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シュマにも教えてあげよう

 家に戻り寝台に腰を下ろす。さて仕組みも分かったところでどんな武具を造ってやるかとエラー個体の角を眺めながら思案していたところ、ハッと気づいた。 

 思い返せば、テミス様が力場発生の仕組みを知りたがっていたよな。

 メギスの分析で、角が力場の要らしいのであちらに渡っている肉や内臓を幾ら調べても意味はないんじゃないだろうか。


「テミス様に直接会うのは嫌だから、シュマに知らせてやるか」

 アームデバイスで力場の原理について話があるとシュマにメッセージを送ろうと、文章を練っているとシュマの方から通信があった。

「イオド今いいか? ちょっと聞きたい事がある」


「今は特に用事はない。何が聞きたい?」

 ほんの少し言い淀む間の後、シュマが尋ねてくる。

「実はエラー個体の分析が芳しくない。研究班が幾ら調べても何をしても力場が出ないみたいでよ。お前角を持って行ってたよな? 少し分けて貰えないか。もう調べてないのは角くらいらしい」


 何かと思えば、ちょうど俺が連絡しようとしていた力場についてだった。

 やはり角以外は力場に関係なかったようだな。

「角についてはこちらの伝手で調べてもらっていたんだ。角に偶然刺激を与えたところ力場が発生してな。分析の結果、角が力場発生の要だった。欲しいなら少し分けてやってもいいぞ。エンジュの武具に使う予定だから少しになるが」


 俺が倒したんだし、それくらいの我儘は問題ないだろう。

「てめぇもう伝手なんてできてるのかよ。⋯⋯まぁいい。分けて貰えるなら少量で十分だ。もともとてめぇの報酬だしな。テミス様の館まで持ってきてもらっていいか?」


「あぁ、構わない。ついでにシュマに聞きたい事があるんだがいいか?」

 丁度いいのでエンジュの護身についてシュマに聞いておきたい。槍がいいか、憧れを優先してやって剣を造ってやるか。

「何だ?」


「エンジュの探索時の武器選定について意見が聞きたい。俺は短槍がいいんじゃないかと考えてるんだが、エンジュがどうも剣に憧れを持ってるらしくてな」

 剣を造ってみたくはあるが、やはり扱いに難があると思ってしまう。

「剣なぁ、憧れる気持ちは分かるがこれから年単位で鍛錬を積むならともかく、そんな時間は無ぇだろうしな。無難に短槍でいいと思うぜ」


 なるべく本人の意向に沿いたいが、こればっかりは安全上エンジュには剣を諦めてもらう方向で行くか。

「シュマもそう思うか。なら短槍を造るとしようかな。是非、指南役はシュマに頼みたいんだがいいか?」


「⋯⋯俺は別に構わないがよ、あんだけ強ぇんだからテメェが教えればいいじゃねぇか。エンジュも俺が師匠なんて嫌がると思うがね」

 急に少し距離を感じる話し方になった。


「確かにエンジュは『えぇ⋯⋯』と言っていたが、俺は俺が教えるよりシュマが教える方が適任だと思ってるぞ」

「悲しくなるからはっきり言うのはやめろ。⋯⋯俺のが適任ってどう言う事だよ? エラー個体の戦闘を見て、俺はテメェの足元にも及ばねぇと実感したぞ。何を持って俺が適任だって言うんだよ」


 シュマが俺を評価しているのは意外だったが、それよりもシュマの己への過小評価が俺にはもっと意外だった。

 少なくともこんな自信無さげなことを言う男だと思ってなかった。

「俺の強さは言ってしまえば獣の強さだ。鍛錬を経て得たものじゃ無い。対してシュマ、お前の強さは弛まぬ鍛錬によって得たヒトとしての強さだ」


「俺の強さなんて戦ってもいないのに分かるかよ」

「分かるさ。立ち振る舞い、筋肉のつき方俺との距離の測り方。そのどれもが研鑽による技術の蓄積に基づいてる。力のぶつかり合いでお前は俺には勝てないだろうが、技術の競い合いでは話は変わってくる」

 つい先日苦い思いを味わったばかりだ。幾らパワーが有り余ってようが技の極致の前に手も足も出なかった。


「⋯⋯イオド、テメェは何者何だ?」

 シュマが静かな声で聞いてくる。

「覚えてないさ。これから探しに行くんだ。エンジュと一緒にな」


「はぁ⋯⋯。あいつが習いたいと言うなら俺は構わないと伝えてくれ。じゃあ待ってるぞ」

 通信が切れた。

 準備して向かうとするか。

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