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色違い

「何やら凄い事はわかったが、結局この色違いはどういったものなんだ?」

 別次元からのエネルギーと言われてもよく分からん。

「この色違いミセタイ茸には、君が先ほど言っていたテミス様に似ていたという女性の存在率が保存されている」


「存在率?」

「君の記憶から読み込まれた彼女は、恐らく既に亡くなっていた者なのだろう。だが余りにも強大な存在を幻覚体とはいえ再現するにはこの世界では難しかった。だからミセタイ茸は次元を越えて持ってきたのさ。彼女が存在する確率を、エネルギーを。この色違いはその確率の残りが結晶化したものさ」


 確率の残り? 説明されてもやはりよく分からない。それよりも、あのテミス様似の幻覚体は相当な人物だったみたいだな。そんな人物が俺にとっては厄介な存在だったと。一体どういう関係だったのか気にならないと言えば嘘になる。

 店主は何か知っているだろうか。


「店主はテミス様似の幻覚体についてわかる事はないか?」

「そうだね、憶測でしかないけど、テミス様には姉妹機が存在したんだ。直接見たわけではないから断言できないけど、その中のどれかじゃないかね」


 姉妹機か。それなら似ていたのも頷ける。

 ⋯⋯テミス様が最初にあった時、不自然な態度だったのはこの事と何か関係があったりするのか?

 ただ普通に尋ねたところで答えてくれるビジョンは浮かばないな。はぐらかされて終わりだろう。


「どこかに姉妹機の情報が残ってると思うか?」

「情報ならどこかの階層に残ってるかも知れない。ただテミス様以外の姉妹機が生き残って今も稼働してるかは分からないよ」

 エンジュと共に探索する目的が明確になったな。


 今まではそのうち思い出すだろうと深く考えてなかったが、あの女との邂逅以後は俺にいったい何があったのか。俺とあの女との関係は何か。あの表情の理由。

 知りたい事がハッキリと把握できた。


「話を戻すよ。この結晶は君が持つべきだ。というより君しか所有できない。君が採取するよう促されたように、この結晶には意思がある。⋯⋯持ってごらん」

 店主に促され、結晶化したミセタイ茸を掌に乗せる。

「⋯⋯形が!」


 一瞬、カッと光を発したかと思うと紫の指輪が掌に残っていた。

 何かの花を模した花輪の様な指輪だ。

「⋯⋯マーガレットか」

 店主の表情は深いフードで伺えないが、声音から同情めいたものを感じた気がする。


「この花の名前か?」

「そうだよ。かつて地球に存在していた可愛い花の名前さ」

 俺が装備した方がいいというか俺しか装備できないようだから、左手に嵌める。右だと武器を握りにくそうだしな。


「⋯⋯その指に嵌めたのには何か意図があるのかい?」

「右は武器を握るから、左に嵌めた」

「まぁ、少しは影響はあったのかね⋯⋯」

 何だか呆れたような響きを感じる。


「然るべき時、その指輪は君を導くだろうさ」

「導く? 何にだ」

「運命にさ。とびきり過酷なね」

 過酷だろうと何だろうと、俺のやる事に変わりはない。エンジュの夢を叶え、俺の記憶を取り戻す。


「取り敢えず依頼達成助かるよ。エンジュの分も作っておくからできたら連絡するよ」

 アームデバイスを翳しあい、登録する。

「また、採ってほしいのがあったら言ってくれ」

「あぁ、そうするよ」


                   ◇


 依頼の品を納品した俺は、エンジュに連絡を入れた。

 特に用事は無かったようなので、これから家に向かう事にする。果たしてエンジュはどういった武器をご所望なのだろう。

 店主から迅速に採ってきてくれたお礼にと、美味い出汁の出るキノコを貰った俺はホクホクとエンジュの家に向かう。


「いらっしゃい、イオド。早かったね」

 エンジュの家に到着。

「薬師の店にいたんだ。そう遠くないからな」

「⋯⋯なんか、イオド元気ない?」


 俺の顔を訝しげに見ながら言うエンジュ。

 そんなはずはないと思うが、幻覚体の謎の言動に悩んでいたのがまだ顔に残ってたのか。

 俺は軽く薬師の依頼と、謎の幻覚体についてエンジュに話した。


「そんな事があったんだね。なんか聞いた限りだと記憶を失くす前のイオドと親しかったんじゃないかって思っちゃう」

「そう思うか。あいつは俺を知ってる風だった。俺には覚えがない顔なのに。だが最後の笑顔を思い出すとそんな筈ないのに胸に穴が空いたような気分になる」

 己の胸に手を当てる。損傷などない。だけど確かに何かが無いのだ。


「⋯⋯イオド、絶対思い出そう! テミス様の姉妹機かもしれないんでしょ? なら絶対記録がどこかにある筈だよ! 一緒に探しに行こう!」

 励ますように笑うエンジュの言葉に、少し胸が満たされるのを感じる。

「⋯⋯そうだな。わからないなら探せばいいだけだな」

 必ず思い出す。あの言葉の意味、手加減してまで俺に介錯させた理由。


 そのためにも、エンジュの武具は真剣に考えなくてはな。

 礼を言い食卓に着く。

 エンジュが淹れてくれたキノコ茶を呑みながら、武器について相談する。

「それで、何か希望はあるか? 素材の分析を今して貰ってるからここで決定というわけではないが」


「あ、分析してるんだ。異常個体の素材だもんね。何か変な所でもあったの?」

 複雑な味わいのキノコ茶を啜る。美味い。

「うん、エラー個体の能力が残っていてな。どこまで有用なのか調べて貰ってる」

 何度でも使える類の能力だと有難いんだがな。


「そ、そんな貴重な素材をあたしの武器に使うの!? もったいなくない?」

 何を言ってるのやら。

「君が死んだら探索は終わるんだぞ? 俺は死なない。君は死ぬ。なら君には常に信頼のおける武具を身に纏ってもらう」


「そりゃそうだけど、君が使う方が有効活用できそうじゃない」

「俺には獣挽きがあるからな」

 大抵の敵はアレで何とかなる。獣挽きで戦えない敵なら撤退あるのみだ。俺だけならまだしも、守りながら死闘はできない。

「いいから、エンジュの思う理想の武器は何だ?」

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