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糸が完成した

 エンジュの守護獣の力量も分かり、名前も判明した。

 店主によると遥か昔の絵本に出てくる正体不明の怪物の名前らしい。

 見た目が俺に似ていることといい、因果な名前だ。

「取り敢えず、実戦で使っても問題ないのはわかったな」

「問題ないだろうね。エンジュちゃんの言うことはしっかり聞くし、扱いにくいタイプじゃなくてよかったよ」

 店主の口ぶりだと、厄介なタイプの守護獣を知っていそうだ。他にも使うものでもいるんだろうか。


「店主は他にも守護獣を使う奴でも知ってるのか?」

「私が開発者って訳でもないからね。師匠から色々聞いてるし、厄介なのもみたことはあるよ」

 三日月猫の主である店主が厄介というとは。出会いたくはないな。


「恐ろしい話だ。⋯⋯ジャバウォックも時間切れで消えたことだし帰るか。エンジュも疲れただろうしな」

「身体は疲れてないけど、何かぼーっとする気がする。頭が疲れたのかな」

 顔色も良いとは言えない感じに見える。表情にも覇気がない。

「時間を空けたけど二個飲んでるからね。一度体感しておいて欲しかったんだよ。気軽に使おうという気にはならなくなっただろう?」


「そうですね。いざという時の切り札なんだって身に沁みました。この状態だとまともな判断も覚束ないかも知れないですしね」

 あれ程強力な守護獣を気楽に使えるわけもないか。ぼーっとするという事は脳に相当な負担がかかってるのだろう。


「急がず帰ろう。俺がついてる」


                  ◇


 薬屋に無事に帰還した俺たち。ヘトヘトになったエンジュを先に帰す。

 最後の方は歩くのも辛どそうだった。

 店に入り道中採取したものをカウンターに広げる。


「良い薬草ばっかりだっただろう。今回のはポイントと交換にするけど、現物がよかったら今後君が採りに行くなら好きにして良いよ」

「いいのか? 大事な場所なんだろ?」

 思っていたよりかなりの種類の薬草があった。簡単な処置で薬効を発揮するものもあったから、エンジュが怪我した時用に少し欲しかった。


「採り過ぎなければいいよ。必要なのはエンジュちゃんだけだろうしね。あれから何度か戦闘があっただろうに君、治癒促進剤を使ってないだろう? いつか感想をおくれよ」

「使う必要がなかったからな。ただ今後もないとは限らない。その時は頼む」

 

                  ◇


 店主にポイントを貰い、する事もないから家に向かっている。村を歩いていると、いつもより拾い手の人数が多いように感じる。

 手持ち無沙汰というか困惑した表情の者が多い。

「⋯⋯何かあったのか」


 少し気になるもエンジュ以外に知り合いは拾い手にはいない。今度シュマにでも聞いてみるかと家路を歩んでいるとアームデバイスに連絡が入った。

「お、ウルカか」

「あぁ、イオド今いいかい?」

「問題ない。家に帰ろうとしてたところだ」

「暇なら店に来ないかい? 糸が出来たから、スケイルメイルの作り方を伝授してしんぜよう!」


 ウルカのテンションがやたら高い。糸が完成してハイになってるんだろう。何かを創り出す者は大抵の者が完成したらハイになる。

「では今から向かう」

「もうちょい冗談に付き合えよぉ⋯⋯。まぁいいか、待ってるよ」


 店は休業中となっている。俺に鎧の作り方を教えるためとはいえ、少し心苦しいな。今度面白い素材を見つけたら持ってきてやろう。

「来たぞ」

「いらっしゃい! 見ておくれよ! 今回の糸は凄く質が良く出来てねぇ、いつものより大分丈夫だよ!」


 いつもと何か違いがあるとすれば皆殺しにした奴らが何らかの操作をした可能性だが、今となっては分かりようがない。運が良かったと思おう。

「苦労して採りに行った甲斐があったな」

「本当だよ! トラブルはあったけど、運は悪くなかったね。じゃあ、早速作り方を教えようかね。とは言ってもこんな風に型通りに素材を切って縫い付けていくだけさ。練習用にこれで何枚かウロコを作ってみ」


 ウルカに渡された硬質な板を手本の型通りに切り出し削っていく。ちなみに形はハート型だ。

 何枚か削り出したウロコをウルカに見せる。俺としては完璧ではないが悪くないんじゃないかと思ってる。


「⋯⋯イオド、あんた不器用だねぇ!」

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