遺伝
ケンタが木を使って石を簡単に移動できるようになったため、拠点の改造を嬉々として実行している。
クリオが連れて来たタコは卵を産んだ。
小さな卵が房状にたくさん連なったものが岩場の天井から密集してぶら下がっている。
それが波で少し揺れている。
ここは、波で海水が動くため、新鮮な海水が供給されるので卵の世話は楽そうだ。
私が卵を産んだ時はあまりピリピリしていなかったと思うが、クリオが連れて来たタコはすごくピリピリしていて私が近づいても威嚇してくる…
敵意がないことを伝えても伝わらないし、クリオが食べ物を持って来てもほとんど食べない。
クリスは私が産卵した時、他のタコに食べ物が取られないようにしてくれたりしてくれた。
キャサリンと倉田はクリスを私から離そうとしたらしいが、クリスは私の世話を続けた。
そのおかげか、私は卵が孵った後も元気だった。
後で、クリスに聞いた話によると、普通のタコは卵が孵ると死ぬらしい。
クリオが連れて来たタコが普通のタコなら卵が孵ると死ぬ…
クリスが私にしてくれたように食べ物の世話をすれば生き延びるかもしれない。
「クリオ、クリオが連れて来たタコだけど… 食べている?」
「少しかな」
「あの子はクリオの言うことはわかるの?」
「なんとなくは伝わっているとは思う」
なんとなくか…
「クリオ、普通のタコは卵が孵るまで卵を守るので、弱るらしいの」
「そうなのか?」
私はクリオが大きくなってからの産卵したタコを思い返した。
ケンティは喋ることができなかった。そして、卵が孵化したら死んでしまった。
「ケンジーのお母さんのケンティを覚えていない?」
「ケンティ? 覚えてない…」
「そう… ケンティは卵が孵化したら弱って死んだわ。弱らないように食べさせなさい」
「わかった」とクリオは魚を獲りに行った。
そういえば、クリスは私達の子供で喋ることができる子とでできない子を調べていた。
私もオスとメスで違いがあり、オスの方が喋る子が多いのに気づいていた。
私も気になったので聞いてみたら、オスとメスで遺伝子が違っていて、オスはZZでメスがZ0だそうだ。
オスはZが2本あるけど、メスはZが1本しかない。
親の特徴が子供に受け継がれるから、オスの方が喋る子が多いのでは?と予想していた。
親の特徴が子供に受け継がれるなら… クリオが連れて来た子は喋れないから、クリオの子供は喋れない子が多そうだ。
喋れない子はしちゃダメなことが伝わらないから困るのよねぇ。
卵が孵るのに30日ほどかかるから、考えるのはそれからでいいか…
私は考えながらケンタが作業をしているのを見ていたら、巨大な魚が近づいているのが見えた。
ケンタは気づいていない。
私は指サックで岩を叩き、ケンタの注意を引いた。
ケンタが気づいて私を見るが魚には気づいていない。
私はハンドサインで後ろを指して魚の位置を示すと、ケンタは魚に気づき、作っていた半円の殻に潜り込んだ。
巨大な魚は噛もうとしたり尾っぽを使ったりしたが、半円の殻はビクともしない。
巨大な魚はケンタを諦め、私を狙って来たので岩場に潜り込んだ。
岩場は巨大な魚の突進で一部砕けたが、諦めて帰っていった。
「ケンタ、大丈夫だった?」
「だ、大丈夫… 吸盤を使って、半円の殻が飛ばされないようにしていたから、腕が疲れたよ。あんな大きいな魚見たことないよ。何あれ?」
「クリスの図鑑のサメかも… でも、あんなに凶暴とは思わなかったわ」
「そうだよなぁ。せっかく作ったのに、ぶつかられただけで壊れるなんて…」とケンタは崩れた岩場を見た。
あの部分はケンタが作った部分か… 岩場の岩を利用しているから、違いがわからなかったがケンタにはわかるらしい。
「もっと頑丈につくらないと、ダメだな」
「ほどほどにね」
ケンタは私の言葉を聞き流しているのか、黙々と補修を始めた。
うーん。オスの方が指サックを作るのがうまかったし、拠点を作るのも好きなようだ。
改めて考えると、オスとメスで違うものなのね。




