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目で殺す

 幽機獣の斬撃を躱し、牽制に獣挽きを叩き込みながら思考する。戦闘モードの恩恵で思考も通常時より加速されている。

 スローに流れる世界で戦いながら突破口を探す。

 あまり長時間戦闘モードでいたくはない。


 まず違いは何だ。俺の攻撃が当たる時と当たらない時の違いだ。

 先ほどから何度か攻撃が当たる時がある。ただ法則性がわからない。拳だろうと獣挽きだろうと当たる時は当たる。


 そのたまに当たる攻撃が幽機獣にとって相当ストレスらしく、大した損傷にはなっていないがイラついた風に両腕のブレードを振り回している。目はないが奴の意識は俺に釘付けで、エンジュ達を気にする様子はない。

まだ全力で攻撃はしていないが、異星侵蝕状態の攻撃を意に介していないのは賞賛に値する。


 俺に執着してくれたようで、こちらとしてはありがたい。正直コイツは大した脅威ではない。ただ放っておくわけにはいかない。何故かエンジュを狙うからだ。エンジュはもちろん、シュマでもコイツとまともに戦えはしないだろう。俺が仕留めなければならない。


「ァァァ———ッッ!!!」

 のらりくらりと躱す俺に業を煮やしたのか、俺から距離を取ると身体を後ろに捻って右ブレードを顔の横に構えた。

 光の粒子が構えた右ブレードに収束し始め、耳をつんざく金属音が鳴り響く。

 明らかな大技の予兆。光が増すにつれて、幽機獣からの圧力が増大していく。


「———お前達、俺の後ろに!!!」

 エンジュ達を俺を盾にするよう後ろに移動させる。

「おほぉぉ! あれエネルギー源は何なんだろうね! ——あぁ、押さないで、走るよ。⋯⋯痛っ」

 幽機獣の方に気を取られたメギスが、シュマに急かされ転けて荷物を溢した。何かがコロコロと俺と幽機獣の間に転がってきたが気にしてる場合じゃない。



 ブレードに収束した光はもうすでに相当なエネルギーを感じさせる。下手に妨害すれば集めたエネルギーが暴走しどうなるかわからない。


 光の収束が終わった。幽機獣はその場から動かない。どうやら遠距離攻撃のようだ。

 俺に向けた憎悪に近い殺気が最高潮に達した瞬間、

「イィィィィッッッ!!!」

 振り斬った。


 加速した思考の最中、迫る光の斬撃。振り切った体勢の幽機獣からは必勝の雰囲気を感じる。奴にとって出せば必ず殺せる技なのだろう。

 事実、奴から感じられる圧力が大幅に減少している。放つためには相当なエネルギーを使うに違いない。


 舐められたものだ。その程度の攻撃で俺が殺せると思われているということだ。

 俺も思うように攻撃が当たらなくてイライラしていた所だ。同じ土俵で力比べと行こうか。


「赫穿!!」

 必滅の意思を込めて、両眼から閃光を放つ。

 灼熱を帯びた光の奔流は、進む道のりにある瓦礫や遺物を触れずとも赤熱させ溶解していく。

 踏ん張りの効かない不安定な足場では、放つ熱戦の圧力に徐々に後退してしまう。


 白と赫の光の衝突。均衡は一瞬で崩れた。

「———ッ!」

 赫の穿うがちに白の斬撃が貫かれる。少しの減衰もなく幽機獣に直撃する。

 どうせ本体は幽体になって逃れてるだろうと、俺は煙が晴れたら追撃をかけようと身構えていた。煙の向こうの幽機獣は動かない。何かまだしてくるかと思ったのだが、


「⋯⋯当たっているな」

 煙が晴れると右腕が肩から焼き消され、断面を赤熱させ身体のあちこちが粒子になって散っている息も絶え絶えな幽機獣が蹲っていた。


 まぁ、当たればこれくらいの損傷は期待できると思ってはいたがまず避けられると予想していたから驚いてしまった。このまま放っておいてもいずれ死ぬだろうが、それは残酷だとエンジュに言われたのを俺は覚えている。


 トドメを刺しにいく。その途中でメギスが転んだ時に落としたものが目に入った。

「⋯⋯これはコアパーツか」

 壊れてはなさそうなので、拾って後でメギスに渡すか。

 コアパーツを腰のポーチに仕舞いながら幽機獣に近づくと、距離が近くなる程幽機獣の身体がチリチリと不安定になるのが見えた。


「もしかしたらコアパーツがコイツの幽体化に干渉していたのか?」

 そうであれば攻撃が当たる時と当たらない時があったのが説明がつく。

 思い返せばメギスに近づいた時に攻撃が当たっていた気がするな。


 至近距離まで幽機獣に近づいた。最初の方の傲慢なまでの余裕など消し飛んだのか、怯えたように残ったブレードを振り回す。

 だがエネルギーをほぼ使い切った奴のブレードなど防御するまでもない。


「————ィィ⋯⋯」

 首を掴んで持ち上げる。やはり幽体化しない。できないのだろう。

 両目に意識を集中。暴れもがく奴ののっぺりした仮面に映る二つの赫が輝きを増す。

 終わりは呆気なく、墓標の如く焼け残ったブレードが瓦礫に突き立っていた。

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