始まりの時代
「⋯⋯エンジュは今回の機械が魂の転写装置だと考えてるのか?」
「流石にそうだとは思ってないよ。そんな簡単に流れてくるようなものじゃないだろうし。ただその機械がどんな用途のもので、何処からそこに流れ着いたかは知りたいとは思ってるけどね」
知りたいならくるかと言おうとして、そういえばセレンのクランメンバーしか行けない場所だと思い出した。俺は許されているがエンジュは許されていない。
エンジュもそれがわかっているから浮かない顔だ。
「⋯⋯エンジュはその機械を直せたりするのか?」
「無理だと思うなぁ。⋯⋯というか、直せる人なんているのかな? あの時代、『始まりの時代』の機械って下手したらこの村の機械より高度なものもあったりするからさ」
「始まりの時代か」
中々仰々しい名前だ。
「その辺りの時代に爆発的にAI技術が発達したらしくてね。高度なAIが生まれてそれがさらに高度なAIを造るっていうすごい時代だったみたいね」
まぁ、魂の転写装置と同時代の機械が今より劣ってる訳ないか。ただ、メギスなら何とかできる気がするな。技術はあるだろう。
「一応直せるかもしれない奴はメンバーにいる」
「え、何で直せるかもって分かるの?」
「メギスっていう研究者なんだが、どうも長命種らしくてな。しかもあの壊れたインターフェイスに見覚えがあるらしい」
「あ、メギスちゃんなのね。え! あの子長命種だったんだ! 全然知らなかった」
メギスとエンジュは知り合いだったのか。接点が思いつかないな。
「どこで知り合ったんだ? 何も接点が無くないか?」
「拾い手の集会所があるんだけど、そこに依頼が持ち込まれることがあってね。たまに私も受けてるんだ。それで何度か収集物を渡しに行ったことがあるのよ」
依頼主として知り合ったのか。メギスと知り合いだというなら、一緒に協力したほうが速そうだな。それにエンジュの価値を示せば同行の許可も下りやすいんじゃないだろうか。
「始まりの時代の機械の情報が入った記録媒体は持ってるだろ? メギスと協力して今回の幽霊騒動を解決すればエンジュも特例で同行できるんじゃないか?」
「持ってはいるけど、直し方みたいな都合のいいのは持ってないよ?」
獣挽きの製作者であるメギスなら、どういった機械なのか理解すれば何故壊れてるのかどこが悪いのか分かる気がする。
「カタログ的なもので十分だと思うぞ。メギスはエンジュが思ってる以上にぶっ飛んだ奴だ」
「メギスちゃんに対するイオドの評価が褒めてるんだか褒めてないんだかわからないね⋯⋯。まぁ、イオドがそう言うなら持っていこう。家は知ってるの?」
「うむ。ご近所さんだ」
◇
「⋯⋯こ、ここに住んでるの?」
相変わらずトキシックな色合いの靄が漂ってるメギスの家。エンジュが恐れ慄くのも分かる。
「素材を渡したことがあるんじゃないのか?」
「メギスちゃんが集会所に受け取りに来たからね。私はどこに住んでるかは知らなかったんだ」
「一応、人体に致命的な害はないらしい。あれば衛兵がすっ飛んでくるらしい」
「⋯⋯それって致命的じゃないけど害はあるって認めてるよね?」
そうとも言う。この色合いで害がないほうが驚きだ。
「なるべく吸い込まないようにな。⋯⋯メギスいるか?」
中を覗き込むとガサゴソと何かを探し回るメギスの姿が。
「ん〜? イオドか。今探し物しててさぁ、どっかに置いといたんだけどわかんなくなっちゃってさ。丁度いいから一緒に探してよ」
「機械のカタログか?」
「そうなんだけどさぁ、ちょっと珍しいやつでさ。って、あれもしかしてイオドもあれが幽霊じゃないって気付いたんだ?」
とっ散らかったモノの合間から意外そうな顔を上げるメギス。
「ちょっと色々疑問に思ってな。あの少年の写真を知り合いに見せたんだ。思った通り何かの機械のインターフェイスらしいとわかった。メギスならカタログさえあれば何とかできると思ってな。持ってきた。ついでに知り合いも連れてきた」
「連れてきた⋯⋯? あ、エンジュじゃん! イオドと知り合いだったんだね!」
「やっほ! 意外なところが知り合いでビックリだね。私はイオドとメギスちゃんが知り合いだってのに驚いてるよ」
仲良さそうに手を取り合ってキャイキャイする二人。エンジュと嬉しそうに会話するメギスは見た目相応の歳に見えた。
「俺のお隣さんに紹介してもらったんだ。それでエンジュ、メギスにカタログを見せてあげてくれ」
「了解! ほらメギスちゃんが探してるのってこれじゃない?」
「うちが探してるのは結構珍しい⋯⋯って始まりの時代の記録媒体じゃん! エンジュも持ってたんだ!」




