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戦利品

 メギスからとても良いモノを貰った。

 我が家に戻り、早速エンジュに連絡したが繋がらなかった。記録媒体を読み込みたいと言っていたし持って帰った量が凄まじかったからな。寝食忘れて読み込んでるのかもしれない。

 まぁ、俺からのメッセージに気づけば彼女から連絡してくるだろう。


 壁に立て掛けた獣挽きは、あれからずっとホログラムを出したままだ。会話できるようになったのが余程嬉しいのだろうな。家に戻るまで上機嫌に鼻歌を歌っていた。

 今彼女は先日の幽霊騒動で俺が得た、幽機獣のブレードを興味深そうに見つめている。


「それはどう加工しようか迷っていてな。余ったら君にも分けよう」

 素材を食べればそれだけ獣挽きは強化されるわけだしな。

「す、すみませんマスター⋯⋯、物欲しそうに見すぎました。無理に余らせる必要はないですよ。とても貴重な素材です。コアパーツに収められた記録から参照すると、そのブレードの持ち主の幽機獣ですが正式名称は『ジバロ』というようで機械生命体の生命の根幹を貪り食らう、実験の失敗から生み出された精神生命体とのことです」


 精神生命体? 幽霊だとばかり思っていたが、しっかり生きていたのか。

「という事は、奴は幽霊ではなく実態を持たない生き物だと言うわけか?」

「⋯⋯どうも生きているか生きていないかは当時でも定かでは無かったみたいですね。意見が分かれています。魂の研究の途上で生まれてしまった存在が逃げ出した個体に我々は出会ってしまったみたいです。ただデータはかなり古いモノなので、今回の個体は逃げ出した個体ではなく繁殖、もしくは分裂するなどして増えた個体ではないかと推測されます」


 獣挽きの説明を聞きながら俺は考えていた。今回の遠征で一番の収穫は獣挽きの急激な進化だなと。

 正確には進化とは違うが、単純な武器から俺なんかとは比べ物にならない知性と知識を獲得してくれた。最早、進化と呼んでも過言ではないだろう。

 得難い相棒だ。


「そして、その刃は加工すれば実態と非実態を行き来する霊剣になり得るみたいです。⋯⋯生意気ですね」

 生意気かどうかは知らないが。

「実態と非実態を行き来だと? 奴が戦闘時に見せたような能力か。あれは面倒だったな」

 正直、強さはそれ程でもなかったのに攻撃がスカされることがあれ程イラつくとは思わなかった。


「装備者の意思で剣身をオンオフできるみたいですね」

 ⋯⋯それは何か役に立つのか? 剣身を消せるから持ち運びに便利などしか俺には思いつかないが。

「⋯⋯それだけか?」

「⋯⋯データ上ではそれだけですね。それ以上言及はありません。滅多に遭遇せず討伐記録もほぼ無いようで詳細なデータが集まってないみたいですね」


 少し残念な気持ちになったが、剣身を消せるだけでも持ち歩きには非常に便利だろうし斬りつける直前まで消しておけば容易く相手の意表を突けるだろう。

 当たる瞬間まで見えない剣身はシンプルに脅威だ。

 それに判明してないだけで、隠された能力があるかもしれないしな。


「獣挽きは何かアイディアはないか? 剣身が消える特性を活かした、俺が知らないような面白い武器とかあったら知りたいんだが」

 俺がそう尋ねると、獣挽きの眼からハイライトが消えた。


「⋯⋯えっ? マスターは私以外の武器を所望されるのですか?」

「い、いやあくまでもサブとしてだな! 俺のメイン武器は獣挽きだ。わかるだろ? この階層都市は狭い場所も多い。特大武器の君を満足に振り回せない場所での戦闘も考慮しなくてはならないだろう?」


 何故だか身体の芯から凍りつくような圧を感じて、とにかく納得してもらわねばとそれらしい理由を必死で並べ立てた。

「⋯⋯いいでしょう。今回はそれで納得しておきます、マスター。冷静に考えればサブの一本くらい持つのも悪くないでしょう。——ただし! メイン武器はこの私ですからね、お忘れなきよう」


 嫣然と微笑む獣挽きにまだ薄寒さを感じるが分かってもらえたようだ。

「それでアイディアですけど、狭い場所となると短剣、ナイフ等の短い刀剣という事になりますが、マスターの場合はそんな短い獲物を扱うなら素手で問題ないとなってしまうので難しいですね⋯⋯。あ、でも投げナイフとかどうですか? 当たる寸前まで見えないナイフです」


 投げナイフか。確かに獣挽きの言う通り短剣を扱うなら素手で十分だ。

 考えてみれば俺に現状足りないのは遠距離武器。眼からビームは通常モードでは使えないので除外だ。


「それは面白いかもな! 使い捨ては勿体無いが、なるべく回収すればいいだけだな。作ってみるか」

「お役に立てたようで嬉しいです!」


 制作開始と思ったが黒のナイフはまだウルカに預けたままだ。一旦返してもらうか。店に向かおうと腰を上げた時、アームデバイスに着信だ。

「ん、シュマか」

 最近はよくシュマからよく連絡が来るな。また何か依頼でもあるのだろうか。通話を選択。

 浮かび上がるシュマのホログラムは焦ったような表情だった。


「——エンジュが倒れた! すぐに来てくれ!!」

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