機獣生産プラント
今後の方針を決めた次の日。
俺はお隣さんのプルナと朝食をとっていた。新作の試食会をしようとお誘いを受け、丁度話しておきたかったしプルナの飯は絶品だ。断る理由はない。
獣挽きはホログラム機能の使いすぎでスリープモードに入った。ずっと出しっぱなしは負担が大きいようだ。
「メギスが珍しい素材を持ってきてくれてね、なんか幽霊みたいな機獣が纏っていた衣の切れ端なんだって。成分を調べたら食べられるらしくて、もう興味ないからあげるって置いてったんだ」
メギス⋯⋯ちゃっかり拾っていたんだな。ブレード以外燃え尽きたと思っていたが、衣は少し残っていたのか。
「それがこれか」
すでに調理された衣は、切れ端だったとは思えない程見事な料理に変貌していた。
「角肉の供給が再開されたから少し交換してもらって、機獣の衣を一晩キノコ茶にさらしたものを巻いて揚げたんだ。ソースは特製キノコソースね。名付けて『角肉のハラミ幽霊揚げ巻き』かな。味見した感じパリパリしてていいアクセントになってる感じだったよ!」
食べやすいように一口大に切られた幽霊揚げ巻きは、ジューシーな肉汁が滴っておりキノコソースと混ざり合った見た目が非常に食欲をそそった。
「少し話したいことがあったが、まずは温かいうちに食べよう。とても美味そうだ」
「うんうん。食べて食べて」
「⋯⋯ぁむ」
おぉ! 衣がパリパリと口の中で弾け、噛めば溢れる角肉の肉汁と絡まり肉の柔らかさと衣の硬さ、二種類の食感を楽しめる。熱々の肉と何故か冷んやりとした衣の矛盾したような感覚が、新鮮だ。甘さすら感じる肉汁に合うように塩気多めで調整されたキノコソースの芳醇な香りがこの料理をさらなる高みに押し上げている!
「———美味い⋯⋯」
気がつくと皿にはもう幽霊揚げ巻きは無くなっていた。すぐに食べ終わってしまった。余韻に浸っていると、あの時怒りに任せて焼き尽くした己に腹が立ってきた。次に出会ったら死なない程度に痛めつけて巣まで案内させたい。在るならだがな。
「お気に召してくれたみたいだね! 今回のはあらかじめ毒がないか確認してたから簡単だったよ。結構栄養も有るみたいだし、やっぱり機獣の食材は可能性の塊だね。何でみんな現状に満足して生産施設を探しに行かないかなぁ」
近場に限定したとしても、危険が無いわけでは無いからな。現状に大きな不満でもなければわざわざ危険を冒して探しには行かないだろう。
「その件について話があるんだ」
「ん? もしかしてイオドくん探しにいくの!? 機獣の生産プラント!」
「そのまさかだ。だからプルナに意見を求めたくてな。施設がありそうだと考えてるエリアとか無いか?」
プルナは、自分は探索に行けないからこそ機獣に関する情報はしっかり仕入れていると思う。どう毒を抜く、どんな調理法が合うか。知らなければ出来ないことだ。
エンジュも目ぼしいエリアを探しているが、情報は多いに越したことはない。
「絶対にこことは言えないんだけど、眼紐を拾い手や狩り手の人が見つけると出没地点を報告しなきゃいけない決まりがあってね。その情報は皆んな自由にデバイスから閲覧できるんだけど、出現場所に偏りがある気がしてさ。多いなぁって思ったエリアに印つけてみたんだ」
「眼紐だけ特別扱いだな。何か理由でもあるのか?」
色んな機獣と戦ったが、奴だけ特別に強かったという印象はない。
「眼紐はね、擬態能力もあるし身体が柔軟だから意外なところに待ち伏せしてたりするから、他の機獣より危険だって言われてるよ」
なるほどな。他の機獣と違ってトリッキーなことをしてくると。それは確かに他のより危険度は高いか。
「そんな他より危険なら仮に生産プラントを見つけても、安定供給出来るほど処理しやすいとは思えないが」
「う、それはそうなんだけど、毒抜きをしっかりすると本当に美味しいんだよ。眼紐は。あれから何度か素材を入手して調理してみたんだけど、角肉にも勝るとも劣らない濃厚な出汁が出て食感も最高だったんだよ!」
安定供給については後で考えたいと。ただそう考えてしまうくらいには食材として魅力的だという事なのだな。
俺が食べさせて貰った時も毒抜きが充分ではなかったが、味は最高だった。
「まぁ、安定供給に関しては後回しでいいだろう。取り敢えず場所を知りたい」
プルナがデバイスを起動して、俺に座標図を見せてくれる。ホログラムで浮かび上がった図は、村から行けるエリアが階層状に表示されている。
「ここら辺の階層が、他より発見報告が多い気がしてね。もしかしたら生産プラントがあるんじゃないかと思ってさ」
「意外と近いな。⋯⋯というかこの階層は」
プルナの示す眼紐が多く出現する階層は、エンジュが床を踏み抜いて見つけたと言っていた、俺とエンジュが初めて出会った階層だった。




