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幽霊の正体見たり

「あ、イオド見つかったよシリアルナンバー。⋯⋯ただ大分薄れちゃってるね。たぶん、ここに流れ着くまでに浸水とか色々してきたんじゃないかな」

 メギスに呼ばれ見にいく。作業していたメギスが開けたスペースにしゃがみ込んで筐体の中を覗く。


「確かに掠れて読めたものじゃないな。それにしてもこれだけ浸水やら何やらあったように見えるのに故障程度で済むんだな」

「でしょ。始まりの時代の機械は繊細な割に完全に動かなくなってるのは少ないんだよ。こいつだってインターフェイスを出力する機能は残ってるしね。ちょっとチャンネルがズレちゃってるけど。凄い技術力だよね!」

 素人の俺でもこの時代の技術力の高さは驚きを覚える。

 ⋯⋯掠れて読めないが、一応エンジュを呼んで見てもらう。


「エンジュ、ちょっと来てくれ。シリアルナンバーが見つかったんだが薄れていて判別がつかない」

 遠くで今行く〜と返事が聞こえた。セレンが一緒に行動していたっぽいが、遠くに行くなと言った筈だがな。


「いや〜凄いよここは! 宝の山だね!!」

 とてもホクホク顔のエンジュが両手に記録媒体を抱えてやってきた。

「⋯⋯⋯⋯よかったな」

 あんまりにも嬉しそうな顔をするものだから、怒る気もなくなってしまった。セレンも付いていたし少なくとも見える位置にいたようだからいいとするか。


「取り敢えずこれを見てくれ。ほとんど掠れてるがシリアルナンバーだと思うぞ」

 エンジュに場所を譲る。

「どれどれ⋯⋯。あぁ〜確かにほとんどインクが落ちちゃってるね。⋯⋯でもこれくらいなら⋯⋯ちょっと写真撮るね」


 アームデバイスで掠れたシリアルナンバーを写すエンジュ。ここまで掠れたものを撮ったっところでどうにかできるのか?

「こんなの写してどうするんだ?」

「ふふふ、私の拾い手としての嗅覚を舐めてもらっちゃ困るのよ⋯⋯! 古い時代の機械を探すんだからこんなことも有るだろうとインクの微かな痕跡を読み取るアプリをインストールしてあるのよ! デバイスに入れるの大変だったのよ!」

「へぇ、エンジュはアームデバイスを弄れるんだな。これ結構プロテクト固いから難しいのに、やるじゃん!」


 メギスがエンジュを誉めている。それなりに凄いことらしくお世辞ではない感嘆の光が目に宿っている。

「そのアプリがあればこの判別不能なシリアルナンバーも復元できるんだな。俺からすると信じ難いが」


「遺跡修復のための装置に入ってたチップから抽出して入れたんだ。何回か使ったことがあるから、これくらいなら数時間くらいで解析できると思うよ!」

 パシャっと掠れた文字群を撮影してスイスイとなぞっている。


「んじゃ、引き続きパーツ取りに戻るから退いてね」

「あ、ごめんね! 見つけてくれてありがと! セレンさんも連れてきてくれて本当に嬉しいです!」

 これまでで一番のエンジュの笑顔に、一同ほっこりする。


                  ◇


 エンジュの目的も達して、残りはメギスがインターフェイスを出力するパーツを取り外すのみになった。

 カチャカチャとバラす音が響く。遠くで新たな遺物が投棄ロボットによって投げ込まれる音がする。


 エンジュ達が懐かしそうに話をするのを少し離れて眺める。こういう何もない時間を過ごすのも悪くないものだ。万が一があるから完全に気を抜くわけにはいかないが。


「⋯⋯⋯⋯よしっ。取れたぞ! うへへ、傷ひとつない。あとはラボでどこが悪くなってるか見るだけだ!」

 どうやら無事取り外せたようだ。メギスが見た目相応のはしゃぎっぷりを見せている。


「———」

 インターフェイスを出力するパーツはコアパーツでもあったようで、まるで命でも失ったかのようにもともと静かだった機械が完全に沈黙した。


「これで幽霊騒動も終わるのね」

 セレンが晴れ晴れと言った顔で言う。

「そうだね。少なくともこれが原因の騒ぎは終わりだね」


 さて撤収だとメギスが工具をしまい始める。俺たちもエンジュの戦利品を携帯バッグを展開して詰めていく。

 こんな所かと顔を上げると、エンジュが肌寒そうに腕を摩っていた。


「⋯⋯どうした? 寒いのか?」

 俺は寒さを感じない。周りを見ると皆何か違和感を覚えているようだった。

「それが、なんか急に寒気が⋯⋯」

「私もなんか震えが⋯⋯」

「なんだぁ? 俺は何も感じねぇけどな」


 シュマは俺と同じく何も感じてないらしい。

 とにかくもう用はないのだ。帰ろうと促そうとエンジュ達の元に向かおうとすると、背中の獣挽きが触手と目玉を出して威嚇を始めた。


「どうした獣挽き、エンジュ達だぞ? 何が⋯⋯」

 獣挽きのおかしな反応に、もしやと持ってきていたゴーグルを急いで掛ける。

「⋯⋯まだいたのか!」


 今まさにエンジュとセレンに襲い掛かろうとしている白い靄が、俺の目に飛び込んできた。

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