危険な海
私は囲われた水槽からどこまでも続く世界に畏怖と恐れを感じていた。
だから、石を叩きモールス信号で集合するように呼びかけるが、なかなか集まらない。
集まったのはケンタとクリスタだ。
クリオとクリフとケンドルは聞こえていないのか、暗い海のどこかに行ってしまった。
その時、大きな魚が私たちに気づいて近づいて来た。
私は墨を吐き、目くらましをした隙に岩陰に移動した。
「大丈夫?」
「大丈夫だけど… クララ、怖いわ」
「俺もだ。ここに来てそんなに時間が経ってないのに、あんなデカい魚に出くわすということはここは相当危険なんじゃないのか? どうする?」
ケンタの言う通り、ここはかなり危険だ。
だが、大きな魚に簡単に遭遇できるということは、食べる魚も多くいると考えられる。
「おちついて、まずは状況整理よ。水槽に入れられた魚は私たちから逃げるけど、大きな魚は私たちを襲うようね」
「あぁ。あの歯に噛まれると思うとゾッとするぜ」
「私たちには手があるわ。この指サックは水槽の壁を壊せたのよ。これを利用すればいいのよ」
「これで相手を叩くの?」
「叩くというより、突くよ」とクララは素早く手を動かして突く動作をした。
ケンタとクリスタは手を素早く動かして突きの動作をする。
「もっと速く、鋭く!」
ケンタとクリスタは何度か手を素早く動かす。
「これ、疲れるぞ」
「そうね。でも、私たちには強力な武器はこれしかないわ」とクリスタが指サックがついていない柔らかい手を振った。
「それよ!」
「それって、なんだよ」
「私たちの体は柔らかいわ。それに、ここには岩がたくさんあるわ。奴らは岩の隙間には入れないけど、私たちは入れるわ」
「デカい魚が来たら、逃げ込めばいいんだな」
「なら、安心ね」
「隠れやすい岩場を探しましょう」と私が言い、移動を始めた。
私は良さそうな岩場を見つけた。
「ここが良さそうじゃない?」
「そうね」
ケンタの反応がない。
「ケンタ?」
「この叩く動作だけどさぁ。ダメじゃないか?」
「なんで?」
「だって、近くにいた魚は逃げるぜ」
確かに、振動に驚いて小魚は逃げる。水槽でも小魚は逃げていたが、水槽の壁に追い詰めると簡単に捕まえることができたので、気にしていなかった。
「じゃ、手の動きで言いたいことを伝えられないかな?」とクリスタが言う。
「いや、無理だろ」
「確かに無理だけど、逃げる方向とか、止まれとかならできるんじゃない?」
「ま、最低限ならできそうだな。今でも何となく手の動きでわかるし… どうだ? クララ」
「そうね」
水槽にいる時はケンタもクリスタも頼りなくて、何も考えていないと思っていたけど、評価を見直さないとね。
すると、急にケンタが私に体当たりをしてきた。
どうして? と思ったら、ケンタの手が細長い魚を噛んで引きちぎるのが見えた。
クリスタが墨を吐いて移動したのでケンタを連れて移動する。
あの細長い魚は追ってこない。
「ケンタ、助けてくれたのね。ありがとう」
「あいつ、急に出て来たぜ」
「そうよね。ケンタが動くまで気づかなかったわ。ケンタ、手は大丈夫?」
「人間に切られるのと同じだ」
痛いのね…
「クララ、あんな細くて獰猛な魚が岩場に隠れているってことは、岩場も安全じゃないんじゃない?」
「でも、隠れる場所は必要だぜ」
確かに2人のいうことは正しい。
「あの細いのが通れなくて、俺たちが通れるような場所を探すしかないんじゃないか?」
「そうね。クララ、あっちを探しましょう」とクリスタが東を指した。
私はクリスタが動かした手の先の指サックを見て、いい方法を思いついた。




