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殻の都  作者: 鐘雪 華
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3/20

脱出

 明かりが消えており、真っ暗だ。

 以前、同じように真っ暗になった時、水槽の内の水の流れが止まり濁り始めた。

 そして、多くの魚とエビが死に、我々に与えられる食料も減った。

 同じことが起こる…


『クリス』と水槽を叩くが、クリスは来ない…

 私はクリスが、手に水がついたら拭き取るほど水に弱いことを思い出した。

 水が押し寄せて来ているからクリスは来ないな。

 まずいな。嵐はこれから強くなるはずだ。


 脱出した方が良いと直感する。

 どうするか…

 私たちの体は非常に柔らかく、嘴が通れるだけの空間があれば通り抜けできるが、水槽の上部にそんな隙はない。


 周りを見渡すと、壊れた水槽が目に入った。

 この壁は壊すことができないと思っていたが、壊れている。


 指サックで水槽を叩くといい音が出るように試行錯誤していた時を思い出した。

 指サックの先が細い方が、コツコツといい音がでるし、早く動かせることに気づいた。

 ある時、指サックを鋭く尖らせ水槽を叩くと、壁に白い跡がついた。

 その時、クリスが驚いた顔をして、水槽に手を入れて跡を触り、私からその指サックを取り上げた。

 なぜ、鋭く尖らせた指サックを取り上げた?

 何か


 どこだ? 暗くて見えない。

 目を凝らして見ると、白い跡が見えた。

 その白い跡を指サックをつけていない手で触った。

 やっぱり、凹凸がある…

 もしかして、この水槽を壊せる!?


 私は水槽の壁を叩き、ケンタに指サックの先を鋭く尖った尖らせろと命令した。

 ケンタは指示通りに指サックの先を伸ばし、尖らせた。

 ケンタから指サックを受け取り、水槽を強く叩くと指サックの先端が欠けたが、水槽の壁に白い跡が前回より大きくついた。


 もう一度、ケンタに指サックの先を尖らせるように指示した。

 ケンタは渋々私の指示に従う。

 私は前回より、強く、速く水槽を叩くと、また先端が欠けたが、白い跡はさらに大きくなった。

 これを続ければ、脱出が可能だ。


 ケンタに指サックの先を尖らせるように指示したが、ケンタは私の指示に従わずに逃げてしまった。

 確かに、殻を作ることは疲れる。


 欠けた先端が指サックにくっつけばいいのに…

 あ! できるかも! 私は欠けた先端と指サックの間に殻を作るイメージをすると、欠けた先端がくっついた。

 これは楽かも!


 修繕した指サックでもう一度水槽を叩くと、また欠けた。

 殻より硬いものが必要だな。

 私は硬いものを探して水槽の中をウロウロするが、硬いものはない。

 すると、足にチクっと痛みが走った。

 足が少し切れている。

 私の足を切った正体は尖った石だった。

 水槽には尖った石は非常に少ないが、ケンタが水槽で暴れた時に石が崩れ、落ちて欠けた破片はある。


 尖った石を持つと、殻より硬い気がする。

 これを利用すればいい!

 私は指サックの先に小さいが尖った石をくっつけた。


 白い跡がついている箇所をめがけて指サックを強く打ち付けると、今までとは違う振動が発生し、白いラインが水槽にできた。

 しかも、石は欠けていない。

 もう一度叩くと白いラインが増えたと思ったら、壁が壊れ、私たちは水と一緒に床に落ちた。


『ついてこい』と床を叩き、私は進む。

 私はクリスを探しながら見たことがない場所を進むが、懐かしい?と思う方向がある。

 私たちは引き込まれるように進むと、広い空間に出た。


 そこは、水の移動が激しいが、私たちが本来住むべき場所だと直感した。

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