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エンジュの武器

「考えたんだけど、あたし達の探索は転移装置がない場所まで行く可能性もあるじゃない? だからあまり重い武器はあたしには向かないかなって。武器を持って移動するだけでへばってたら完全なお荷物だしね」

 一理ある。俺もエンジュには非力な者でも扱える様な軽く、それでいて威力のある武器を持ってもらおうと思っていた。


「同感だ。軽量かつ、単純な動きで強いのが理想だな」

「単純?」

 あまりよく分かってなさそうなキョトン顔のエンジュ。

「殴る、突くなどの技術があまりいらない動作で殺傷力の強い武器だな」

「斬るのは難しいの? こう、ズバーっとさ」

 エンジュが拙い構えで斬り下ろす動作をしている。


「斬る動作は簡単そうに見えて、奥が深い。習熟には時間がかかるだろう」

 上手く敵を斬るには長い鍛錬がいる。それに対して殴る、突くなど少しの練習で扱えるようになる。極めるとなれば話は別だが、取り敢えず俺が駆けつけるまで時間を稼ぐ程度なら少しの練習で問題はないだろう。


「そうなると、棍棒とか槍とかかな。単純て言うと」

「そうだ。槍ならシュマにも基本を習う事ができるしな。棍棒も捨て難いが、君の腕力だと殴るよりは突く方が確実だと思う」

 短槍とか悪くないと思う。狭い場所でも取り回しがいいし、エラー個体の角で作るならより軽くできる。


「えぇ、シュマに習うの? ⋯⋯ぐちぐちうるさそう」

 乾燥キノコをポリポリ食べながら嫌そうな顔をするエンジュ。

「ああ見えて意外と面倒見が良さそうだし、適任だと思うがな」

 俺のアームデバイスを設定してくれたり、角肉討伐時は心配する素振りも見せてくれた。

 ⋯⋯この乾燥キノコも美味いな。後で貰えないか聞いてみよう。


「あれ、いつの間にか仲良くなってたの?」

「特に仲良くなってはいないな。俺にも色々世話を焼いてくれたから、エンジュが頼めばしっかり教えてくれるだろうと思っただけだ」

 シュマの歩き方や俺への相対の仕方で、なかなかの鍛錬具合を窺わせる。基礎鍛錬の重要さを分かってる身体つきだ。


「剣とか使ってみたいって言ったら、イオドが教えてくれる?」

 俺が剣の扱いを? 

「何故だ? 俺は剣に習熟などしてないぞ」

「あのデカい剣を使うから、教えてもらえるかなぁって思ったんだ」


 あぁ、獣挽きのことか。あれに関しては技術で振ってるわけではないしな。基本、ぶん殴ってるだけだし、斬る時は機構を使って無理やり削り斬る感じだ。

「あれに技術は要らない。要るのはパワーだけだ。俺に剣の技術は教えられない。⋯⋯どうしても剣が使いたいならミゼーアに習うといい」


「う、ミゼーアか。イオドはミゼーアがどれ位剣を扱えるか知ってるの? まだあまり接点はなさそうだけど」

 確かに最初に会ったきりそれ以降会ってはいないが、彼の実力を見極めるにはあの一度の邂逅で十分だ。


「剣を握ってない状態にも関わらず、間合いに不用意に入ったら斬られる感覚を覚えた。あの剣で俺が斬れるかは分からないが、剣の実力は警戒に値するだろう」

「あの短時間でそこまでわかるんだ」

 エンジュが俺のミゼーア評に目を丸くしている。


「身体つきや、姿勢に歩き方。目線の動きなど判断材料は多い。全ての実力が分かるわけではないが、剣を習いたいならミゼーアで間違いはないんじゃないか?」

 それでも一つの技に絞ったとしても、実戦で使えるようになるまでかなり時間がかかるだろうな。


「ミゼーアに習うならシュマに槍を習おうかな」

「それがいいと思うが、ミゼーアと仲でも悪いのか?」

 剣を使ってみたそうだったのにえらく簡単に諦めるな。


「まぁ、剣を使ってみたいなぁって憧れはあったけどね。めぼしいものは決めてたし。仲が悪いわけじゃないよ。ただでさえ忙しいミゼーアを煩わせたくなくて」

 テミス様の側を離れるわけにはいかないとか言ってたもんな。

 ただ、エンジュが頼めば否とは絶対に言わないと思う。


「まぁ、どの武器にするかは分析結果次第だがな。固有能力の残り方次第ではエンジュの憧れの剣を作るのも悪くないかもしれないしな。今日は意見を聞いてみたかったんだ」


「なら折角来てもらったけど詳しくは結果がわかったらだね。あたしには想像つかなかった話も聞けて参考になったよ。剣の扱いが難しいって知らなかったしね」

 エンジュは剣を使いたかったみたいだな。まだ少し名残惜しそうだ。


 有意義な話し合いができたと思う。俺は乾燥キノコを少し分けて貰い、エンジュ宅をお暇した。

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