩山地帯に続く東の出入口があった。西の出入口も東の出入口も洞窟を通って出入りする。この街から東にかけて岩山地帯が広がっていた。


「なかなか空いてる宿みつからないわね。ギルドに行く?」

「そうだね・・・。なんだか街の様子も気になるしね・・・。」


 二人は街の中央にあるギルドに行った。中に入ると冒険者らしき者がたくさん集まっていた。


「あの、宿屋を探しているのですが、空いてる宿ってありますか?」

「あぁ、えっと・・・、西の入口付近には何件かありますよ。東の入口付近はいっぱいです。」

「あぁ、西の入口付近かぁ。入ってきた入口なので周りの景色が目に入っていませんでした。ありがとうございます。」

「ところで・・・、なんだか街の様子がおかしい気がするのですが、何かあったのですか?」

「えっとですね、東の入口を抜ける岩山に囲まれた道なのですが、道の脇に突然洞窟ができまして、そこから魔物が大量に出て来るのです。自信がある冒険者が何人か討伐に出たのですが戻って来ていなくてですね・・・。」

「魔物のランクとかわかっているのですか?」

「確実とは言えないのですが、ランク白以上ではないかと・・・。」

「白ですか・・・。」


確か、黄→オレンジ→赤→紫→緑→青→白→銀→金→金銀の順に強くなっていくのよね。パーティー構成の基準が剣と魔法、回復魔法が必要だったはず。


「皆さんちゃんとパーティーを組んで行っているのですよね?」

「はい。ですがギルドランク白の方々でもなかなか難しいようなのです。ランク銀の魔物も少し混ざっているようなので・・・。」

「なるほど・・・。」

「三日後に、一斉に洞窟に乗り込んで退治する計画を立てているのですが、なかなか一団となれず揉めているのですよ。」

「はぁ・・・。街のリーダーとかいないのですか?」

「いますよ。二人いるのですが、この街には我が強い人間が多いので、意見がぶつかり合ってなかなか話が進まず困っているのです。他の街から来た冒険者も結構な数いるのでなおさらです。みんな言いたい放題で全く・・・。子供もさらわれているというのに・・・。」

「ギルドが介入すればよいのでは?」

「それが・・・。この街のリーダーが特に我が強いうえに短気で凶暴でして・・・、その、色々と・・・。ここのギルド長はおじいちゃんでして・・・。」


わぁ、段々小声になっていったよ。ギルドが管理しているといっても当てにならないのね。


「色々と教えて頂きありがとうございました。」

「いえいえ、仕事ですので・・・。」


 二人はギルドを出て西の入口付近に戻り、空いている宿屋を見つけて一息ついた。


「はぁ・・・、どう思う?」

「あぁ、なんていうか、揉めてる場合じゃない・・・。」

「そうよね・・・。こういう時に上手くまとめるのがギルドでしょうに・・・。」

「まったくそうだね。ギルド長をもっと力のある若い者に任せた方がよさそうだ。」

「確かに。なんだか無駄に疲れたわ。街の雰囲気もピリピリしていて、私にもピリピリが移ったわ。もう休もうかしら。」

「あぁ。おやすみレナ。」

「おやすみなさい。」


 レナは外の空気が吸いたくなり、窓を開け外を眺めた。するとスモーキーが突然部屋に入ってきた。


「あら、今日は珍しく一緒に寝てくれるの?嬉しいわ!」


 レナがベットに横になると、スモーキーがレナの顔の横にそっと寄り添った。


「あなたから風の香りがするわ。羽がふわふわで気持ちい

い。」


この世界に転生してから色々あったな・・・。私に宿っている力は私の物じゃない。父様(とうさま)から預かったもの。私の願いを叶えてくれる無敵の力。だからこの街の事もやり過ごすなんてできない。おそらく・・・、いいえ、私一人で解決できる事だわ。きっとラピなら賛成してくれる。それと、前の街を出る時荷造りしていて気付いたわ。私の瞳の色薄くなってきている。そろそろ金色の瞳に変わるわ・・・。あと何人生き返らせたら完全な金色になるのか・・・。ううん。そんな事考えない。思いのまま自由に生きたいわ。やれることはやる!それが父様(とうさま)と蟲の神?への恩返しになるのかもしれない。この世界がなんだったとしても、ラピに出会えた事だけは何にも変えられない宝物だわ。


「スモーキーも一緒に旅をしてくれてありがとう。あなたが気持ち良さそうに空を飛んでいる姿も、あなたの鳴き声もとても癒しになるわ。これからもよろしくね!」


 レナは静かに立ち上がり窓の外を眺めた。月が優しくレナを照らした。


『レナよ、恐れることはない。』


 レナはハッとした。突然声が聞こえたような気がしたのだ。でも部屋には誰もいない。


「はは、気のせいね。もう寝ましょう。」

 

 レナはベットに入りそっとスモーキーに寄り添った。


「おやすみスモーキー。」


 


 

 

 



 

 





 


 

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