コアパーツ
「⋯⋯戦闘モード終了」
急速に身体が再び造り替えられていくのを感じる。少し手足が重く感じるこの感覚はあまり好きじゃない。
長く変わっていたわけではないから、侵蝕もそこまで進んでないが、倦怠感が酷い。今後何かしらの影響が残るかも知れないが、やるしかなかった。
「それで、イオドよぉ。あの姿は何なのか話してくれるんだろうなぁ?」
通常モードに戻った俺にシュマが問いかけてくる。正直、シュマには黙っていたことを責められると思っていたのだが、表情からすると怒っているわけではなさそうだ。
「⋯⋯どう話したものか」
チラッとエンジュを見ると真剣な顔で一度、頷いた。
話しても構わないのだな。シュマはもう受け入れてくれると君は思うのか。
「———ウチも聞きたい! どうやったら目からビーム出せるんだ!」
やたらと目を輝かせたメギスの質問は後回しにするか。
「君達も薄々勘付いてるだろうが、俺は人間じゃない。詳しくは俺自身もよく分かってはいないがな。記憶がないんだ」
俺の言葉にセレンは少し驚いた顔をし、シュマはやはりかと納得した表情だ。
俺はエンジュと出会った経緯を詳しく話した。
「まぁ、只者じゃねぇとは思っていたしそうじゃねぇかと思ってはいたがよ。本当にそうだと少し驚くぜ。見た目が人間と変わらねぇんだな」
「⋯⋯怒らないのだな」
「あん?」
「仕方がなかったとは言え、騙していたようなものだ。罵られてもしょうがないと思ってな」
俺がそう言うと、シュマは意外なものを見たような顔をしていた。
「テメェほど強くてもそんなしょぼくれた顔、するんだな。⋯⋯まぁ、エンジュと門に来た日に言われてたら絶対村には入れなかったけどよ、今更出てけとは言わねぇよ。何だかんだテメェはお人好しだ。ぶっちゃけテメェに比べたら薬師の方が余程怪しいしな。それにああいうのは見慣れてる」
薬師殿⋯⋯。あの人は、少し俺も怪しいと思ってる。
「ああいうのとは、戦闘モードの事か?」
「お前はそう呼ぶのか。似た能力だと思ったが案外似てるだけで全然違うのかもな。『纏鎧』って言ってな。村で一部の選ばれた奴しか使えねぇ。ミゼーア隊長みたいなぶっ飛んだ強者とかな」
ミゼーアはまだ何かあるとは思っていたが、やはり隠し玉があったか。本気で殺し合うことは無いだろうが留意しておくか。
さて無事に幽霊騒動も終わったことだし、帰るか。
突き立ったままの折れたブレードも回収。何か武器を作りたい。というか何故残ったんだろうか。実体化中に倒したからかもな。
「なぁ! どうやったら目からビーム出るんだ? 機能なのか、能力なのか!!」
余程目からビームが気になるようでその後は帰りの道中ずっとメギスに質問責めにあった。
◇
後日、シュマとセレンからそれなりの量のテミスポイントを貰えた。
エンジュは手に入れた記録媒体を読み込むそうだ。始まりの時代のものではないそうだが、相当の年代ものらしい。とても興奮していた。
「質問が途切れなくて渡しそびれたな」
腰のポーチに入れていたコアパーツ。メギスはこれが目当てで付いてきたというのに忘れていくとはな。
「渡しに行くか」
立ち上がりコアパーツをポーチに仕舞い直そうとすると、壁に立て掛けてた獣挽きが眼玉を伸ばしてコアパーツをジッと見つめてきた。
「どうした獣挽き?」
先日斬られた触手は無事復活したようで物欲しそうに触手も伸ばしてコアパーツを摩っている。
「これが欲しいのか? だがこれはメギスの物なんだ俺の一存では決められない。⋯⋯一緒に行くか?」
普段なら留守番だが、珍しくかなり強い執着をみせる。一緒に行くか聞くと嬉しそうに触手を揺らしていた。
◇
「メギスいるか?」
「ん〜、イオドか。どしたの? 眼玉くれる気になった?」
「なってない。というか仮に眼玉をやってもビームは出ないぞ」
あれからどうしてもビームの秘密が知りたいようで、冗談めかして眼玉頂戴と言われるようになってしまった。俺は半ば以上本気じゃないかと勘繰っている。
「コイツを届けにきたんだ。君の鞄からこぼれ落ちたやつだ。回収しといたぞ」
「あぁ、拾っといてくれたんだ! ありがとね。無くしたと思ってたよ」
俺が回収したところを見てなかったのか。
「それでな、ものは相談なんだが獣挽きが珍しくこれを欲しがっていてな、無理にとは言わないができたら譲って欲しい」
「へ〜、マジで? 珍しいね。意思は持たせたけど、そこまで自我の確立が進んでたんだね。しっかり可愛がってる証拠だ。⋯⋯ま、データだけコピーしたいからそれが終わったら好きにしていいよ」
貰えることが理解できたのか触手を出して踊る獣挽き。
「すぐ終わるからね」
メギスはコアパーツを円形の皿のようなものに乗せると、それに繋がったキーボードを操作する。数分としないうちに終了したようだ。
「よし、はいどうぞ」
メギスがコアパーツを獣挽きに差し出すと、いつもとは違う触手を伸ばして触れた。
「⋯⋯こんな触手知らないけどな⋯⋯」
触手は何かを吸い取るような輝きを断続的に発している。暫くして輝きが収まると眼球を伸ばしてきた。
何をするのかと見ていると、眼球からホログラムが中空に投影された。
「⋯⋯え、嘘でしょ」
映されたホログラムは少女のカタチをとっており、子供が着るには少し場違いな感じのスーツを身に纏っていた。少女は俺を見つめて花が咲きそうな笑顔で言葉を発した。
「⋯⋯ようやくお話ができますね。マイマスター」




