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二十三話目、脱出の仕方と逃げ道の確保

 スイがやって来てから一週間後、エレナさん達が王都を出発する日が来た。

当然ながら見送りに行く事は出来無いので、今は部屋の中に居る。

 「ふっふっふ…今日から王都を出る準備が出来るぞ…」

 エレナさんにした提案、それは一ヶ月の間は俺が調理場を使って自分で料理する、だ。

これで何で王都を出る準備が出来るのか不思議に思うかもしれないが、

この提案のおかげでセルリアさんはエレナさんに付いて行く事になったからだ。

ただその代わりに、セルリアさんの叔父である医師が、

食料を持ってくるついでに様子を見に来る事になったが。

まあ、それもこれも自分で言った事だから別に気にならない。

 「さて…外に出る前に、言っておくか」

(何を?)

 スイの問いには答えずに、

調理場を掃除してる時に見付けた麻袋を鞄のように仕立てたものの中にスイを入れた。

ちなみに、麻袋の鞄が出来た時に、髪と目の色が変わるか試したところ、

問題無く変わったため、スイは鞄の中に隠しておく事にした。

…スイには居心地が悪いって言われたから、お金が入ったら新調するけど…

 「ルイーザ、見てるんだろ?話があるから出てこい」

 俺がそう言ってすぐに、ルイーザが天井裏から降りてきた。

 「…何?」

「いや、今日まで見てきて分かってるだろうから、一応言っとこうと思って」

「どういう事?」

「こういう事だよっと」

 鞄の中からスイを出して、ルイーザに見えるように抱っこする。

この行動は、ルイーザにスイを見せるだけではなく、俺の髪と目の色の変化も見せるためだ。

 「………」

「あれ、驚いてる?髪の色が変わる事は隠して無かったのに」

「…魔物…?」

「ああ、そっちか」

 てっきり髪の色が変わった事に驚いていると思っていたので、

スイに驚いているとは思わなかった。

 「この子はスイ。一週間前から俺の所に来たんだけど、隠してたつもりは無かったんだけどな?」

「…上からじゃよく見えなかったのよ…」

「そういうものかなぁ…」

 どうやら上からだと、スイが何なのかまでは分からなかったらしい。

…わりと目立つはずだけどな…

 「まあ、そこは置いておくとして」

「…他にもあるの?」

「これで最後だから」

 嫌そうな声でまだなのかと言ったルイーザに、次で最後だからと宥める。

…って、何で宥めないといけないんだよ。

 「これから先、俺が外に出ても俺を追わないでくれ」

「…どうしてそんな事を聞かないと…」

「もし追いかけて来るのが分かったら、逆に追いかけに行くから」

「………」

「分かったなら返事してね?」

「…はい…」

 よし、言質はとった。

これで追いかけてこないだろう。

もしここまでしても追いかけて来た時は、見失うまで追いかけよう。

渋々頷いた様子のルイーザを見て、これで誰にもあの隠し通路を見付からずに通れそうだと思った。

 「それじゃ、俺は行くから留守は任せた」

「えっ…ちょっと待って…」

「冗談だよ」

 困惑しているルイーザを置いて、俺は部屋から出て行った。

当然、鞄にスイを入れて持って行くのも忘れない。

 (良かったの?教えて)

「ん?まあ、ばれてるんなら言った方が良いかなと思って」

 それに、何も言わずに追って来るな、

なんて言ったら言った事を守ってくれないかもしれないからな。

その心配は無かった気もするが。

 「教えてもエレナさん達に知られなければ大丈夫だよ」

(そうなの?)

「そうなんだよ」

(ふ~ん)

 どうでもよくなったのか、それ以上何も言わずに鞄の中に入ったスイを撫でながら、

例の隠し通路へと向かった。


 「…行ったか…」

(中々進まないね~?)

「ああ。騎士が増えてるからな。…行く前に警備を強化されたか…」

 未だに自室の近くでもたついてしまって、中々目的の場所に辿り着けない。

どうやらエレナさんが、この辺りに騎士を増やしたらしい。

…女性騎士なのが気になるけど…

 「でもまあ、抜けられないほどじゃ…って…!」

 隠れていた茂みから出ようとしたら、人の気配がしてとっさにもう一度同じ茂みに隠れた。

誰だ…?さっきの騎士が戻ってきたのか?

 「あ、アルバート王子だったのか…」

 誰かと思いきや、アルバート王子だった。

何をしてるんだ、なんて聞かなくても、俺を探してるんだろうな…

出て行けるまで様子を見ようと待っていると、アルバート王子は女性騎士に話しかけていた。

ここからだと聞こえないけど、何の話をしているんだろうか?

 「…関係無いだろうからいいか」

 そう思って、アルバート王子から離れるように回り道をして目的地に向かう。

少し歩くと、後ろから何やら視線を感じる。

…言ったのに追いかけてきたのか…

 「仕方ないな…」

 くるっと気配のする後ろを振り向き、

ざっ、ざっ、とおそらく居るであろう場所に向かって歩きだす。

すると動揺したのか、面白いほどにがさがさと音を出して逃げていく。

その音を辿って、更に早足で追いかける。

 「あともう少し…!」

 姿も見えず、音だけ立てて逃げる人物にあともう少しで追いつけるところまで来たが、

他の人の声が聞こえて思わず植木の陰に隠れた。

…追いついたら説教しようと思ってたのに…

 「まあ…もういいか」

 これでもう二度と尾行しようとは思わないだろうし、そもそも追いかけるのが目的じゃないしな。

 (わたしが追いかけようか?)

「いや、いいよ。外に出た時にスイが居ないと出られないから」

気持ちはありがたいので、お礼に撫でてあげる。

すると、気持ち良いのか普通の鳥のように鳴いたので静かにするように注意した。

 「はあ…人の気配が増えてきたから、もうすぐ目的の場所に着くよ」

 どうやら追いかけっこをしている内に、目的の場所の近くに来ていたようだ。

 (じゃあ、もうすぐ鞄から出ていいって事?)

「中に入ったらね」

(やった~!なら早く行こうよ!)

「今はまだ静かにして!」

 また小声で注意して、さっきよりは騎士の数が少ない庭を隠れて進んでいった。

…自室の近くより、城の入口の方が手薄なのってどうなんだろ…


 (ねえ~まだぁ?)

「もうちょっとだから、すぐに着くから。…多分…」

 迷路の如き隠し通路を歩く事、体感で一時間。

途中でお腹が空いたと言うスイと、作って持ってきていた弁当を食べたり。

今後の為にと思って、隠し通路の地図を作りながら進んでいった。

 「う~ん…確かこの道を通ったような気がするんだけど…」

 一度しか通ってない上に、また通るとは思ってなかったので、記憶が曖昧なのだ。

だから、不確かな記憶を頼りに進んでいるんだけど…

 「あれっ?行き止まり…」

 何度も何度も、行き止まりになって全然進んでる気がしない。

 「え~っと…この道がこうだから…」

(くう~…くう~…)

 あまりにも外に出られないせいで、スイは俺に抱えられて眠ってしまった。

…まあ…やってもらう事は無いからいいけどさ…

 「あと行って無いのは…この道だけだな…」

 実際には、戻れば別の道があるのだが、記憶にある道は一本だけだ。

という事は、この道の先に外への出口があるはず。

 「よし…あと少しだ」

 行っては戻り、行っては戻りを繰り返して、ようやく見えてきたゴール。

自然と、歩を進める足も早くなっていく。

そして…

 「はあ…やっと見付けた…」

(ん…?外に出られるの?)

 ようやく出口を見付けたと同時に、スイが目を覚ました。

丁度いい時に起きたな…

 「そうだよ。だから鞄の中に入ってね」

(う~…このままがいい~…)

「はいはい…無理言わないで…」

 嫌がるスイを半ば無理やり鞄に入れて、出口に昇るために梯子に手をかける。

 「ここからが正念場…かな…」

 先が見えない事に不安になりながら、手足の震えを抑えて梯子を昇っていった。

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