クララの生い立ち
私は毎日クリスに質問し、海に色々な生き物がいることを知った。
サメみたいに大きく獰猛なものや、陸にいたものが海で生活するようになったクジラもいるそうだ。
「クリス、私たちのことについて詳しく教えて」
「クララ達? そうねぇ… タコは頭足類というものに分類されるわ。それに、優れた再生能力があるわ」
「私たちのことがバレたら、キャサリンは私たちを捕まえると言っていたけど、どうして? タコは他にもいるでしょ?」
「あなた達は特別なの」
「特別? 食料として?」
「食料… そうね。その通りよ。でも、今は友達でしょ?」
また、友達か… よくわからない。
「『友達』がよくわからないわ」
「私とお話しができるでしょ? これはすごいことなのよ。クララ聞いて…」
クリスは真剣な顔になった。
「難しい話で理解できないことも多いと思うけど、聞いて」
「わかったわ」
「タコはね、腕を失ってから数週間から数ヶ月で再生するの。それを早めることはできないかという研究していたの。頭足類はRNA編集が非常に活発で、環境に応じてタンパク質を柔軟に変えることができるわ」
ん? よくわからない単語がたくさん出来てた…
「私たちはタコの腕の再生を速めるために、遺伝子を変更したの。でも、どの遺伝子が再生に関係しているのかはわからなかったの。だから、神経適応に関わりがある遺伝子のWntやHoxを変更して実験したの」
「私達は遺伝子が変更されたということね…」
食べ物なら、海にたくさんある。
どうして、実験をする必要があった?
「ねぇ、クリス、海にはたくさんの魚もいるし、貝もあるわ。遺伝子の変更に時間をかける必要はなかったと思うけど…」
「食べ物は必要だけど… 石油が枯渇して、戦争が起きて世界中で2億人ほどが死んだわ」
石油? 戦争?というのがよくわからないが、2億人!? そんなにいたの?
「その後も争いは続いて、私たち人間はバラバラに生き延びている状態で、何人が生き延びているかはわからないわ。人間は絶滅しなくても文明はかなり後退するでしょうね。私たち人間は石油を使っていろんなものを作ったけど、その石油もないわ。でもね、私たちの生活を良くするための研究は続けるの」
人間が作るものは何でできているのかわからないぐらいすごいものばかりだ。
私たちは殻しか作れない。
なのに、こんな色々なものを作ることができる人間がいなくなる? 食料があれば生きていけると思うけど…
「私たちの再生能力を高めて、食料にして生き延びるということ?」
「食料は不足しているわ。でも、遺伝子の変更は食料のためじゃないの」
「どいうこと?」
「人間は腕を失ったら、二度と戻らないの。私たちはあなた達の再生能力が羨ましかったの。それで実験をしていたの。でもね、クララは話せたでしょ?」
人間の腕から私たちのような吸盤のついた柔らかい腕が生えている想像をした。
だが、クリスが話を続けたので、そのイメージは吹っ飛んだ。
「人間と短い会話ができる動物はいるわ。でもね、クララとはこんな難しい話もできるし、道具も作れるわ。これはすごいことよ」
「それは、遺伝子を変更したからでしょ?」
「賢くするつもりはなかったの。偶然ね」
偶然…
「話ができるからクリスと私は友達なの?」
「そうね… 話ができるだけじゃないと思うけど、私はクララのことは友達と思っているの」
イタ! 私の腕に激痛が走った。
腕を見ると、腕には人間が持っている棒が刺さっている。
私は無理やり腕を引くと腕が切れたが、構わず岩陰に隠れた。
そして、岩場を移動して、様子をうかがった。
私を刺した人間は、知らない人間だった。
その人間は私の切れた腕を掴み上げ、指先の指サックをジロジロ見て何やら言っている。
クリスは私が逃げ込んだ岩場を覗き込んでいた。
私は痛みに耐え、ケンタとクリスタがいる拠点に戻った。




