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殻の都  作者: 鐘雪 華
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10/20

違い

「ねぇ、クララ、クリスと話をしたくないの? 毎日話していたじゃない?」

「クリスはいろいろなことを教えてくれたわ。けど、同じ人間よ」


「同じようなことをお母さんも言っていたと思うけど…」

 クリスタの母のクリスティは私の子供だ。

 私はクリスに教わった内容を子供達に教えていた。

 クリスタの母は話を覚えるのが少し遅かったので良く覚えている。

 私が子供達を集めて教えているのを見て、クリスは『めだかの学校みたいね』と言ったのを覚えている。


 毎日クリスは私のところに来て話をするが、それ以外にいつもメモを取っていた。

 メモの内容は、手を切った時の再生の状態をいつも観察していたので、私も気になって仲間を見ていた。

 話をする私の子供達は再生が速かった。

 だが、喋らならタコは再生が遅く、切られたら弱って死ぬこともあった。


 クリスタがまだ小さい時、人間がクリスティと喋らないタコを連れて出て行った。

 しかし、帰ってこなかった。

 クリスタには言っていないが、人間は話が得意なタコとそうじゃないタコを比較していたような気がする。

 そして、調べるために人間に切ざまれたと思う。


 こんなことはクリスタには言えない。


「クリスタ、クリスが居ても話しかけちゃいけないよ」

 クリスタが少し不満げな顔をしたが、「わかったわ」と言った。


 すると、ケンタが小魚をむしゃむしゃ食べながら、戻って来た。

「外から見えないように塞いできた」

「はぁ。ケンタは食いしん坊ねぇ」


「何を話していたんだ?」

「クララが、クリスと会っても話しかけちゃダメって言ってたの」


「クリス? 岩場にいたぜ」

「話しかけてないでしょうね?」とクリスタが言う。


「あぁ。俺、手を切る奴、嫌いだから話すわけないじゃん」

 確かに、ケンタはクリスが来ても無視している。


「どうして、クララはクリスと話すんだ?」

「そうねぇ。情報を得るためよ」


「情報?」

「クリスはいろんなことを知っていたわ。あの水槽や設備はすべて人間が作ったものなの」


「手の先が5つに分かれていてカクカク曲がる変な手だけど、器用なんだなぁ」

「カクカクするのは中に骨があるからよ」


「中に骨? 魚みたいに? 人間って魚だったのか? 俺たちと体の作りが違うんだなぁ。俺たちには骨がないよな。体の構造が違うなぁ」

「ふふ。人間の先祖は魚ってクリスが言っていたわ。でも、体の構造は魚とはだいぶ違うわよ。人間の目の上の丸い部分に脳があるらしいわ」


「え? 俺たちの腹の部分だよな? じゃ俺たちの脳は?」

「目の間と足の付け根にあるわ」


「9つ? じゃ俺たちの方が賢いじゃん!」

「それはどうかしら… ケンタはあの水槽を作れる?」


「でしょ?」

 私とケンタは笑ったが、クリスタが考え込んでいた。


「クリスタ、どうしたの?」

「え? 人間は魚が先祖だから私たちを食べるんだぁと思っただけ」

「そっか! だからか」

 私もなるほどと感心してしまった。


「俺たちは魚と会話できないのに、人間とは会話できるよな? 何が違うんだ?」

「クリスは魚が陸上に上がって、2本足で歩くようになって、道具をつくれるようになったって言ってたわ」


「俺たちは2本足で歩かないけど、道具を作れるぜ。じゃ、俺たちの子供もいつか陸上に上がって、人間よりもっともっと賢くなるんじゃないか?」

「そうかもね」とクリスタが言う。


 私は自分の子供達に言葉を教えたが、何度教えても喋れない子がいることを知っている。

 クリスティの子供達も喋れない子がいた。

 私の子供達より、クリスティの子供達の方が喋れない子が多いような気がして、ケンタ達のような想像はできなかった。

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