作成開始
朝だ。今日はエンジュの短槍とプルナの包丁を作ろうと思う。
ウルカからまだ連絡は来ない。いい女とはかなり準備に時間がかかるんだな。
まぁいい。早くエンジュに武器を作ってやりたかったからな。
エラー個体の角を一本手に取る。
こちらはまだ何も弄ってない、獲ってきたまま無加工の巨角だ。
「先端の方が真っ直ぐに近いか」
角は真ん中ら辺から曲がって前方に伸びる形だ。
曲がってから先の方が加工するにも適した太さで、そもそも先端は鋭く尖ってる。少しの加工で十分鋭利な槍に仕上げられるだろう。
黒のナイフを抜き、角に当てる。エンジュの身長より少し長めにしようと思う。
「相変わらず凄い切れ味だ」
何の抵抗もなくスッと刃が入る。強固な力場もなんのそのだ。
切断面も滑らかでツルツルだ。指で叩いてみると外側より中心部の方が音が高くなる。より密度が高いようだ。
「エンジュの手の大きさに合うように削っていけば、一番いい箇所が使えそうだ」
短槍全体に、滑り止めを兼ねて何か彫り物を装飾したい。ウルカの店の防具を見て、正直デザインなど無駄だと思ってた自分を恥じた。あれは美しい。
本職の連中並みに出来るわけないが、少し練習に角の欠片を削ってみた。
「⋯⋯まぁ、蔓に見えなくもないか?」
ヨレヨレでガタガタだが、蔓だと言われればそうかもなくらいには削り出せた。武器カタログに載っていた武具の装飾を手本にしたが、やはり素人には難しいな。
植物の蔓を装飾したいと思ったのは、エンジュとデザインについて話し合った時、カタログの植物をモチーフにした武器のページを他より長く眺めていた気がしたからだ。
滑り止め効果もしっかり有りそうだし、デザインとしても悪くないはずだ。俺の腕が追いついていないことだけが問題だ。
エンジュが握りやすい太さより少し太めに削る。装飾を施す都合上模様の周りを削ることになるからな。
「⋯⋯⋯⋯」
寝台以外ほとんど家具のない部屋に、角を削る音が響く。
単純作業は嫌いではない。拙いなりにそれっぽく蔓が巻き付いた風に削ることができている。
事前に練習したおかげで、多少はマシに見える。
「⋯⋯少し、太さにばらつきがあるか?」
数時間かけて削り終わる。握り心地を確かめてみるも、何か微妙に太さが違う箇所がある気がする。
「まぁ、気がする程度のものだし。悪くはないんじゃないか」
ここから太さの微調整は流石にしんどい。あまり強度を減らしたくはないし、目を瞑ることにする。
「あとは穂先だな」
なるべく殺傷力を増したいが、物騒な見た目にし過ぎると衛兵に没収されてしまうとエンジュが言っていた。
与えた傷を大きくしようとすると、穂先もどんどん物騒な見た目になってしまう。穂先がデカくなればエンジュにとっても扱いやすい槍にはならないだろう。
「⋯⋯与える傷の大きさではなく、内部の損傷を大きくすればいいんじゃないか?」
創造者どもがたまに装備しているドリルと言われる工具。あれを模倣し工夫すれば扱いやすく殺傷力も高い槍に出来るはずだ。
穂先を螺旋状に加工し、その淵を刃物のように鋭利にしていく。
蔓状に彫り物をした経験が生きてる。先端もより鋭くし、螺旋の溝は業物の刃物の如く怪しい輝きを放っている。
この槍なら扱う者の技量によっては俺の命にも届き得るかもな。
立ち上がり構えてみる。
当然だが軽い。エラー個体の角の芯を惜しげなく使っているため、硬度も凄まじい。叩けば金属音がする。
見た目も植物模様を彫ったおかげか、物々しい感じはない。これなら衛兵に没収されたりしないだろう。
「エンジュの短槍はひとまずこれで完成だな。あとは渡す時にでも調整すればいいか」
次はプルナへのお詫びの品だな。一本で何でも出来る包丁がいいと言っていたか。
「⋯⋯よく切れて食材を叩くこともできる包丁」
分厚さは必要だな。刀身の幅は広めにして反対の背の部分でも叩けるようにするか。
俺は角の端材を長方形に持ち手が付いたように加工する。
鋭く、出来うる限り薄く歯の部分は削る。
「キノコが好きそうだから、キノコの絵でも彫っておくか」
仕上げにちょっとした装飾を施して完成だ。刃を触ると相当な薄さまで削れたのがわかる。それでいて刀身は厚みがあるから色々使い勝手が良さそうだ。
満足した俺は時間を確認すると、もう夜と言っていい時間になってるのに気づいた。
「⋯⋯そんなに集中していたか。渡すのは明日だな」
削り屑など端材をまとめて端に寄せておく。
寝台に横になり、満足感を得ながら目を閉じる。




