㉑ユーモレスクの場合
※ふんわりファンタジー
「君との婚約は無かったことにしてもらいたい」
デイジーという名の少女の肩を抱き、そう自分に告げる美貌の青年の顔を見つめる。
期待と緊張、そして達成感に鼻を膨らませているジュリアンは、蜂蜜のような金の髪が眩い、画家に天使のようだと評されたこともある美青年である。
その隣に座るデイジーも、濡れたような黒の瞳が麗しい美少女だった。
並んだ金と黒の色彩は美しく、実に似合いの二人である。
何より二人の距離と、互いを見つめるその眼差しから、恋し合っていることが伝わってくる。
(私も、覚悟を決めなくては)
辛くとも、ジュリアンの婚約者として、決断しなければならぬ時が来たのだ。
いつも手にしている白の美しい羅紗の扇をぱちりと閉じる。
「お二人は真剣でいらっしゃるのね、ジュリアン様」
「勿論だ。私はこのデイジーとの愛のために、全てを投げ出す覚悟でいる」
「ジュリアン…!」
感極まったように互いの手を握り合う若い恋人達。
それを見つめて、一つ、ゆっくりと瞬きをしたユーノは静かに覚悟を決めた。
この二人のために、全てを見届ける覚悟を。
「分かりました。エーズワース侯爵家が娘ユーモレスク、私はジュリアン・コルト伯爵令息様の婚約破棄を受け入れます」
「!恩に着る、ユーモレスク嬢」
喜色を浮かべたジュリアンが感謝の言葉を口にする。
その隣でデイジーもまた、そんな恋人を見つめ嬉しそうに破顔した。
「ではまず、ジュリアン様の髪が全部抜けますけれど」
「「なんで?!」」
ジュリアンとデイジーの呆気に取られたような顔は、仲睦まじい恋人らしく、非常に良く似通っていた。
まぁ、さっきのようなことを告げられれば、誰でもそんな顔になるのかもしれないが。
「そういう“祝福”でしたでしょう?」
「“祝福”?なんだそれは」
「婚約に伴う誓約です。とはいえ、もう十年も前のことですから、ジュリアン様がお忘れなのも無理ありませんわ」
きっと忘れているだろうとは思っていたが、案の定だったようだ。
訝しげな顔で思案し始めたものの、ジュリアンには思い当たることが浮かばない様子だった。
「祝福って何?そんなのあるの?」
きょろきょろと、デイジーが彼とユーノを見やりながら、不思議そうな顔をしている。
デイジー嬢は男爵家の庶子として、長らく市井で育ったそうだから、知らないのも無理はない。
「この国の古い風習ですわ。婚約の祝いの席で、立会人達が妖精の力を借りて授けるものですの。その昔、妖精の国の王が、移り気な人間に嫁ぐ姫を心配し、誓約を結んだのが始まりだったとか」
妖精は、普段はその存在を見ることも感じることもないが、この国の者達にとってはごく身近な、畏怖し敬うべき超常の存在である。
その妖精の名の下に、婚約式の場で互いの親族達が、婚約不履行の際の一種のペナルティを課すのだ。
今では旧い貴族家だけの風習になっているそれは、婚約が“破棄されないこと”が前提の、いわばお遊びのようなものだった。
そこまでの説明を聞きながら、ジュリアンの顔がやや青褪めていく。
「大丈夫ですわ。あくまでも“祝福”ですから、命を取るようなものではありません」
妖精が気まぐれに行使する力の偉大さは、この国の民であれば皆知るところである。
けれど今はまだ自分の婚約者である青年に、安心させるよう微笑んでやる。
「毛が抜けるだけで、おそらく命に別状はありませんわ」
そんな条項をつけたのは確か母の一番上の兄であるアレン伯父だったろうか。
伯父の頭髪は昔から幾分寂しげな様子だったので、その苦しみが分かる故の“祝福”かもしれない。
絶句した様子のジュリアンに、心配そうにデイジーが声をかけている。
「ジュリアン、でもほら髪の毛はまた伸びてくるじゃない!禿げたってきっと変わらずに貴方のことが好きよ」
「デイジー……、そうだな、一時のことだ、君のために耐えて見せるよ」
永久に毛根が死ぬのかは定かではないが、そこは黙っておくのが花だろう。
何かを確かめ合った様子の二人に、ユーノも少しばかりほっとした。
仮にも長年の婚約者だった彼の哀れな姿は、自分としても見たくはない。
けれどこれも全て、彼らの愛のためである。
「お二人の想いが強いものであって、本当に嬉しく思いますわ。残りの条項は、何せ十年前のことでしょう?私もうろ覚えでしたの。ですから今日は、控えを用意しておきました」
背後から足音もなく近付いてきた黒髪の侍女から、丸められた羊皮紙を受け取る。
その紙の巻具合に、ジュリアンが生唾を飲み込んだような気配がする。
「それは……」
「あら、コルト伯爵家にも同じものがあるはずでしてよ?」
控えはコルト家とエーズワース家それぞれに、そして原本は貴族院に保管されている。
とは言えユーノ自身も、中身を見るのは初めてであった。
思いの外嵩張る紙をまとめている、シルク地の緋色のリボンに指をかける。
「ジュリアン様」
不安げな様子でこちらを伺う青年に、ユーノは銀の髪をさらりと揺らし、社交界で妖精のようだと称される美しい笑みで告げてやる。
「大変心苦しいですが……私も、お二人の愛のために耐えてみせますわ」
さぁ、お二人の愛を、見せていただきましょう?
羊皮紙のリストから、まずは順番に読み上げていく。
「これは父の一番上の兄嫁であるディクレイシア伯母様からですわ。『右足の親指だけ、いつも深爪』です」
神妙な顔をしていた二人が、微妙な表情を浮かべる。
気持ちは分かる、嫌なことに違いはないが、思っていたよりも、「そんなものか」という安堵もあるだろう。
「まぁ、その程度であれば……騒ぐほどのことではないな」
「そうよジュリアン、きっと注意して手入れをすれば何とかなるわ」
「そうだなデイジー」
落ち着いて笑みを交わす二人に、ユーノも一つ頷いて、そのまま続ける。
「では次ですわ、これはその一つ下の伯父の妻であるエレノア伯母様から、『いびきが酷くなる』」
以前邸宅にお邪魔した際、仲睦まじい伯父夫婦の寝室が別だと聞いて、少し意外に思ったものだった。
その秘密を、ほんのわずか垣間見たような気がしてくる。
「いびきか、いびき……」
「大丈夫よ、私が耳栓をすれば良いのだもの」
なんとも言えない表情のジュリアンに、デイジーが朗らかに声をかけている。
「デイジー、君は優しいな」
「ええ、デイジー様はジュリアン様を本当に愛していらっしゃるのね」
先程から感じていたが、このデイジーという少女、言葉遣いや所作は粗いが、心根が真っ直ぐなところは好ましく、なかなか気骨がありそうだった。
どうやら下位貴族のご令嬢が、単にジュリアンの美貌と爵位に目を付けた、というわけではないらしい。
(お二人は本当に、純粋な愛で結ばれているのかもしれないわ)
事実、ユーノの言葉に照れるデイジーは愛らしく、彼女の肩を抱き直すジュリアンも幸せそうだった。
「お二人であれば、きっと乗り越えられる気がいたしますわ……では、続けましょう」
「これは私の歳の離れた母方の従兄であるアンディール兄様からですわ。『家名の綴りを必ず間違う』」
これは些か、意地の悪い“祝福”かもしれない。
貴族の契約や手続きを日々取り扱っている、王宮官吏のアンディらしい条項だった。
貴族家の当主ともなれば、それこそ頻繁にサインをする機会があるに違いない。
その度に貴重な契約書や書面を書き損じるとあっては、些か具合がよろしくない。
「そうだわ!部下の人に代わりに書いて貰えばいいのよ」
「デイジー……君は天才だな!」
貴族家当主のサインはそんなに軽いものではないが、確かにやりようはあるだろう。
盛り上がる二人に水を差すのは野暮というものである。
「次は母の二番目の兄であるグレゴリー伯父様から、『鳥の糞に当たりやすくなり、犬に吠えられる』」
「……それは明らかに二つではないか?」
「本当ですわね、残念ながら一条項として記載されていますわ」
グレゴリー伯父の領地は、広大な野山が広がる、緑豊かな大地である。
動物好きでもある伯父の屋敷には、その背に乗れそうなほど大きな犬達が何匹も飼われていたのを思い出す。
彼らを供にして野獣を追い払うのが、領主としての重要な職務でもあり、伯父は勇敢な犬達を溺愛しているのだった。
余程その犬達に嫌われたくはないのだろう。
鳥とセットなのは何故か分からないが……伯父なりの“おまけ”だろうか。
「そうだわ、外出の時は傘を差すのはどうかしら?」
「ああデイジー、君がいてくれて良かった」
順調に彼らの仲が深まっているようで何よりである。
そのことに勇気づけられて、ユーノも次の条項を読み上げるために目を通す。
(まぁ、これは……)
「さあユーモレスク嬢、次は何だ?」
「ええ、次はこちらですわ。『夜会で必ず、家名を呼ばれ間違う』。母方のお祖父様、バルストロード卿の条項ですわね」
これは体面を重んじる貴族としては致命的とも言える。
王宮主催の夜会などでは、読み上げる者もそれなりの役職を持っている場合が多いため、ともすれば主催者側の落ち度にもなりかねない。
何より、毎度毎度呼ばれ間違うのでは、明らかに、妖精の関与が囁かれるだろう。
(これは王宮にも奏上しておかなければならないかしら)
「これは防ぎようがないではないか!」
「後で言い直してもらうわけにはいかないのジュリアン?」
眉を寄せて問いかけるデイジーは庇護欲をそそる可愛らしさだった。
彼女の肩に手を添えて、悲しげな顔でジュリアンは首を振る。
「貴族にとって家名は、至極大事なものなのだよデイジー。伯爵位ともなれば尚更だ。それにこれからは君がいるのに、そんな恥をかくような真似はさせられない!」
「ジュリアン大丈夫、私平気よ」
「デイジー……!」
幸い王宮の夜会はつい先日開かれたばかりであるし、解決策や打開案は、後でいくらでも考えられるはずだ。
思い合う恋人達の決心が揺るがぬ内に、さっさと他の条項を読み上げてやるのがいいだろう。
「お二人の想いに私、本当に感服いたしますわ。では、続けますわね」
そうして羊皮紙の半分ほどに差し掛かった頃だろうか。
母方の伯父の従姉妹からの「枝毛が増える」という条項を読み上げたあたりで、いよいよ耐えかねた様子のジュリアンが声を荒げる。
「待ってくれユーモレスク嬢……!先程から伯母君のまた従兄弟だの、お父上の名付け親の義理の姉上だの、君の親戚は幾ら何でも多すぎるだろう!」
ユーノ自身、手を取り合う二人の様子を見守るのにも飽きてきて、やや機械的に読み上げていたところであった。
見れば、最初よりも痩せたような気がするジュリアンと、その隣のデイジーもくたびれた様子でソファに沈んでいる。
内心で(枝毛が増えるのと、髪が抜け落ちるのではどちらが優先されるのかしら)と、そんなことを思っていたため、少し反応が遅れてしまった。
「恐れながら申し上げます」
ユーノの背後に空気のように控えていた侍女が、静かに前に進み出て、ユーノの隣に立って告げる。
視線を上げた黒髪の侍女は、白く抜けるような肌に赤い唇が印象的な、ちょっと目を引く容姿をしている。
侍女の姿に目を留めたジュリアンの頬が、わずかに赤く染まった。
「こちらにおわしますユーモレスク様は、エーズワース侯爵家、バルストロード公爵家、両家にとって、今代唯一の姫君で在らせられます。そして未婚であるのもユーモレスク様ただお一人。それだけ、ご期待のかかったご婚約でございますれば」
「そうなのです。だから皆、喜んでしまって」
並いる従兄弟達は皆男ばかりで、それもユーノより年嵩の者が多いのだった。
特にエーズワースでは、直系の女児が生まれたのは三世代ぶりということもあり、現当主である祖父の喜びは非常なものだったという。
そんなユーノの婚約に対する親戚達の熱狂が、この過分な“祝福”の正体なのであった。
「ぐぅ……、これではまるで呪いではないか」
赤くなったり青褪めたりと、その顔色が忙しいジュリアンは、ようやくことの大きさが飲み込めてきたらしい。
そう、暢気に侍女に見惚れている場合ではないのだと言ってやりたい。
でなければ、
(無事にお帰りになることは難しくてよ)
「でもでも、妖精は気まぐれでしょう?全部その通りになるとは限らないじゃない?」
ジュリアンを元気づけようとしてだろう、殊更明るい声音でデイジーが言葉を紡ぐ。
「……確かにそうだ。デイジー、君は本当に素晴らしいな……!貴族達の婚約で、そのような古い風習を守っている者ばかりではあるまい。この呪い、いや“祝福”が叶えられるとは限らない!」
「叶いますわよ」
力を取り戻したように拳を握りしめるジュリアンには悪いが、そこはきちんと釘を刺しておかなければならない。
「何故だ?!何故そう言い切れる!」
必死の顔でこちらを振り返る二人に、婚約者が疾うに忘れてしまっているらしい事実を告げてやる。
「エーズワースは妖精の血を引いておりますもの」
「はっ?」
「えっ、素敵!」
呆気に取られた様子のジュリアンと、色めいたデイジーは対照的ですらあった。
デイジーに至っては、両手を胸の前で握り締め、ユーノに向ける視線が一気に煌めいたのが分かる。
人間と妖精の恋物語は、この国では昔から、女性達に人気の物語の一つであった。
「かつて妖精王の下から人間に嫁いだ姫君が、私のご先祖様ですの」
お伝えしていなかったかしら?
そう言いながら首を傾けると、伝説の妖精姫と同じ銀の髪が、ユーノの肩口からさらりと零れ落ちる。
妖精姫の再来だとユーノが称されるのは、決してその美しさからだけではない。
旧い貴族家であればあるほど、その姿が、かつての妖精姫と瓜二つであることを、伝え聞いているのだった。
元々この婚約は、ジュリアンの祖父であるコルト家の先代が若い頃、妖精姫に傾倒し、友人であるユーノの祖父に頼み込んで成ったものである。
だから当然、孫であるジュリアンにも言い含めてあるものだと思っていたのだが。
リストの後半、コルト家の“祝福”の中に、彼の祖父からの条項もある。
「エーズワース家以外の花嫁を得た場合、コルトから籍を抜くこととする」
(十年間婚約者だったジュリアン様の落ちぶれていく姿など、見たくないのだけれど)
ユーノのちっぽけな感傷など、偉大なる妖精達の前では気休めにもならないだろう。
人の営みの中でも、特に恋や婚姻は、昔から彼らに好まれる事象だった。
そんな妖精達に何かを願ったのなら。
当然、それが叶えられる覚悟が必要なのだ。
「さぁ、どう出るかな?あの二人」
黒髪の侍女が、楽しそうな声音で、歌うように語りかけてくる。
そんな無作法な使用人の様子にも、ユーノが咎めるようなことはない。
「どうかしら……出来れば、頑張って欲しいものだけれど」
来た時と同じように寄り添い合い、二人支え合うように帰っていった恋人達を思い出す。
婚約者としての引導は、すでに渡したつもりのユーノとしては……彼らには是非、この妖精達の試練を乗り越え、その愛を貫いて欲しいと願うばかりだった。
侍女はテーブルの上の、誰も手をつけぬまま冷めた紅茶のカップを一つとり、立ったまま口に含んで飲み干した。
そして座っているユーノの肘掛けに腰を下ろし、不躾にその美しい顔を寄せてくる。
「言ってあげなかったねユーノ。君から破棄すれば、あれらは適用されないことを」
そう、あれらはあくまで、“ジュリアンから破棄した場合”、に適用される条項である。
だから解消ないしはユーノ側から破棄する場合には、いずれも適用されないのだ。
「そうね。だってきっと、お祖父様達がお許しにならないわ」
当人であるはずの自分が主張したところで、あの錚々たる立会人達が決して許しはしないだろう。
蜂蜜色の髪をした、天使のような婚約者。
婚約者としての情はあれど、それ以上でも以下でもないのは本音であった。
「デイジー様はなかなか見所のある方だったから……お二人には是非、幸せになっていただきたいわ」
それはユーノの紛う事なき本心である。
彼に特別な感情は持ち合わせていないけれど、それでも、真に恋し合う者を応援したいという人の情は持っている。
自分の肩にするりと巻きついた腕が、女性の華奢なそれから、筋肉質なものに変化していくのを見つめる。
その身に纏う衣服までが一緒に変化するのには、何度見ても慣れないのだった。
至近距離でユーノを見つめる瞳は、先ほどまでと変わらないエバーグリーン。
「カシュ、私、まだ婚約者のいる身なのよ」
「それももうあと僅かだ。僕らにとっては光が瞬くような時間だね。君を手に入れる日が待ち遠しいよユーノ」
黒髪から銀色に変化した髪を掻き上げて、この世の物とは思えぬ美しい笑みが囁く。
「カシュヴァール」
咎めるようにその名を呼べば、肩をすくめながら、とりあえずユーノの上からはどいてくれた。
けれどそのまま、真横に座って腕を回してくる。
どうやら今日は、このまま引き下がる気はないらしい。
ジュリアンと同様に、当然、ユーノから婚約を破棄した場合にもペナルティは発生する。
その一つがこの男、カシュヴァールとの婚姻だった。
上機嫌にユーノの髪を撫で付けている青年は、妖精を父に持つハーフで、その身には、エーズワースでは疾うに失われてしまった妖精の力を宿している。
出会った時に見初めたユーノを、百年でも待つと言って憚らず、ジュリアンと婚姻するつもりだったユーノとしては、未亡人になるまで本気で待つつもりだろうかと訝しんでいたのだった。
けれどそれもめでたく、彼の望みが叶いそうな算段となったのだ。
「どこまで貴方の計画の内なのかしら?」
「ユーノ、僕らには人間の感情をいじることは許されていない。だからこうなったのは、彼らが選んだ結果だよ」
かつて妖精に恋心を翻弄された恋人達の戯曲もあることから、許されていないというだけで、出来ないというわけではないのだろう。
何かしたと確信があるわけではないが、親戚でもないのにリストに名を連ねている彼が、見た目通りの爽やかな好青年であるはずがない。
自分と同じ銀の髪をした彼の、その重苦しいほどの恋情を。
いよいよ、受け止める覚悟を決めねばならぬ時が来たのだ。
「本当に、妖精の気まぐれって分からないわ」
溜め息を吐いて、目の前の華奢に見えてしっかりと男らしい肩にもたれ掛かる。
親戚中が、ジュリアンとの婚約以上に、浮かれ騒ぐのが目に見えるようだった。
もう諦めて、ユーノを溺愛しているらしいカシュに、全部放り投げてしまうことにする。
「妖精は気まぐれだけれど、一途だからね」
嬉しそうな妖精の声に観念して。
ユーノは、新たな婚約者の腕の中で、そっと目を閉じたのだった。
枝毛との兼ね合いで、毛根は多分徐々に失われます。
二十話までの世界線は、魔法や超常の存在がないイメージで書いていたのですが、今回は、ちょっとファンタジーよりの世界でのお話でした。
次回以降は、基本的には現実寄りで、時々こんな風に混ざる予定です。




