先に武器を造ろう
今すぐ出発という訳には行かないとのこと。いい女は準備に時間が掛かるらしい。アームデバイスをお互いに認証し、準備が出来次第連絡が来ることになった。二、三日はみてとウルカ。
「シュマ、今日はありがとうな。いい人物を紹介してもらえた」
例に漏れず、クセ強めだったが。
「テメェの為じゃねぇさ。少しでもあいつが死ににくいようにしねぇと心配でな。あっさり死んじまいそうな危うさが抜けねぇ」
俺を見つけた状況も、エンジュのドジが招いた事だしな。俺があそこで寝ていなかったら、下手したらあの廃墟がエンジュの墓場になってたに違いない。
「じゃ、俺ができるのはここまでかね。エンジュに槍を習いてぇと泣いて頼むなら考えとくって伝えとけよ」
そう言うとシュマは手をヒラヒラさせて帰っていった。その後ろ姿はどこか機嫌が良さそうだった。
今日はもうエンジュを訪ねるには遅いな。ミゼーアと試合をし、いい防具屋と知り合えた。
「帰って寝て、明日エンジュの家に行くか」
シュマに槍を習うか聞きたいし、探索用の上衣も借りなければいけない。どんなデザインがいいかも確認しておくか。
まぁ、最悪槍くらいなら俺が扱い方を教えてもいいだろう。
充実した我が家に帰還すると、お隣さんのご機嫌な鼻歌と共に鼻腔をくすぐるいい匂いが漂って来た。
そういえば角を粉にして調味料として譲ろうと思っていたが、固有能力持ちと判明したし、食べて命に関わったらまずいよな。
次の探索で何かしらお詫びに取ってくるか。
「あ、イオド君丁度いいところに! 新しい食材を手に入れたんだけど食べてかない?」
丁度いい。お詫びが何がいいか、相伴に預かりながら聞いてみるとするか。
「ありがとう、今日も美味そうな匂いだ」
勝手知ったるお隣さん。食器を並べて卓につく。
「今日はちょっとしたコネでね、何と! エラー個体角肉のモツを入手できたんだ! 害は無いのは調べてもらってるから食べてみよう。村の人は殆ど食べないんだけど、古のレシピには鍋にすると大変美味って書かれてるんだ」
プルナが注いでくれた鍋は、角肉のモツと様々なキノコが入ったモツキノコ鍋だ。
濃厚なモツの出汁の香りが食欲をそそる。
「プルナに一つ詫びないといけない。エラー個体の角は食用に適さない可能性が高い。譲ると言いたが無しにしてもらいたい。お詫びに今度また探索に出るから、何かリクエストがあれば採ってこよう」
「あら、ご丁寧に。そもそもエラー個体の角なんてレア物少し恐れ多かったよ。お詫びか⋯⋯そんなに気を使う事ないけど、また何か機獣と交戦したら何かお肉とか欲しいかな?」
何だか逆にプルナに申し訳なさそうにさせてしまった。何だか心苦しい。武器造りのついでに、包丁など作ってみるか?
「⋯⋯プルナが今使ってる包丁、だいぶ年季が入ってるだろ? 俺が新しく作ろうか?」
俺がそう聞くと、プルナはソワソワし出した。
「え、包丁! でもさすがに貰いすぎな気がするよ⋯⋯」
遠慮しようとするが、貰いすぎと言うなら此方こそいつもご飯を貰っていてまだ返してない。
「それはお互い様だ。俺は美味しい飯にありつけてる。そろそろ何か返さないと気が済まない。気楽に受け取って欲しい。出来ればどんなデザインがいいか教えて欲しい」
「そ、そう? こっちとしては実験に付き合ってもらってる感じだったんだけど、美味しかったのか。⋯⋯よかったよ。じゃあ、貰っちゃおうかな!」
受け取ってもらえるようでよかった。これで多少恩は返せるだろう。ホッと胸を撫で下ろし、プルナ作モツ鍋を堪能した。モニョモニョした食感が面白く、相変わらず大変美味だった。
今回はプルナも泡を吹いたりせず、平和なまま解散した。
◇
さて、腹も満たした。プルナからの包丁のデザインに関する要望も聞けた。幅広で肉厚、食材を切って叩いてと何でもできるデザインがいいらしい。
エンジュの短槍と一緒に作るか。
獣挽きにまた少し角の欠片を与えて、床につく。




