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エンジュの好み

 今日はエンジュに上衣を借りて、デザインが何がいいか聞こうと思う。短槍も俺にできるか分からないが、いい感じに仕上げたい。

「今日も留守を頼むぞ、獣挽き」

 朝ごはん代わりに角の欠片を与える。


 触手が伸びてきてどことなく嬉しげな雰囲気を感じる。

 獣挽きに我が家の留守を任せ、エンジュの家に向かう。連絡は予め入れてあるからアポ無し訪問ではない。


 到着。

「エンジュ、着いたぞ」

 ドアをノック。

「いらっしゃい、イオド! 今日は防具のデザインを一緒に考えるんでしょ? 入って」

 ワクワクと楽しそうな表情のエンジュ。わかるぞ。新しいガジェットはワクワクするよな。


「あぁ。そのつもりだ」

 家に入れてもらい、卓につき出されたキノコ茶を啜る。

「それで、どんな防具を作る予定なの?」

 アームデバイスを操作し、ウルカに送ってもらったスケイルメイルの立体画像を表示して見せる。


「こんな感じで、服に鱗のように縫い付けていくタイプの防具でな。軽くて頑丈、製作難度も高くない鎧だ」

 空中に投影されたスケイルメイルを食い入るように見つめるエンジュ。ちなみに今見せているのは鱗部分がハート型のウルカ謹製の鎧だ。重なってる部分はハートが分かりずらいが、肩や首下などに単独でハートが配置してあり可愛らしい。


「何これめっちゃ可愛いじゃない!! え、これをイオドが作ってくれるの!?」

 思ったよりもずっと喜んでくれたようで何よりだ。

「あぁ。シュマに教えてもらった店の店主が教えてくれるんだ。だからエンジュの探索用の上衣を借りたい」


「わかったわ。今日持ってく?」

「そうしようと思ってるが、店主の準備が出来次第素材を一緒に採りに行く約束なんだ。帰ってきたら借りるでいいかもな」

 今日借りていくつもりだったが、よく考えれば糸がないから何もできない。まぁ、デザインを気に入ってもらえたようだから来た意味はあったか。


「素材も採りに行くんだ? 本格的だぁ⋯⋯ねぇ、それあたしも一緒に行けないかな?」

 エンジュが遠慮がちにもじもじしながら聞いてくる。


「秘密の場所らしいし、エンジュの安全を確保できるか不明だ。俺としては来てほしくないが⋯⋯」

 来てほしくないの辺りで、エンジュの眼があからさまに曇るのを確認してしまい黙る。

 来たかったのだろうか? だが準備も整ってないのに危険だと思う。俺が黙考していると、エンジュがおずおずと話し出す。


「⋯⋯最近、イオドがあたしのために色々頑張ってるのに、ただ待ってるのは心苦しいと言うか、あたしも一緒に何かやりたいの」

 強い眼差しで俺を見つめるエンジュ。言いたいことは分かるがな。

「俺は準備の段階で危険を冒す必要は無いと考えている。今後探索するときは嫌でも危地に赴かなければならない訳だし、今は俺に任せればいいんじゃないか?」


「あたしはイオドに会うまで拾いピッカーとして色々活動してきたのよ! ただ守られるだけは嫌よ!」

 もしかしたらエンジュの拾い手としてのプライドを刺激してしまったか。守らねばと思うあまり過保護になっていたかもしれないな。


「わかった。流石に子供扱いが過ぎたな。ただ同行を許可するのは俺ではなく店主だから、彼女がダメと言うなら諦めてくれ」

 企業秘密に関わるだろうし、ウルカに無理を言える立場にない。


「わかってくれてありがとう! もちろん、その店主さんがダメって言ったら大人しくしてるよ。ただ⋯⋯真面目に聞いてくれて嬉しいよ。相棒としてやって行きたかったから、今の状態はおんぶに抱っこ状態でとても相棒と言えなかったからさ。モヤモヤしてたんだ」


 確かにエンジュの言う通り、対等の相棒としては俺は見ていなかったかもしれないな。庇護の対象というか、共にという意識が甘かったようだ。

 認める部分は認めて、共に助け合わなければな。


「では、店主の許可がでれば一緒に探索に行くとして、武器を用意したいんだが⋯⋯まだ剣にしたいか?」

 できれば剣はやめて欲しいと思ってるが、嫌々槍を使ってもそれはそれで危ない。

 エンジュの答えを待つ。


「⋯⋯剣への憧れはあるけど、そんな事言ってる場合じゃないって考え直したんだ。あたしはイオドの言う通り短槍にするよ!」

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