閑話:村の会合
私は腕を切られたクララが逃げたのかが気になって、岩場を覗き込んだ。
クララは見当たらないのでちゃんと逃げれたと思う。
でも、私が捕まえようとしたと思っているかも…
「…クリス!」
と山崎さんに呼ばれ、服を掴まれて立たされた。
「変なタコがいるから、危険だ! 見ろ」
クララの指サックがついた腕を見せられた。
「こんな変な殻?がついたタコなんて見たことない。カモメを襲ったのがこいつなら、危険だ」
クララがカモメを攻撃したけど、自衛だからね…
「倉田さんから聞いたと思いますけど、カモメの目の奥には石がありました。殻じゃなかったです」
「そ、そうか。でも、この殻をよく見ろ。サメの歯のようにギザギザがついていて鋭利だ。刺されたら大変だ」
私はギザギザがついていることはクララから聞いていたから知っていたが、手に取って近くで見ると、芸術的な出来だ。
クララ達が水槽にいたときに見せてもらった時は、非常に滑らかだが尖っていなかったが、これは鋭い。
カモメの傷を見れば、クララの腕の動きは相当速いのだろう。
だとすると、かなり危険と考えるのは自然ね。
「クリス、行くぞ」
私はクララがどこに行ったのか調べたい。
「どこに?」
「村で相談が必要だ」とトランシーバを取り出し、危険なタコについて相談があると連絡しながら私の手を引っ張って村に歩く。
そして、海辺の小屋に入った。
小屋には相談役の田中さんが居て、相談役の前にタコの腕が置かれた。
そのタコの腕を相談役が持ち上げてジロジロと見る。
「マダコの腕だよな? だが、この先のは…」
指先で尖った指サックを触る。
「これは、鋭利だな。他の連中ももうすぐ来る。それに倉田も来るはずだ」
ぞろぞろと男性三人とお母さんと倉田さんが入って来た。
うっ。狭い。むさ苦しい…
「座ってくれ。これを見てくれ。山崎のところのせがれが獲ったものだ」
山崎さんが状況を説明した。
お母さんと倉田さんはクララだということがわかっているはずだが、口にしない。
「倉田、これはマダコだよな? お前のところの研究所でもマダコを飼っていたろ? そいつか?」と相談役が言う。
「マダコですね。ですが、こんな鋭利なものがついたマダコはいません」と倉田さんが言う。
研究所は村の人にあまりよく思われていないから、少しあたりがきつい。
「新種か?」
「調べないとわからないですね」
「この鋭いのは何だ? 貝か?」
「調べないとはっきりしませんが、炭酸カルシウムのようです」
「炭酸カルシウム?」
「大理石と同じ成分です。アサリなんかの殻が炭酸カルシウムです」
「そうか…」
「カニの爪とか、歯みたいに見えるな…」と誰かが呟いた。
「倉田、どうなんだ?」
「カニの爪はキチン質と炭酸カルシウムからできています。歯はリン酸カルシウムからできています。成分を分析すればはっきりします」
「そうか。調べてくれ」
お母さんが私の腕を掴んで立ちあがろうとしたら、「まだだ」と相談役に止められた。
「カモメの話もしたい。カモメの死因はどうだったんだ? こいつの仕業か?」とコツコツと指サックを叩いた。
「カモメの傷は脳に達していました。死因はその傷です。脳に黒い石のかけらが残っていました。この殻とは違います」
「何たらカルシウムじゃないということか? 大理石と同じ成分と言っていなかったか?」
「カモメに残っていた黒い石には珪素が多く含まれていたので、違います」
「そうか…」
「カモメは下から攻撃されたように見えた。石を使って攻撃したのか? しかも正確に目に当てて、脳までとどく威力で? そんな生物がいるのか?」と山崎さんが言う。
「水には屈折率があるから、正確に目に当てるなんてできるのか?」
「テッポウウオはできるんだから、できる生物がいてもおかしくないだろ?」
「テッポウウオは淡水魚じゃないか?」
「いや、汽水域に生息しているぞ」
「じゃ、テッポウウオか?」
「バカ、テッポウウオが石を使うかよ」
「じゃ、何が攻撃したんだ?」
その後も結論がでない話が続いた。
お腹空いたなぁ。




