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鎧が出来た

 メギスに記録媒体を渡し、俺とエンジュは適当な場所に腰を下ろしてメギスが目を通すのを待っている。

「これであの壊れたインターフェイスも正常に戻せるな」

 今メギスがエンジュに渡された記録媒体を恐ろしい速さで目を通している。

「え、うちは直そうとは思ってないよ?」


「ん? じゃあ何でカタログを探していたんだ?」

 直さないなら読む意味がないじゃないか。直すのに貢献した功績が欲しかったんだがな。せっかくエンジュも同行できるチャンスなのに。

「うちはあの少年の像を出力してるパーツが欲しいんだよね。作りたい装置があったんだけど、始まりの時代の機械ってなかなか見つからないから出てくるの待ってたんだよ」

「少年を出力してるパーツを抜き取るなら、結果的には幽霊騒動が収まるということか」


 それならまだエンジュの功績も認められやすいか。

「ま、結果から言えばそうなるね。ぶっちゃけパーツさえ抜ければ幽霊騒動とかどうでもいいけど。機種によって収まってる場所が違うからさ。まぁまぁ繊細なパーツだし機種を特定しときたいんだよね。少年の服装と髪型で分かるからさ、もうちょっと待っててよ」


「エンジュはあの機械が何処からあそこに流れ着いたか知りたいみたいなんだが、メギスに分かるか?」

「ん〜。うちの設備じゃわからないけど、シリアルナンバーが書いてあると思うからそれをテミス様の研究所のマザーコンピュータに読み込ませれば分かると思うよ。⋯⋯使わせてくれるか知らないけど」


 げ、テミス様を頼らなければいけないのか⋯⋯。チラッとエンジュを見るとホッとしたような顔でグッと拳を握っている。

 行くしかないか⋯⋯。テミス様が素直にマザーコンピュータを使わせてくれるかわからないが。⋯⋯というか無理な気もする。村の中枢だろう。

 仮に使わせてもらえるとしても相当大きな借りになるだろうな。まぁ、背に腹は変えられないか。


「シリアルナンバーが書いてあるといいな」

「本当にね。相当古い時代の機械だから、稼働はしてても文字は掠れて読めないってことも十分あり得るからね」

 エンジュが実際に経験してきたのか、過去を思い出すような苦笑いを浮かべている。


「ま、そこは実際に見てみないと何ともね⋯⋯⋯⋯あ、これじゃないかな!二人も見て。服装と髪型も一緒じゃない? 特に髪型はよく見て。後継機とか髪型で違うからさ」

 メギスがワタワタと嬉しそうに記録媒体の該当ページを見せてくる。


「⋯⋯どれどれ。ふむ、機械の種類としては図書館の司書の役割をこなすタイプだったんだな。俺が写した写真の少年と変わらないように見えるな。緩いウェーブのかかった髪型だ」

「私もそう思う。⋯⋯髪型で型番を見分けるの何だかオシャレだね!」

 そうか? 俺からすると分かりにくくて、顔の真ん中に数字でも入れておけと思う。

「⋯⋯エンジュはセンスあるよ。この時代のインターフェイスに対する開発者の思想は洒落てるよ。余裕さえ感じる」

 二人は気が合うようだな。


「機種も特定できた。シュマ達に連絡して幽霊騒動を終わらせるか」


                  ◇


 一旦帰ってからシュマに連絡するかと、エンジュを家まで送っていこうとメギスの家を出たところでアームデバイスに振動があった。

「む、ウルカだ。おぉ、エンジュ鎧が完成したみたいだぞ! 急いで店に連れてこいとのことだ」

「わ、もう完成したんだ! 早いね」


 流石は専門の職人だ。鱗状に削り出すのは非常に繊細n技術が要されると思ったが想定より完成が早かった。早速ウルカの店に向かおうとしたがお礼を持っていきたいと言うのでエンジュの家に取りに戻ってから向かうことに。


「ウルカ。連れてきたぞ」

「イオド、エンジュちゃんいらっしゃい! いやぁ〜黒のナイフが扱いやすいからさ、楽しくて楽しくて全然寝てないんだ!」

 目の下に盛大に隈を作ったウルカが出迎えてくれた。寝ろよ。


「⋯⋯あのウルカさん、これせめてものお礼に持ってきました!」

 エンジュが少し不安そうな顔でラッピングされた袋を差し出した。

「おや、鎧はプレゼントだから気遣わなくて良かったんだけどね⋯⋯ま、あたしも女だ。お礼を突っぱねるなんて野暮な事はしないよ! ありがとね!」

 漢らしくエンジュからの礼を受け取るウルカ。


「好みがわからなかったから、珍しい防具のカタログが入った記録媒体を持ってきました」

「え、本当かい! それはお世辞抜きに嬉しいね! 先人のアイデアは貴重なんだ。インスピレーションが刺激される!」

 興奮したウルカが鼻息荒く記録媒体に頬擦りしている。


「中身を観るのは寝てからにしろよ。で、エンジュの鎧を見たいんだが」

「あぁ、そうだったね。嬉しくってねつい。⋯⋯これがエンジュちゃんのスケイルメイルさ!」


 ウルカがカウンターの裏から取り出したのは、純白の鱗を随所に備えた逸品だった。

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