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槍をつくろう

 正直ホッとした。やはり付け焼き刃な剣術は危うい。変に自信を持たれても困るし。基本的には自衛のため俺がヘルプに入るまでの時間稼ぎとしての武器を持って欲しい。


「わかった。とっておきの槍を作ってやる。それで、誰に習う? 単純な突く動作くらいなら俺でも教えられるが」

 実際、覚えるのは突く動作だけで十分とも言える。ただ、相手との距離感や細かい姿勢や足幅となると我流になってしまう。

 できればシュマなど普段から槍の鍛錬をしている熟練者に指導してもらいたいが。


「⋯⋯教えて貰えるならシュマに教えてもらいたい」

 おぉ、前は顔が皺くちゃになるくらい嫌そうだったのに、どういう心変わりだろうか?

 俺が驚いてるのがわかったのか、エンジュはバツが悪そうな顔で説明する。


「剣に対する憧れだけで持っていいものじゃないのは流石に分かるしね。イオドが物凄い頑張ってくれてるのが分かるから、あたしが我儘言うわけにはいかない。⋯⋯この前のイオド、凄い寂しそうだった。それが何故か分からないのも、あたしも見てて悲しい。早く記憶を取り戻してあげたいの。だからイオドがシュマが適任って言うならシュマに習う!」

 

 う〜む。俺の知らぬ間にエンジュにはえらく心配を掛けてしまっていたようだ。まぁ、シュマに習う気になってくれたのは僥倖。

 シュマはおそらく基本の鍛錬の大切さを理解している者だ。掌のタコの分厚さが如実に語っている。


「わかった。エンジュの気持ちはありがたく受け取っておく。俺も本格的に、俺が何者なのか知りたくなっていたんだ。シュマには自分で言うか? 俺が伝えてもいいが」


「⋯⋯いい、あたしが直接言う。甘えちゃダメ」

 エンジュが心底嫌そうに奥歯を噛みながら、ふぐぐ言っている。だが嫌そうな顔をしてはいるが、本気の嫌悪は感じない。

「嫌そうな割には、本気で嫌がってるわけじゃなさそうだな」


「ん〜? あぁ、まぁね。本当に嫌なわけじゃないけどね。⋯⋯あいつは幼馴染みなのよ。しかもちょっと意地悪なタイプのね。子供の頃だけど」

 なるほど。幼馴染みか。子供の頃の意地悪で苦手意識でも持ってしまったのだろう。

 シュマは口は悪いが根は真面目で世話好きだ。エンジュも習い始めれば分かるだろう。


「シュマは泣いて頼むなら教えてやるよと伝えるよう言っていたな。意地悪な所は昔からか」

 俺がシュマからの伝言を伝えると、むきーと湯気を吹いて白銀の髪を掻きむしって怒っていた。


「だからあいつに頼むのは嫌なのよー!!」


                 ◇


 一通りシュマに対する愚痴を聞き終わり、短槍のデザインはどうするかエンジュに尋ねる。

「槍のデザインね。正直、槍に可愛らしさとかは求めてないから持ちやすい感じにしてくれるなら、イオドの好きな感じにしてくれていいよ」


 まぁ、剣とかと違って槍はシンプルだしな。持ちやすく、それでいて刺しやすく一撃で致命傷を与えられるような穂先にするか。

「わかった。取り敢えず、刺されば相手は死ぬくらいの槍に仕上げてやる」


「⋯⋯程々にね。あんまり凶悪な見た目の武器だと衛兵に没収されちゃうかもだし」

 むむ、それは困る。折角エラー個体の角をふんだんに使うのだ。衛兵に没収されたらテミス様に献上されかねん。それは何だか悔しい。


「⋯⋯なるべく目立たないよう、それでいて威力の高い槍に仕上げて見せる」

 お願いね、とはにかむエンジュ。

 

 まぁまぁ長居したな。エンジュの身長と手の大きさを測り次第お暇させてもらう。

 我が家に帰り、獣挽きにただいまを言う。おかえりと言うように触手が出てきてふりふり振ってくれる。

 何だか少し愛着が湧いてきたぞ。


 寝台に腰掛け、アームデバイスに保存した武器カタログの槍のページを眺める。

「色々な形の穂先があるが、どれが一番殺傷力が高いだろうか?」

 単純な一本槍、根本に鎌のついた鎌槍。突きも斬りも両立した薙刀風も惹かれるが、機能を求めると扱う難易度も上がってしまう。

 なるべく突きだけに集中させてやりたい。


「貫通力と傷口を拡げる形の穂先がいいよな」

 うん、取り敢えず何パターンか作って一番いい穂先に決めよう。

 この日は寝ずに朝まで考えていた。

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