クリオ
「クララ、大丈夫? 怪我しているじゃない?」
私は指サックで岩を叩こうとしたが、指サックはない…
しかたがないので、手近の石を持ち上げて叩く。
「ええ。大丈夫よ。でも、少し休ませて」
私が拠点の岩場の中に入ろうとすると、
「クララ…」と石を叩く音が聞こえたので振り返ると、クリオと知らないタコがいた。
クリオのお腹には噛まれたような跡があり、腕が2本ない。
「クリオ? 酷い怪我ね」
「魚を食べようとしたら、しびれて動けなくなったんだ。そこを襲われた」
毒の針を持つ魚は多いから、どれかはわからないけど…
「他の子は?」
「はぐれた。クララ、頼む。こいつを匿って欲しい」と後ろにいるタコを指さした。
「その子は、普通のタコ?」
「あぁ。喋れない。身ごもっている」
タコのオスは第3腕が生殖用の腕だ。そして、精子をメスの体内に渡す。
メスは産卵のやめに安全な巣穴を探すことになるが、見つかってないのだろう。
ま、仕方がないか…と思っていると、後ろのタコがススっと滑るように動いて私たちの拠点に潜り込んだ。
そして、ケンタがクリスタのために準備した巣穴に引きこもった。
「おい! そこは俺が用意した場所だぞ! どけよ」
「ケンタ、言葉が通じないのよ… 仕方がないわ」
「でも…」
「私はあっちでいいわ」
「わかった。クリオ、こいつの食料は自分で獲ってこいよ」
「ケンタ、ありがとう。クララ、クララも怪我をしているようだが、ここも危険なのか?」
「人間のモリに刺されたの」
「モリ?」
「人間が持っている棒よ。先に鉄で作れられた硬くて尖ったものがついているの」
「へぇ。そんなものがあるのか… ん? ケンタ、指サックを変えたのか?」
「これか? 新作だぜ」
「見せてくれよ」
「いいぜ」
「ねぇ、クララ。人間に襲われたと言ったけど、その人間ってクリス?」
「クリスじゃないわ。知らない人間だったわ」
「でも、クリスも居たのでしょ? 私たちがウツボを攻撃するときの作戦みたいに、クリスの作戦だったんじゃない?」
「そんな感じじゃなかったと思う…」
「そう… クララ、石で叩くのは不便じゃない?」
「そうね」
「ケンタが作った試作品がたくさんあるわ。とりあえずそれを使ったら?」とクリスタが試作品の塊の場所を指さした。
「ケンタはこんなに作ってたの? ん? 何これ?」
私は試作品の中の半円の大きな殻を持ち上げた。
「お腹につけるつもりらしいけど、固定できないから失敗作らしいわ。そっちの筒状なのが最新版でかぶるらしいわ」
「ふーん」
私はこれは、ダメねと思って見ていると、「クララ! 駄作だと思っているだろ? これは貝を参考にしたんだ。これがあれば魚に噛まれても平気なんだぜ」といつの間にかケンタが戻って来て、つつをかぶってお腹を指サックでコツコツと叩いた。
「安全かもしれないけど、動きは遅くならない? それに、細い隙間に入れないと逃げるときに問題よ」
「…」
ケンタが落ち込んでしまった。
「ケンタ、貝みたいに全体を囲えば? そうしたら、どこからも狙われないわ」とクリスタがからかったら、さらにケンタが落ち込んだ。
「貝… 貝みたいに…」
「クララ、どうしたの?」
「全体を囲んでしまえば、中は見えないわよね?」
「そうだけど… 中から外も見えないわよ」
「それはちょっとだけ穴を開けていればいいじゃない?」
「そうね。安全かもしれないけど、何の役に立つの?」
「待ち伏せとか、大きな魚に襲われたときに拠点に戻れなくても、近くに殻があれば逃げ込めるじゃない?」
「持ち歩くと重いぜ」とケンタが役に立つとわかって落ち込みが解消されたようだ。
「食べ物が多いけど、隠れる場所が少ないところに置いたら?」
「それはいいなぁ。安全だ。クリオ、お前も使うんだから、手伝え」
「わかった」




