未知との遭遇
「⋯⋯で、そいつがテメェの言う色々知ってる奴か?」
次の日、俺とメギスはシュマに指定された門の前に来ていた。メギスは何やら荷物を背負っていて、俺は獣挽きを一応持ってきていた。
シュマの横には幽霊話を相談したであろう拾い手の女性が立っていた。茶色のポニーテールでスラッとした体躯。恐らくウルカが造ったであろう胸当てを着ていた。
そしてシュマはこちらに疑念の目を向けていた。
「言いたい事は分かるが落ち着け。今お前が思ってることを口に出してはいけない」
「言ってみろよ! 何を思ってるのかよ! 必ず後悔させてやるよ!!」
メギスが桃色の髪を逆立ててシャーシャー威嚇している。ステイステイ。⋯⋯いかんな。初顔合わせなのに初手で険悪な雰囲気になりかかっている。
「こらっ! 君はまたそうやって見た目で決めつける! 悪い癖だよ。謝って?」
俺がここからどうリカバリーするか悩んでいると、シュマの横にいた女性がシュマを叱っていた。
「だ、だがよぉ流石に少し疑っちまうのも分かるだろ?」
「私は拾い手として色んな人に会ったからね。色んな人がいたよ、良くも悪くもね。だからその人の人となりは会話してから決めることにしてる」
女性に叱られてタジタジになってる。どことなく姉に叱られる弟をシュマに見てしまう。
「⋯⋯はぁ、すまねぇ。いきなり疑っちまってよ。心から謝る。力を貸して貰いてぇ」
シュマのガチ謝り。これには髪を逆立てて唸っていたメギスも落ち着きを取り戻す。
「ま、まぁ、うちは大人だし? アンタはまだ何も言ってなかったから多めに見てあげるよ。⋯⋯それで? そろそろ自己紹介しましょ?」
◇
自己紹介を終えた俺たちは目的地に向かうための転移装置に向かっていた。
シュマに依頼した女性はセレン。シュマの幼馴染なんだと。
メギスが見た目通りの年齢でないことに二人は驚いていた。
「⋯⋯数えるのを忘れるくらい生きてるって、そんな奴が村にいるなんて初めて聞いたぞ? いや階層都市の何処かには長命種が居るってのは噂には聞いてたがよ。 テミス様も教えては下さらなかった。⋯⋯いいのかそんな簡単に言っちまって?」
「もう時効みたいなもんだよ。うちの昔のこと知ってる奴はとっくのとうに死んでるし、テミス様ももう気にしてないんじゃないかな? あ、別に極悪人って訳じゃないからね? ちょっとミスしちゃっただけ。 そんな事よりとっとと行こうぜ! ワクワクしてるんだ!」
獣挽きを暴走させたのはちょっとしたミスでは済まない気がする。まぁいい。るんるんはしゃいでるメギスを見ると、ただの子供にしか見えないなぁ。
門の近くの転移装置に皆で入る。
「あの配管だらけの階層に行くのか?」
「ん? いいえ、今回は別の階層よ。私たちの拾い手クランは昔からあってね。功績を認められて私たちだけが跳んでいい転移装置を昔にテミス様から下賜されてるのよ」
そう言えばシュマが拾い手にも派閥があると言っていたな。
「俺やメギスが勝手に行っていいのか?」
「私が今代のリーダーだからね。問題ないわ。皆んな怯えちゃってね。どうしたらいいか悩んでたけど、シュマに頼んでよかったかもね! 二人とも頼りにしてるわね!」
転移装置で跳んだ先は、昔は何かが流れていた形跡のある何人も入っても余りある金属のパイプの中だった。
恐らく彼女のクランが設置しただろう淡い青色の灯りが等間隔で先まで続いている。
「ここから少し先に遺物が投げ込まれる『ゴミ溜め』があるのよ。普段はクランの皆んなと新しい遺物が捨てられてないか見に来るんだけどね。⋯⋯そこに問題の幽霊が出るのよ」
「ちなみに君は見えるのか?」
「私は見えないよ。ただ何かおかしい気配がするってのは確実に分かる。だからクランの皆んなが嘘をついてる訳じゃないのもね」
ふむ。今ふと思ったが、実態のない幽霊に俺はどう対処すればいいだろうか? 触れないなら何もできない気がするな。⋯⋯まぁ、いざとなったら皆を抱えて脱出くらいはできるだろう。
◇
「ここか」
少し歩いた先の後から設置されたのが分かる梯子を降りると、様々な遺物がうず高く積もった場所に着いた。かなり広い。縦に長くその先は見通せない。壁の上部に開けられた穴からロボット達が何かを投げ込んでいる。
せっかくだからゴーグルを嵌めてみるか。
「さぁ、早速うちの持ってきた発明品の出番だね!」
メギスが持ってきた荷物の中から真ん中にレーダーの画面が嵌った板状のデバイスを取り出して電源を入れた。
「そいつは何が出来るんだ?」
シュマが少し興味深そうに聞いている。
「これは異常な磁気の乱れを検出する機械さ! 昔作ったんだ! 幽霊とか出るって言われる場所は磁気異常が発生してることが多い。これで磁気異常がどこか判ればその原因を取り除けば幽霊騒動も終わるんじゃないかな」
「凄いの作れるのねぇ」
メギスがデバイスを持って反応があるらしい方向に歩き出す。俺も着いていこうとした時、チラッと目の端に何か捉えた。
「⋯⋯ん?」
メギスがこっちだ! と騒ぐ反対方向に目を向ける。
白く向こうの景色が透けた子供が佇んでいた。




