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防具を造りたい

 ミゼーアと模擬戦をしたかと思えば、その足でシュマととある武具店まできている。なかなか忙しい日だ。他にする事などないが。

 商い通りの少し奥の目立たない路地裏にひっそり店を構える、こじんまりした武具店。

 賑わってるようには見えないが、シュマが連れてきたなら間違いはないだろう。


「知り合いの店なのか?」

「いや、部下に聞いてみたら女性用武具ならここがおすすめだと言われたからな。どうもデザインがいいらしい。素材はあの角なんだし、着心地とか専門家に聞いた方がいいだろ? 俺らは女の防具の好みなんか知らねぇし」


 デザインか。防具にデザインなど考えたこともなかった。着心地もだ。守れればそれでいいだろうと思っていたが、女性は違うのか。エンジュもそうなのだろうか?

「入るぞ」


 シュマがドアを開けて入る。涼しげな鈴の音を後に俺も続く。

 どことなく温かみを覚える暖色系の塗装が施された店内には、男性用の無骨な防具と違い、リボンや繊細な彫り物などが入った俺から見ても洒落ているなと感じる防具が並んでいた。


「いらっしゃい! おや、男が来るだけで珍しいのに二人連れとはね。彼女さんにプレゼントでも選びにきたのかい?」

 店に入るとすぐ、カウンターで暇そうにしていた女性店員さんが声をかけてきた。

 短めの赤髪、姉御と言いそうになる力強い眼差し。つなぎの胸元が大きく盛り上がっていて窮屈そうだ。


「プレゼントじゃない。ちょっと相談したいことがあって来たんだが今いいか?」

 買い物客じゃないと分かると少し残念そうにしていたが、相談くらい大丈夫よと快く応じてもらえた。


「それで、何が聞きたいのかな? 彼氏が居るかどうかなら今は居ないよ」

「今度探索に行く相棒に防具を造りたいのだが、女性用防具の勝手が分からなくてな。意見が聞きたい」

「スルーかい! ⋯⋯まぁいいよ。というかあんた防具造れるのかい? あまりそうは見えないけど」

 

「造ったことはないが、身体に沿うようになんやかんやすればいいと思っていたが違うのか」

「違うに決まってるだろ! 防具造り舐めるなよ!」

 どうも違ったようだ。思ってることをそのまま伝えたら怒られてしまった。


「あんたら男と違って、女は繊細なんだよ。胴の細さも胸の大きさも男の防具より個々人のサイズ差が大きいんだ。本来はオーダーメイドすべきなんだけどね流石に高くつくから、うちでは大中小で大まかに分けてる」

 なるほど。男でも体格の違いは大きいが、それこそ背がデカいか筋肉の厚みが有るかどうかだ。ちょっとした調整で済むのだろう。


 目の前の店員さんとエンジュでは確かに同じサイズの防具は着れないだろうな。少しの調整程度では入らなそうだ。

「すまない、俺があまりにも無知だったな。気分を害したなら許して欲しい」

「なんだい、えらく素直に謝るね。アンタみたいにきちんと謝れるのは結構な美徳だよ! 大事にしな! おっと自己紹介がまだだったね。あたしはウルカ。防具造りも販売も全部自分でやってんだ!」


 ガハハ、と笑って肩を叩いてくる。どうやら姉御に許してもらえたようだ。

「忠告感謝する。俺はイオドだ。⋯⋯だがそうなると俺に防具を作るのは難しいかもしれないな」

 繊細なサイズ調整がいるのなら、男の俺が気軽に聞けない部位のサイズを詳しく聞かなければいけないという事。嫌がられる気がするな。


「相棒を連れて来て貰えばうちでサイズ調整やら何やら、全部やるけど? ポイントはそれなりに貰うけど」

 それも考えたがポイントがネックなんだ。少なくないとはいえ、オーダーメイドの防具を作れるほどポイントはない。聞いてみたがとても払えない。


「そんなポイントは手元にない。それに特殊な素材でな。今のところ俺しか加工できないんだ」

「ふぅん、ちょっと興味あるね。今出せるかい?」

 俺は腰のポーチから、獣挽きにあげるため細かくしておいた角の欠片をウルカに渡す。


「へぇ、軽い割にだいぶ硬いね。でもこれくらいの硬度ならうちの設備でどうにかなりそうだけど?」

 俺はウルカの手元の角の欠片を摘んで力を込める。

「———っ! こいつは驚いたね。固有能力持ちの素材か! しかもこれは力場が発生してる。⋯⋯確かにこれはうちでは厳しいな。設備が幾つあっても足りやしないよ。アンタはこいつを加工できるのかい?」

 俺は黒のナイフを抜くと、ウルカに渡す。


「それで切って見てくれ。力場ごとな」

「このナイフは一体⋯⋯。見たこともない素材だ。———なんだいこりゃ! とんでもない切れ味! いや、これは切ってるのか?余りにも手応えがなさすぎる。力場も用をなしてないね⋯⋯」


 スッと角の欠片を抵抗なく切るナイフに余程の衝撃を受けたのか、ぶつぶつと黒のナイフを眺めながら考察している。黒のナイフを見せると皆本題そっちのけになってしまうな。

「見ての通り加工はできる。だがウルカのいう通り、素材を切れるだけでは防具造りは厳しいな。ポイントを貯めて改めて依頼しにくることにするよ」

 

 俺がそう言ってひとまず諦めようとしていると、ウルカがにっこり笑って言う。

「まぁ待ちなって。相棒に防具を造ってやりたかったんだろ? 作業の大部分をアンタがやるってんなら格安でお姉さんが指導してやってもいいよ」

 

「それは有難いが、あまりそちらに得がなさそうだがいいのか? 指導すると言ったって、技術は貴重だろう」

 ウルカは俺の言葉に、分かってるじゃないと不適な笑みを浮かべる。

「勿論、ポイント以外にも対価は貰うよ。格安にする代わりにこのナイフをいつでもレンタルできる権利をおくれよ! それに指導にしても大した技術の要らない物を造ってもらう予定だからね」


「レンタルなら別にいつでも構わない。それよりウルカの言う防具は俺でも作れるのか?」

 手先は自慢じゃないが器用ではないぞ。

「アンタにはスケイルメイルを作ってもらうよ」

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