村に貢献するには
「何々? いい考えって」
「俺の知り合いにこの村の食糧事情に憂慮してる人間がいてな。新たな機獣生産プラントや食糧生産プラントを探したいと言ってたんだ。エンジュは地図系の記録媒体も集めているだろう? 該当しそうな怪しい場所を絞り出せないかと思ってな」
俺がそう言うと、エンジュは何かを思い出すような顔で唸り出した。
「⋯⋯もしかしてその人プルナちゃん?」
「お、知り合いだったか? 俺のお隣さんでな。村の基本的な食事がテミス様頼りなのが不安らしい。村の者は誰も新たな生産施設を探しに行かないと憤慨していたし、俺も余裕があったら探して欲しいと言われていたからな。どうだ、エンジュなら探せると思うし見つけたら村に多大な貢献をしたと胸を張れるんじゃないか?」
記録媒体を積極的に集めてる人間をエンジュ以外知らないし、正にエンジュにぴったりないいアイディアだと思うんだが。
「お隣さんだったんだね! メギスちゃんとも知り合いだったし、イオドは下手したら私より村で顔が広いかもね⋯⋯。まぁいいか。プルナちゃん確かにそんなこと言ってたね。私は何が不安なのかわからなかったけど。私みたいに理由がない限り村の人はわざわざ危険な遠出はしないかもね」
エンジュはあまりピンときてないようだ。確かに村の者にとって生まれる前から存在するテミス様に永続性を見ても不思議ではないか。今日も在るから明日も在ると。
俺からすればプルナの言うことは何も間違ってないと思うんだが。テミス様だっていつか壊れる日が来るというのは機械なんだから当然だと思うしな。
「イオド。新しいプラントを探すのは反対しねぇが、理由にテミス様を持ってくるのは止めとけ。俺は聞かなかった事にしてやるが、衛兵の中にはテミス様に心酔してる輩もいる。余計なトラブルは持ち込みたくねぇ。適当に食の多様性をとでも言っときな。俺もそれなら賛成できる」
あぁ、これは俺の失言だったな。今度は俺がピンと来ないことだが、テミス様はこの村では神様みたいな扱いなのだった。
メギスが言っていたが、研究者連中がどうもそんな感じらしい。衛兵の中にもそんな輩がいるのもまぁ、当然か。
「そうだな、少し考えが足りなかった。村には村の常識がある。理由は食の多様性という事でいいだろう。テミス様の配給する完全食セットに野菜を模したものがあるだろう? あれの実物を生産してる施設が生きていたら面白いと思うがな」
テミス様の完全食セットは肉、穀物、野菜の味や食感を再現した謎食べ物だ。毎食寸分違わぬ同じ味と食感で、食の喜びというより栄養摂取に重きを置いた⋯⋯まぁ、美味くはない代物だ。
薬師が扱ってる乾燥キノコと比べたら人工物感が拭えない。改良する気もなさそうだしな。
「確かにね。これは本当にこんな味なのかなって子供の頃疑問に思ったし、地図系の記録媒体も少しは持ってるから私も協力するよ!」
セレンも俺の考えに興味を抱いてくれた。
「うんうん! その方向性は面白そうかも! 孤児院の子達の勉強にもなるだろうし、ウェスさんにも目に見えて分かりやすい功績になるかも⋯⋯! 確かに暇つぶしに地図見たりするんだけど、たまに不自然に形が変わってない区画とかあったりして変だなって思ってたんだけど、もしかしたらそういう所に創造者が壊せない施設があるかも知れないね」
ウェスさんに安心してもらう為もそうだが、エンジュが溜め込んだ地図を見返す事でまた何か魂の転写装置への手がかりが見つかる可能性だってある。
決して無駄な時間にはならないだろう。
「まぁ、必ず見つかるとも限らない訳だしエンジュは根を詰めすぎないようにな。ウェスさんを安心させるためにやるのにまた倒れたら今度こそ探索を禁止されてしまうぞ?」
しっかり釘を刺しておくのを忘れない。エンジュは放っておくといつまでも調べ物を続けてしまう。帰ったら俺も獣挽きに検索してもらうかな。
「うぅ、当然と言えば当然だけど信用がない⋯⋯。でも大丈夫。行動で示していくから、安心して! イオドの記憶も探さないとだし、心配かけてばかりじゃいられないからね!」
ウェスさんを安心させる今後の方針がある程度決まったから、俺は帰る事にする。そろそろエンジュを休ませないといけない。元気そうにしているが、先刻まで寝込んでいたのだ。
「また連絡する。今日はもう寝るんだぞ」
子供扱いするな〜とエンジュのぶー垂れた言葉を後ろに、ドアを閉める。




