偵察
私たちは外で眠るのが怖いので、狭い巣穴で眠った。
私たちがどこにでも入り込めるといっても狭い。狭すぎるし、息苦しい。
朝になったので、私は外に這い出し、海水を大きく吸った。
クリスは水槽の水は海洋深層水という海の深い部分の水と言っていた。
それに、濾過というもので食べ残しもいつの間にか綺麗になっていた。
だから、水槽の水の方が澄んでいて清々しい。
だが、ここの水は水槽よりいろんなものが混じっていて、生命の活力があると言う感じだ。
私はケンタとクリスタに少し偵察に行くと言って、巣穴を離れた。
岩場には小魚が多く、見たことがない魚が多い。
ふと、海面を見ると、半透明のタコ?がフワフワ浮いている。
死んでいる?
近づいて、恐る恐る手を伸ばし、半透明のタコの足に触れた瞬間、痛みが手に走った。
『イタ!、なに? 今のなに? 刺された? この子とは友好関係が結べないわね…』
死んだふりで獲物を狙っているの? すごい戦術ね。
私は水面から顔を出して外を見た。
広い! 水槽の場所とは比較にならないわね。
嵐と夜で見えていなかったけど、ここは恐ろしく広い場所なんだ…
あの青い天井はどこまで続いているのかしら?
それに、白いフワフワと浮かんでいるものも高い場所にあって、手が届きそうにない。
あまり離れるのも良くないので、巣穴に戻ったが、ケンタもクリスタもいない。
私が周りを見渡していると、ケンタとクリスタが帰って来た。
「どこに行っていたの?」
「お腹がすいたから、小魚を獲りに行っていた」とケンタは私に小魚を渡した。
「くらら、偵察はどうったの?」
私は問答無用で刺してくる透明タコと、ここが広いことを説明をした。
「へぇ。危険な同胞もいるのね…」
「そりゃそうだろ。ここには色々な魚がいるんだぜ。水槽にも俺たちと会話ができないタコもいただろ? すぐ死んじゃうけど… 変なのがいてもおかしくねぇよ」
「そういえば、私たちと会話できない彼らは水温がぬるくなる期間が一回分ぐらいで死んじゃうぐらい弱いかったね」とクリスタが言う。
会話ができる私たちの同胞タコが死んだところを見たことがない。
それに、会話ができないタコは足を切られたらかなり弱るが、私たちはそれほどダメージがなく、再生速度も速い。何が違うんだろう?
ケンタは考え込んでいる私を気を使ったのか「クララ、あっちに、海水が岩場に当たって揺れが大きいのが問題だけど、たくさん小魚がいたぜ」と明るく言う。
「確かに食料を確保できる場所は重要ね。全員で行きましょう」
「全員? どうしてだ」
「透明タコみたいに知らない相手がいたら危険でしょ? それに周りの警戒も必要でしょ? 一人より、複数いた方が安全よ」
ケンタもクリスタも納得したので、私たちは小魚が多い場所に移動した。
徐々に、海水が浅くなり、海水が岩にあたりものすごく揺れる…
これはゆっくりできないかも…
ケンタが指をさした方向を見ると、小魚が岩場にたくさんいるのが見えた。
岩場の隙間に入り込むと大きな魚から簡単に逃げることができるのね。
ケンタが近づき、手を器用に岩場に突っ込む。
そして、手を引き抜いたら、魚が握られている。
岩場の狭さは小魚にとって逃げ場所かもしれないが、私たちの手は細く強力だから、追い詰めるのが簡単だ。
ケンタが捕まえた小魚を私に渡す。
「あっちの浅瀬に俺たちが入れるけど、大きな魚が入れない空間があるぜ」
私たちはケンタのついてさらに浅瀬を進む。
そして、岩場の隙間にケンタが入っていく時に、手をクイクイと動かす。
私たちもケンタに続く。
中は前の巣穴より広く、岩場が複雑に広がっている。
「あの巣穴より、広いだろ? すぐ近くで小魚が獲れるし、最高と思わないか?」
「海水が入ったり、出たりがずーっと繰り返す場所よ。落ち着かないわ」
「そうか? 小魚を食べた残りカスがすぐに洗い流されるから清潔じゃないか?」
「まぁ。そうだけど… クララ、どう思う?」
「そうねぇ。これだけ入り組んだ場所は大きな魚が入れないだけじゃなく、小魚の匂いが残らないから大きな魚が寄り付きにくいということよね… 安全そうね。海水がバシャバシャとうるさいけど…」
「ちょっと休もうぜ」とケンタは言い、寝てしまった。
私もウトウトしていると、岩に振動を感じて目を開けると、海水が減っていることに驚いた。




