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殻の都  作者: 鐘雪 華
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9/19

人間

 私はケンタとクリスタを起こした。

 ケンタが、急に起こされたことを文句言いたげに岩を叩いこうとしたが、私が制止する。

 私はハンドサインでケンタとクリスタを岩陰に移動させる。


 岩の振動は徐々に大きくなる。

 何かが近づいている。私は岩陰から外を観察する。

 人間!?

 岩の振動は人間の歩く音だった。

 それに、何やら長い棒を持っている。

 人間はたまに止まって、じーっと岩の間を覗き込んでいたかと思ったら、岩の間をめがけて長い棒を鋭く突いた。

 その棒を引き上げると、魚が刺さっている。

 もし、あの棒で襲われたら、たまったものじゃない。


 ケンタもクリスタも人間が魚を獲っていることがわかったようだ。

 私はケンタとクリスタに岩場をすり抜けて出るように合図した。

 ケンタもクリスタも理解したようで、そーっと岩場をすり抜ける。

 人間も私たちに気づき、棒を岩場に差し込んだが、私は棒をかわして逃げた。


 安全な場所に移動すると、ケンタが「あの人間は俺たちを捕まえに来たのか? 捕まったら、足を切られるのか?」と言う。

「きっとそうよ」


「クリスタ、私たちと他のタコの見分けはつく?」

「何よ急に、他のタコって水槽にいた喋れないタコのこと?」


「そう」

「見分けはつかないわね」


「そうよね…」

「それがどうしたの?」


「…人間は私たちを殺して食べると思うの」

「え? クリス達は私たちの足を切るだけで、殺さなかったわ」


「彼らは私たちを殺さなかったけど、喋らないタコは戻ってこないことも多かったじゃない?」

「そうね… それって、岩場にいた人間は私たちを喋らないタコと思って、あの魚みたいに殺すってこと!?」


「たぶん」

「でもさぁ、岩を叩いて話せば、俺たちは違うってわかるんじゃないか?、そしたら、以前のように水槽に入れられるだけじゃないか?」


「ケンタはあの水槽がいいの?」とクリスタが問いかける。

「うーん。ここは危険だけど、水槽は安全じゃないか?」と細長い魚に噛みちぎられた完全には復活していない手を見せる。

「そうねぇ… 殺されることはないわね」


 ケンタもクリスタも私がクリスと会話を始める前の水槽を知らない。

 奴らが私たちを食べる前に身や内臓を細かく切り刻んで、私には理解できないもので入れては何やら書いていたことを私は何度も見ている。


 私が人間は残虐だと教えても、信じない。

 ここで、もう一度話しても同じだろう。


「クララはどう思うんだよ」

「…細長い魚が入ってこれない場所は安全ってわかったじゃない?」


「そうだな」

「私たちが安全に暮らせる場所を作りましょう」


「それは難しいという話をしたじゃん」

「この岩場をうまく利用すればできると思うの」


「クララ、人間が来るよ。それに、水が浅くなったけど、どうするの?」

「この岩場は細かく入り組んでいるから大きな魚も細長い魚も入ってこれないわ。問題は人間ね。だから、人間から中が見えないように上を塞げばいいと思うの。問題があれば徐々に改善すればいいと思うの」


「なるほどぉ。わかった。じゃここを拠点にして広げていくってことだな?」

「そうね。クリスタはどう?」


「賛成するわ」

「俺はさっきの穴を塞ぐ作業に入るよ」


「ケンタ、完全に塞ぐ必要はないわよ。見えない程度で十分だから」

「了解!」

 ケンタが作業に戻って行った。


 ケンタが移動したのを見計らって、クリスタが小さな音で私に話しかけて来た。

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