候補地
「意識して探してみると、怪しいエリアって結構見つかるのね! 気にもしてない時は創造者がまた適当な建設をとか思ってスルーしてたんだ。時間をかければまだ色々ありそう。取り敢えず何ヶ所かそれっぽそうなエリアを見繕ってきたよ!」
翌る日、俺はホルスター制作に集中したいと言う獣挽きを置いてエンジュの家に来ていた。
ちゃんと休息を取り栄養も摂っていたようで、エンジュの顔色はすこぶる良好だ。
俺が到着するや否や興奮気味に調べ物の成果を話してくれた。
俺が着く前にシュマとセレンも来ていたようだ。
「俺は正直地図を見ても怪しい箇所っつーのが分からねぇからよ、知り合いに色々聞いてきたが誰もそういうのは探してもいねぇし、気にもしてねぇな。⋯⋯ただ変な噂はきいたぜ」
キノコ茶を渋い顔でずずっと啜りながらシュマ。特に収穫は無しか。人には得手不得手がある。俺も地図の怪しい箇所なんてさっぱりだ。何故怪しいと思うのかもわからん。
「噂と言うと、村の近くで機獣が一刀両断されていた話か?」
「あぁ、それだ。何だイオドも知ってたか。一応、村のもんを助けてくれたようだが用心してしばらく探索には俺も着いて行こうと思ってる」
「衛兵の仕事もあるのに大丈夫? 身体壊しちゃうよ」
「テミス様に目的は報告してある。しばらくはこっちを優先していいと許しを貰ってるから心配するな」
エンジュの心配もわかる。自分のためにシュマに無理をさせるのが心苦しいのだろう。ただでさえ暇な時に稽古もつけてもらってるしな。
そんなエンジュに気にするなと言うシュマは、ちょっと兄っぽさが垣間見えた。相変わらず世話焼きだ。
「あとイオド、忘れないように渡しとく。以前持ってきてくれた、別の村の機械弓だ。構造解析も終わって試作品も良好だってんで発見者のお前に返す事になった。ほらよ」
シュマが丁寧に布に包まれた弓を渡してくれる。弓の心得はないし、何なら直接投げる系の武器の方が俺は威力が出せる。
「俺は特に必要な訳ではないしな。どうしたものか」
「売るなり何なり好きにしろよ。今後正式版もどんどん出てくるから、値崩れしないうちに考える事だな」
最近、プルナが角肉の流通が再開したと言っていたがこの機械弓が正式に出回れば強化個体も安定して狩れるようになるだろうな。
「エンジュが使ってみたらどうだ? 色々と戦術の幅が広がると思うが」
「使えないこともないけど、得意って訳でもないなぁ。短槍の扱いに集中したいから私はいいかな」
エンジュはあまり弓は気乗りしないようだ。強力だし、持ってて損はないと思うが短槍に集中したい気持ちもわかる。値崩れとかは気にならないし、家に飾っておくか。
「そうか。弓のことは一旦置いておくとして、候補地が何ヶ所かあると言っていたな。プルナが目星をつけた場所はどうだったんだ?」
「それなんだけどね、セレナがクランとして協力してくれるみたいで危険度が低そうな場所を探しに行ってもらおうと思ってるんだ!」
クランを動かしてくれるのか。セレンはエンジュの幼馴染だし、その繋がりでだろうか? 何かクランにとっても利が無ければ動かないと思うのだが。少し職権濫用が過ぎはしないか。
セレンの方を見ると、上品に音を立てずに飲んでいたキノコ茶を置いて説明してくれた。
「貴方が疑問に思うのもわかるわ。もちろんクランにとっても利があると考えたから動くのよ。ちゃんとクランメンバーと話し合って出した結論よ」
顔に疑問に思ってるのが出てしまっていたか。まぁ、流石にセレンの独断ではないか。
「うちのクランは孤児院出身の子が多いのよ。テミス様のおかげで食べ物に困ったことはないけど、ほぼメニューが変わらないのがまぁ、残念ではあったのよ。角肉はご馳走だし、たまにしか食べれないからね。なので今回の話はみんな賛成してたわ。やっぱり人間は栄養を摂取してるだけじゃ生きられないのよ⋯⋯」
孤児院時代を思い出してるのか、目の光を失くして遠くを見つめるセレン。なんかテミス様の用意する食事はあまり評判が良くないな。
「危険度の低い方は何のプラントだと思ってるんだ?」
「影兎っていう小さめの機獣がその周辺でよく見つかってるから、プラントがあるんじゃないかなって」
兎型の機獣か。さぞ美味なのだろうな。というか、
「セレンたちは戦えるのか? 危険度が低いと言っても機獣は機獣だろう」
セレンのクランは拾い手の集まりと聞いてるが。
「こいつんとこは何人か狩り手も所属してんだ。影兎程度なら問題ないと思うぜ」
シュマが言うには影兎は子供位の大きさで単独行動らしい。確かにそれなら危険度が低いと言えるか。
「なので私達はプルナちゃんが目星をつけてくれた眼紐の生産プラントが暫定存在するエリアを探索しようと思うの」
「お、プルナの案が採用されるんだな」
個人的にプルナには色々と恩義を感じているから、プルナの案が採用されて嬉しい。
「眼紐のプラントが見つかれば拾い手のみんなの探索が安全になるし、プルナちゃんによれば結構美味しいらしいじゃない! 一石二鳥ね!」
「⋯⋯俺はあんなゲテモノ食いたくねぇけどな」
シュマは眼紐を食べたいと思わないようだ。かなり美味いんだがな。
「わかった。俺に異論はない。準備ができたら出発だな」




