知識
今日は細長い魚の攻撃で、気合いを入れたがあっさり終わった。
ギザギザをつけた指サックの威力が良かったからだと思う。
怪我はケンタが細長い魚に刺した指サックを引き抜くときに、細長い魚をおさえていた手を少し切ったぐらいだ。
ま、これは不注意だ。
細長い魚の巣穴の中は結構広く、これを活用すれば快適な巣穴になりそうだ。
私は、ケンタとクリスタに巣穴? 拠点?の整備を任せて岩場に向かい、そぉっと外を見た。
昨日より、人間が多い! しかも全員が棒を持って岩の間を確認しながら歩いている。
クリスはいないかと周りを見渡すと、大きな石の上に座って海を見ているクリスを見つけた。
私は岩場をすり抜け、クリスに近づいた。
「クリス」と岩を叩くと、クリスは私に気づき嬉しそうな顔をする。
「クララね」と岩を叩き返す。
「人間は何を探しているの?」
「カモメを攻撃した生物をさがしているわ」
「カモメ?」
「クララが攻撃した白い鳥よ」
「あの鳥ってカモメって名前なんだね。ん? 人間はカモメを攻撃した生物をさがしているのでしょ? クリスは私が攻撃したと思っているの?」
「うん。昨日、カモメを解剖したら石のカケラが見つかったの。クララの指サックに石がついていたからクララが攻撃したと確信したわ」
「他の人には言ってないの?」
「言ってないよ。だってクララの指サックは殻でできていたから、誰も石を付けているなんて想像もしなかったしね。え? 新しい指サック?」
クリスは私の手元を見てびっくりする。
「そう、新作よ。海にすごい歯を持つ細長い魚が私たちを襲うけど、その魚の歯がギザギザだったから、それを参考にしたの」
「敵を観察して、ノコギリみたいにしたのかぁ。クララ、すごいね。クララを襲う細長い魚ってウツボかな? ウツボは凶暴だよねぇ」
クララは海に入らないのに、そんなことまで知っているんだ…
「ウツボって言うのね。じゃ、透明のタコを知っている?」
「透明?」
「ふわふわ漂って、手に触れた瞬間刺すの」
「クラゲかな?」
クララはすごいわ。そうだ! 私が海にあるものを取って来たら、教えてくれるかも…
私は、クララにちょっと待っててと言って海に戻って、名前のわからないものを片っ端から集めて置いた。
「いっぱいあるわねぇ。これは、サザエね。美味しいわよ。これはアワビね!これも美味しいわよ。この貝はホンビノス貝? ハマグリ? こっちは、ヒトデね。これはウニね」
トゲトゲはウニか。
「また、持ってくるので名前を教えて」
「いいわよ。次は図鑑を持ってくるわ」
図鑑! 本当のことが書いてあると思ってなかったから真剣に見ていなかったけど、今は貴重な知識であることはわかる。
クリスは忘れっぽいところがあるから、図鑑を忘れないようにさせるにはどうしたらいいのかな?
あっ! そうだ! クリスは私がよく覚えたら、食べ物をくれたわね。
「ありがとう。欲しいものがあれば持ってくるわ。クリスが食べられるなら、全部持って帰って」
「え? いいの? じゃ、もらうね。毒のあるヒトデもいるから気をつけてね」
クララはヒトデ以外の貝とウニは持って帰った。
私たちが食べられるとは限らないが、人間が毒があるというのは避けた方がよさそうだ。
それにしても、人間はあんな固い貝をどうやって食べるのだろう?
ん? 人間は水槽に入らないのに、海の中で食べられるものと食べられないものを知っている。
どうして?
人間の先祖は魚って言ったから、魚から教えてもらったのか?
でも、祖先の魚を私たちに与えて食べさせていたがいいのだろうか?
それとも、祖先の魚は別なのだろうか?
クリスに聞かなきゃいけないことが増えた…
私は拠点に戻った。拠点は見違えるようだった。
「すごく頑張ったのね」
「ケンタがね。クララ、ケンタに何か言った?」
「少しね」
「だからか…」




