見える⋯⋯!
俺以外はまだ気づいていない。わいわい騒いでデバイスに反応があると嬉しそうに叫ぶメギスについて行ってる。
こちらを何処か寂しそうな眼差しで見つめてくる身体の透けた少年。俺の認識が間違ってなければあれこそ幽霊だろう。
「⋯⋯なぁ、あれ見えるか?」
騒ぐメギスに追いつき肩を掴んで少年の方に向ける。
「ん? あれって何だよ。何にも無いじゃんか」
メギスには見えてないのか。
「二人はどうだ? 向こうに身体の透けた少年が見えないか?」
少年が佇む方向を指差して見えないか尋ねる。
「⋯⋯俺は見えねぇ。変な感覚もない。⋯⋯本当に居るのか?」
「私も見えないですね。おかしいな。見えなくても変な気配は感じてたんだけど⋯⋯」
どうも俺以外には見えもしなければ感じることも出来ないらしい。
違いは何だ? 俺の脳が急に障害をお起こしたわけでは無いはずだ。損傷があるならナノマシンどもが治療をするため行動を起こす。そんなアラートは脳内に流れていない。
ゴーグルに映る距離計では十メートル程の距離にいると出てるんだがな。
⋯⋯そうだ。考えてみれば俺以外に少年を認識してると言ってもいいのはこのゴーグルだ。
「⋯⋯もしかしてこのゴーグルを通さないと見えないのか?」
試しにゴーグルをズラしてみる。
「———見えない」
掛け直すと再び少年の姿が見えるようになる。
機獣のレンズで造られたゴーグルだから、見えざる物も見えるようになるのかもしれない。
「⋯⋯メギス、ちょっとこれを掛けてみてくれ」
「ほいほい。⋯⋯おぉ〜本当に居るねぇ。えぇ⋯⋯計器には何の反応もないのになぁ? 何で居るんだ?」
やはりゴーグルを通せば見えるようになるみたいだな。
シュマとセレンにもゴーグルを掛けて少年の幽霊らしき存在を見てもらった。
「うぉっ! 本当に居るじゃねぇか! セレンも見てみろ」
「どれどれ。おぉ、可愛い少年だねぇ。私たちが見えることに気づいたのかな。何か言いたそうだけど?」
「セレンとしてはこの少年の幽霊をどうにかして欲しいんだな?」
どうすれば良いかは現状何も思いつかないがな。
「そうだね。そんなに怖い感じの子じゃないみたいだけど、怖がってる子も居るから此処じゃない所に移動するなり、成仏って言うのかしら? して貰えると有り難いかな」
まぁ、此処は様々な遺物が投げ込まれていて足場が悪い。ちょっとしたミスが致命的な事態を招く可能性もゼロではない。
「メギスはこういう場合はどうすればいいか何か知ってるか?」
「ん〜、昔読んだ記録だとこういう残っちゃてる子は未練があるからそれを解消してあげればいいらしいよ。それが面倒だったら消す道具も持ってきてるけど?」
「消すというのは、成仏とは違うの?」
「違うね。偏りを無くして均一な状態に戻すから、単純に消えちゃう」
「⋯⋯じゃあ止めましょう」
となると未練を解消しないとだな。何が心残りなのか聞き出したい所だが、話せるのか? そもそも意思疎通が図れる存在なのかもわからない。
「⋯⋯あ、待って何か言いたそうにしてる」
ゴーグルを掛けたままだったセレンが少年の声を聞こうと片耳に手を当てる。
「⋯⋯うぅん、口は動いてるけど声は聞こえないな。ま、ま、⋯⋯もしかしたら『ママ』って言ってるのかも」
ゴーグルが特殊なのはレンズだけだからな。流石に声までは聞こえないか。
「ママね⋯⋯。見るからに幼い子供だったしよぉ、母親の温もりとか欲しいんじゃねぇか?」
子供の考えることなどさっぱりわからないが、シュマの推測に他の二人も頷いている。
「この中で女性は二人だ。どちらが行く? 何かされるか不安ならメギスの道具で消してしまってもいいと思うが」
「危険な感じはしないし、私が行ってみるわ」
勇敢にもセレンが名乗りを上げる。
「まぁ、母親って言うならセレンだろうな」
「おいコラ。ウチに足りないのは何だ? ん? 言ってみ? 滑り止めの付いてないそのお口でよ!」
主に胸部のボリュームか。はたまたその幼すぎる容姿か。
「そ、そりゃ、⋯⋯母親って言うなら同じくらいの背格好じゃ違うだろ? セレンは背が高めだからな。適任だろ」
「⋯⋯納得しておいてやるよ。ただ目線には気をつけたほうがいいぜ? 女は鋭いからな」
何となくセレンもメギスの言葉に苦笑いしている。シュマがどこを見て判断したかはお見通しだということか。
「⋯⋯よし! 取り敢えず抱きしめてあげればいいのかな? 触れるかわからないけど」
意を決してセレンが少年の幽霊を抱きしめに行った。ゴーグルを付けてない俺たちには何もない空間に向かって笑顔で手を広げるセレンという、少しシュールな光景ではあるが気にしても意味ないな。さて無事成仏させられるだろうか。




