異星侵蝕
「すまない、一人逃した。一応原型の残った奴は持ってきたが、何かわかるか?」
エンジュ達のもとへ戻り、ウルカにコイツらの服装やら装備品などから分かることはないかハンマーを返しつつ尋ねる。
「ん、大分雑に扱ってたけど壊してはいないね。⋯⋯色んな村外の者に出会ったけど、コイツらは初めて見るね。機械が付いてるけどまともな布の服はここいらじゃ殆ど出回ってないからね。かなり遠くから来たんじゃないかね?」
「わたしも何度か別階層の人を見たことあるけど、この服装は知らないなぁ」
ウルカもエンジュもコイツらに見覚えはないようだ。
「装備と服の一部を持って帰るか。シュマに相談してみよう」
いきなり襲ってくるような危険な奴らだ。報告は必要だろう。
「それで、一人ドームの向こうに逃してしまったわけだがどうする? 何なら灰蚕の繭の特徴を教えてくれれば俺だけで採ってくるが」
ふたりをこの場に残していくのは少し不安だが、獣挽きが想像以上に頼もしい。戦闘が終わった後も眼玉を長く伸ばして索敵していた。取り敢えず怪しい奴はいないらしい。
それにエンジュとウルカも全く戦えないわけではないしな。
「そうだねぇ⋯⋯。敵が一人逃げてった場所にエンジュちゃんを連れて行きたくはないね。不意打ちにはまだ対応できなさそうだ。⋯⋯そうだね、見た目はまんま虫の繭だよ。ドームの入って右の方に生きた生産施設があるから、そこから見繕ってきて欲しい。⋯⋯ほら袋持っていきな」
ウルカから円盤状の物体を渡される。中央にボタンが付いている。
「そのボタンを押しながら本体をひねれば背負子に変形するからね。入るだけ採ってきておくれ。エンジュちゃんはあたしと獣挽きに任せな!」
「了解した」
俺は腰のポーチに円盤を押し込み次のドームに向かう。
「⋯⋯イオドまた君に頼っちゃってごめんね。無理言って連れてきて貰ったのに⋯⋯」
浮かない顔だと思っていたが、そんなことを気にしていたのか。
「初めての実戦を想定した探索なんだ。十分やれてるさ。むしろ実力を考慮せず着いてこようとしないだけ賢明だ。すぐ戻る。⋯⋯獣挽き、二人を頼んだぞ」
◇
三つ目のドームに入る。後ろで重い扉が自動で閉まるのが聞こえる。
さて右と言っていたな。
俺が生きた生産施設を探しに一歩踏み出すと、俺目掛けて矢が何本も高速で撃ち込まれた。
「⋯⋯仲間がまだいたのか。相変わらず不意打ちが好みか、情けない」
「黙れ化け物め⋯⋯。あれだけ打ち込んで何故まだ生きている!? 数打ち込めば機獣も殺せる電磁弓だぞ!!」
先ほど女を見捨てた男と、十人以上の似たような格好の者達。
致命傷には程遠いが、無傷ではないか。
顔は守ったが胴体に金属の矢が何本か刺さっている。
『損傷軽微。多数の敵を確認。戦闘モードに移行しますか?』
あれだけエンジュに油断するなと言っておいてこの体たらくだ。
頭蓋内に響く自動音声もどこか呆れているように感じられる。
「はぁ⋯⋯、一応聞いておこうか。有無を言わさずこちらを排除しようとする目的は何だ?」
身体に刺さった矢を無理やり引き抜きながら尋ねる。答えはあまり期待していないが。
それにしても、敵ながらなかなか質の良い鏃だ。表面とはいえ俺に傷を負わせるのだからな。持って帰ろう。
「———仲間をあれだけ殺しておいてぬけぬけと⋯⋯!! 貴様はただ、惨たらしく電磁弓の的になって死ね!!!」
仲間を殺されたことが余程頭に来ているらしい。
俺だって真っ先にエンジュを狙われなければ最初に対話を選択するくらいはしたさ。
やり過ぎたとは思わない。同じようなシチュエーションが何度こようと俺は迷わず敵を殺すだろう。
キリキリと弓を引き絞る複数の不協和音が響く。
あぁ、不愉快だな。それを何発か打ち込めば俺を殺せると思っているんだな。
何という不敬。
はやく繭を見つけてエンジュの元に帰りたいんだがな。
『再度確認。戦闘モードに移行しますか?』
こんな数に頼るような相手に使うのは腹立たしいが、そうも言ってられない。時間をかければエンジュ達が来てしまうかもしれない。
やるか⋯⋯。
「戦闘モード移行。【異星侵蝕・煌燬赫熔】」




