探索開始
眼紐の生産プラント探し当日になった。
獣挽きを背負い、家を出る。機械弓のカスタム案を練るのに集中したいと、獣挽きはホログラムを引っ込めている。
あれだけ精巧なホログラムなのだ、出し続けながらの演算はキツいのだろうな。以前出しすぎで強制スリープしてたし。
「あ、イオドくん。これから出発かな?」
家を出てすぐ、何やら鍋をかき回しているお隣さんに声をかけられた。
「あぁ、プルナ。いつも朝が早いな。これからプルナに教えて貰った眼紐の生産プラントを探しにいくところだ」
「うぉぉ! とうとうだね。私の予想が当たってるといいな。そうだ、折角だからこれ持って行ってよ! 試作品の機獣素材で作った携帯食料。味は悪くなかったよ」
鍋の火を止め、棚をガサゴソ探るプルナ。
作業中だろうに外まで待ってきてくれた。プルナに渡された携帯食料は紙で包まれていて、食べやすいように棒状だった。
「わざわざ悪いな。これはそのまま齧ればいいのか?」
「そのままでもいいし、お湯と一緒に煮込めば機獣肉入りのお粥になるよ。影兎の肉が手に入ったから加工してみたんだ。無理せず頑張ってね!」
貰った携帯食料をポーチに大事に仕舞う。プルナが作ったのだ、これもさぞ美味なんだろうな。初めて会った時は毒抜きに失敗していたプルナが、危なげなく機獣素材を扱えてる。日々の努力の賜物だな。
心なしか今回の探索が楽しみになってきた。足取りも軽く、待ち合わせの門へ向かう。
◇
「おう、イオド。早かったな。エンジュももうすぐ来るってよ」
門の側にはシュマが腕を組んで立っていた。いつもより背筋の伸びた立ち姿に、今回の探索への気の入り方が窺える。携帯食料に浮かれていたのを少し反省する。
「そうか。眼紐のプラント、見つかるといいな」
「テミス様も期待してるようだったぜ。眼紐は厄介だからな。生産プラントを押さえれるのはデカい。隊長が一緒に行きたがって抑えるのがマジ大変だった⋯⋯」
ゲソっと気合い十分だったシュマの顔が萎んでしまう。
ミゼーア⋯⋯、テミス様の側を離れられないと俺のエラー個体討伐時には言っていた筈だが妹想いが極まってるな。若干の気持ち悪さすら感じるな。
「まぁ、近々遠征に出張ってた連中が帰ってくるから、生産プラントを見つけられたらそいつらが一旦眼紐を殲滅してから狩り手に管理を任せる流れになるだろうぜ」
出張ってた連中⋯⋯、ミゼーアと同水準の実力の持ち主とシュマが言ってた奴らか。
「彼らは村周辺の開拓なりはしないのか? それだけの実力があるのに勿体無い気がするな」
「あいつらは自分が強くなること以外興味なさそうだからよ。鍛錬がてら機獣を狩りに行ってる奴もいるがな。⋯⋯テメェに絡んでくる奴もいるだろうな」
同情するような目を向けてくる。俺としてはミゼーア並みの実力をまた肌で感じてみたい。絡んでくるというならむしろ歓迎だ。
「お待たせ! 二人とも早いね。まだ慣れてないから鎧つけるの手間取っちゃた」
シュマと雑談してると上半身に鱗鎧、俺が作った短槍を携えたエンジュが到着した。
眼紐のプラントを探す探索に緊張してるのか、表情が少し硬い。
「遅せぇぞ、何時間待ったと思ってる。足が棒になっちまたぜ」
「何時間も待ってないでしょ! 夜通し待ち続けてることになるじゃん!」
シュマの冗談にエンジュの表情が柔らかくなる。
「眼紐の生産プラントの目星をつけてる場所は何ヶ所あるんだ?」
「三ヶ所あるんだ。どれも同じくらい怪しいから近いところから回ろう。⋯⋯位置情報を共有しとくね」
エンジュがアームデバイスを起動して目星をつけた箇所を送ってくれる。
⋯⋯俺が眠っていた場所に近い箇所もあるな。距離的には二番目か。
「よし、んじゃ行くぞ。最終確認だ、交戦は止むを得ない場合以外しない。プラントを見つけたら位置情報を送信し撤退。いいな?」
「うん、異論はないよ」
「俺もだ」
気を引き締めて、行くか。
◇
転移装置で配管エリアまで跳ぶ。そこからエンジュが踏み抜いて落ちた穴までトラブルもなくたどり着いた。
「ここがエンジュがドジ踏んだ穴か。報告だと大したものは残ってない廃墟だって話だったがな」
俺とエンジュが走り回った時は周りを見る余裕は無かったが、シュマに報告した者の言う通り何もないとまでは思わない。ただ本当にプラントがあるんだろうかと思ってしまうくらいの廃墟ぶりだった気はする。
「眼紐は頭がいいからね。自身が擬態するなら、大事な場所をそうと悟られないくらいの隠蔽は施してそうだと思うよ」
俺とエンジュが出会った個体はあまり知性が高い様子は見受けられなかったが、もしかしたら若い個体だったのかも知れないな。
今回エンジュは縄梯子を持ってきている。背負ってきていたそれを穴に引っ掛ける。俺には必要ないし、先に降りて索敵をするとしよう。
「先に降りて警戒しておく。合図したら降りてくるんだ」
「わかったわ」
「油断するなよ」
それなりの高さがあるが、問題はない。しばし滞空、着地。
「———お」
余談だが、俺は人間の倍以上の体重がある。見た目より重量があるんだ。それに加えて獣挽きも常人には扱えないほどの重さがある。結果。
着地した床は俺の重みと獣挽きの重さに耐えきれず崩壊した。




