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二十四話目、王都の散策と職探し

 「ふう…此処に来るまで、長かったな…」

 隠し通路を出て見えたのは、前に見た事がある屋敷と、スイの親鳥によく似た石像だった。

…似てるっていうか…同じだな…

 「ようやく…最初に来た時と同じ所に来れたんだな…」

 脱走に失敗した時と今とでは、景色も違って見える。

まあ…昼間と夕方じゃあ違うのは当たり前なんだけど…

 「にしても…」

(この辺り、人が居ないね~?)

 スイの言う通り、屋敷の中も周りも人の気配はまったく無い。

昼間なのにこんな静かなのは何故…?

 「まあ、出入りするのに気を遣わなくて済むけどさ…」

 人目を気にせずに出られるのはありがたいんだけど…何だか嫌な感じがする。

…人気が無い上に、ちょっと暗いからかな…

 「…早く此処から出るか…」

 変なのに絡まれても困るからな。

そう思った俺は、そそくさと屋敷を出て行く。

 (何処に行くの?)

「とりあえず…大通りに行こうかなって思うんだけど…」

 そこまでの道が分からないから、前に逃げた門とは反対の方に向かう。

これが正しいのか分からないけど…

 (わたしが飛んで行こうか?)

「駄目。その間俺が動けないから」

(う~…早く外に出たい!)

 文句を言うスイを撫でる事で落ち着かせ、歩いていく。

数分経った頃だろうか、少しだけ賑やかな声が聞こえた。

その声が聞こえた方へ駆け足で向かうと…


 目の前の光景を、何と言い表せばいいのだろうか。

活気に満ちた通り、立ち並ぶ木造の店、石畳の上を歩く人達、

そのどれもが日本では見られないもので、

まるで日本語に吹き替えられた洋画の世界に入ったみたいだ。

 「………」

(人がいっぱいだね~)

「ああ…異世界モノのライトノベルのアニメの風景そのままだな…」

(ライトノベル?アニメ?)

「あ、いや、こっちの話」

 つい目の前の光景に感動して、思った事をそのまま口に出してしまった。

…今後は気をつけないとな…わけの分からない奴と思われないように…

 「まずは、仕事を探さないとな」

(どうするの?)

「問題はそこなんだよな…」

 仕事を斡旋してくれる所があればいいけど、それが無い場合はどうすればいいんだろ…

 「…人に聞いてみるか…」

 地図を探すのは後回しにして、とにかく何処に行けばいいのかをはっきりさせる事にした。

店の人なら何か知ってるかな?

 「すみません。ちょっと聞きたい事があるんですけど」

「はい、何だい?」

 食料品店と書かれた店に入り、誰か居ないかと呼びかけてみた。

すると奥から店主と思わしきやせ型で長身の男性がやってきた。

…俺より頭一つ分大きいかもしれない…

 「あ、の、実は、最近この辺りに…というか…王都に引っ越してきて…」

「そうなのか。だったらうちの店を贔屓にしてほしいね」

「でですね、今、職探し中でして…仕事を探せる所って何処か知りませんか?」

「ああ、それなら商業ギルドに行くといい。この大通りを西にまっすぐ行けば見える大きな建物だ」

「ありがとうございます。早速行ってみますね」

「次に来る時は、店の食材を買ってくれればいいよ」

 気がよく、優しい店主が指を指した方向へお礼を言ってから向かう。

…ちょっとどもってたな…人と会話をする事に慣れないとな。

 (行く所決まったの?)

「何とか、な。目的地も決まったし、行くぞ」

 行くべき場所が分かった俺は、少し頭が出ていたスイを鞄に戻して、

商業ギルドのある西へ向かった。


 「これが…商業ギルドか…」

(大きいね~…)

 食料品店の店主の言う通りに西に行き、商業ギルドと書かれている大きな建物の前まで来た。

商業ギルドはさっきまで居た大通りの店とは違い、石造りの建物だった。

…何か…アメリカの裁判所に近いかな…イメージだけだけど…

 「仕事…見付かるといいけどな~…」

 一抹の不安を抱えながらも、商業ギルドに入っていく。

中は外観とは違って、木造の建物とほぼ同じだった。

石造りなのは外側だけかい…

 「え~っと、受付は…」

(あっち!)

 分かってもいないだろうに適当な事を言うスイを鞄に押し込め、

スイがさっきまで見ていた方を探す。

するとそのもうちょっと左側に受付があった。

…ニアピン…怒りづらいし、褒めたくない…

 「…行くか…」

 今はスイに何か言う事は出来ないと思う事にして、受付に向かった。

それよりも仕事探しの方が大事だからな…

 「あら、商業ギルドにようこそ。何のご用かしら?」

 明るい笑顔で受付の女性が話しかけてきた。

…子供扱いされてる?

 「あの、仕事を探しに来たんですけど」

「貴方、始めて来たの?なら、後見人証明書を見せてもらえない?」

「…えっ?」

「後見人証明書よ。王都で身分を保証してくれる人が書いた証明書。分からないのかしら?」

「あ…最近引っ越したばかりで…証明書が必要だとは知らなくて…」

「そう。まあ人の多い王都でしか使わないものだから、知らなくても仕方ないわ」

「じゃ、じゃあ今日は帰りますね。何も出来そうにないので…」

「次に来る時は後見人証明書を持ってきてね」

 そそくさと逃げるように商業ギルドから出ていき、溜め息を吐く。

 「…仕事探し…難航しそうだな…」

 商人ギルドが使えないとなると…働くのが難しいかもしれない。

いや、それ以前に、後見人証明書とかいう身分証が無いと、王都で活動するのは無理だと思う。

どうすればいいのかな…

 (これからどうするの?)

「ん~?とりあえず、自分の部屋に戻って、後見人証明書をどうするか考えて…」

 スイと二人?で今後の事を考えていると、目の前を様子のおかしい男が横切った。

…何か怪しいな…周りをきょろきょろとしてるし…悪い事でもする気か?

 「あっ…」

 様子のおかしい男は、身なりの良い中年くらいの男性にぶつかると、

男性が持っていた荷物を奪って走り出した。

 「ひったくりか…」

(ねえ?何だかあの人、こっちに向かってきてない?)

 スイの言う通り、ひったくりは正面に居た騎士から逃げるために反対の方向、

つまり俺に向かって走ってきていた。

しかも、俺以外の人は全員端に避けているので、

明らかに俺はひったくりにとって障害物でしかない。

 「そこを退け!」

 案の定、ひったくりは俺に向かってそう言ってきた。

…自分を守るためだから、何してもいいよね?

 「…スイ」

(了解!魔法を使えばいいんだよね?)

「ああ。ちゃんとあの男を狙うんだ」

 スイにそう言って、俺はひったくりを捕まえるために構える。

スイが来てからの一週間、何もただエレナさん達が出て行くのを待っていたわけじゃない。

スイが来て出来るようになった事、前と同じように出来ない事を調べていた。

俺一人では、スイと一緒でも魔法は使えなかった。

でも、スイは魔法が使える。

それだけしか分からなかったが、それだけでも十分だった。

だって、何も出来ない俺の唯一身を守れる方法が見付かったんだから。

 「上手くいくかどうか…」

 魔法を人に向けて使った事は無いので、多少は不安があるが、

それでもスイを信じて任せるしかない。

そう思って、どんどん近付いてきてくるひったくりと向き合って…

 「退けって言ってんだよ!」

「うえっ…!」

 明らかに俺を排除しようと、火の玉を放とうとしてくるひったくりに、

予想外の事をしてきてびびってしまう。

魔法使ってくるの!

 「スイ!手加減なしで思いっきり風の魔法を使ってくれ!」

(水じゃなくていいの?)

「ああ。その代わり、風を起こすだけにしてくれ!」

(分かった!)

 本当なら水の塊をぶつけるつもりだったが、

向こうが攻撃してくるのならこっちも反撃するしかない。

 (いっくよ~…それっ!)

「うおっ!熱っ!」

 火の玉を放たれる前に、スイが突風を起こす。

すると火の玉の近くに居たひったくりは、風で煽られた炎にひるんだ。

その隙を見逃さず、俺はひったくりにつかみかかり。

 「でっ…りゃあああ!」

 渾身の力を込めて地面に投げつける。

 「うっ…ぐあっ…!」

 割とゆっくりと投げられたひったくりは、うめき声をあげてひっくり返った。

「ぐっ…!放せ!」

 まだ逃げるのを諦めてないのか、

暴れだしたひったくりを抑えるために片腕を両手で持った上で更に腹の上に乗って全体重をかける。

すると身動きが取れなくなったからか、諦めて暴れるのをやめた。

 「ふう…何とかなったな…」

(だねっ)

 スイと一緒にひったくりを捕まえられて、ほっと一息吐いた。

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