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イオドの楽しいキノコ採り

 店主にミセタイ茸の群生地の詳細をアームデバイスに送ってもらった。依頼が終われば破棄しなければいけない。知識のない者が扱うには危険すぎるから、知る者に制限をかけているようだ。どうも俺は店主からの信用は得ているみたいだな。


 群生地までの道のりは、あのエラー個体が陣取っていた部屋に秘密の抜け道がある。どうも角肉の培養槽の裏の壁に外せる壁パネルがあるらしい。店主特製の薬剤で貼り付けてあるらしく、取り外すための薬剤も貰った。無論、貼り直すための薬剤もだ。


 角肉の培養には周期があるようで、俺がエラー個体を討伐したばかりだから暫く再出現はしない。


 俺は家に装備を取りに一旦戻る。獣挽きを手に取ると触手を出して手をさわさわしてくる。懐いてきてるのだろうか。

「⋯⋯帰ったら角でもあげてみるか」

 どこが口にあたるのか分からないが。

 早速出発する。ただでさえ移動に時間がかかるのだ、幻覚体との戦いに負けるとは思ってないが手間取った場合を考えてすぐ出る。


 村の門を出て角肉の階層に跳ぶため転移装置まで移動する。門番には薬師からの依頼だと告げると、もう話が通っていたのかすんなり通してもらえた。

 シュマやエンジュが装置のパネルを弄っていたのを見ていたから、惑うことなく跳べた。


「さて、二番目の培養槽の裏だったな」

 角肉の培養部屋で秘密の抜け道を探す。指定された培養槽の裏を見る。どのパネルが外れるか普通に見ただけでは分からない。店主に渡されたモノクルを右目に嵌め電源を入れる。


「⋯⋯これが印か」

 キノコがにっこり笑顔のマークが描かれていた。

 腰のポーチから薬液の噴霧装置を取り出し、印の付いたパネルの縁に吹きかけていく。


 暫く待つとパネルがゆっくり此方に倒れてきた。

「この先か」

 人一人がしゃがんで通れる位の狭い通路。少しづつ掘り進めたのだろうか、切れた配線やパイプが伺える。

 パネルを嵌め直して狭い通路をしゃがんで進む。かなり歩きづらい。


 暫く進むとかなり広い空間に出た。

「ここからが長いんだったな」

 目前に広がるのは果てが見えない程の金属の空間。オレンジの燈火が淡く照らし、低く機械の駆動音が響く。

 少し進んだ先は崖になっていて下は当然のように把握できない高さ。

 そしてどこに続いているのか見当もつかない、材質不明の黒い橋が何本も大気の霞で視認できなくなる程遠くに伸びている。


「⋯⋯確か出た穴から左に二番目の橋を渡ると」

 ここからは普通に機獣が彷徨いてるから、気を付けろと店主が言っていた。

 気をつけようがつけなかろうが、出る時は出るのだから俺は走った。

 兎に角急ぎたかった。


 断線した、人間の身体より太いケーブルが垂れ下がる橋を騒音とか何も気にせずひた走る。

「む!」

 何かが俺を掴もうと上から突っ込んできた。

 咄嗟に拳で横に弾く。

 ふらつきながら再上昇したそれを視認する。


「機獣⋯⋯空を飛べるのもいるんだな」

 金属質の皮膜が張った両翼を持ち、四肢の先端は鋭い鉤爪。筋肉質の体躯にはコードがぶら下がり犬のような顔の両目は出っ張ったレンズが嵌っている。

 あの目で俺の視界外から見つけられたようだ。


 俺に殴られた箇所に傷が出来ていて、火花がスパークしている。ふらふらと安定しない羽ばたきは、どこか哀れに見える。

 便宜的に羽根犬と名付けるか。

「————っ!!!!」


 機獣に退却の二文字は存在しないらしい。

 俺に勝てる見込みなど無いだろうに、愚直に急降下してくる羽根犬。

 先を急ぎたい俺は、獣挽きに手をかける。すると俺が急いでるのを察したのか、獣挽きから勢いよく触手が射出され、突っ込んできていた羽根犬を絡め取った。


 四肢に纏わりつき、羽根犬を張り付けられたように伸ばす触手。

「ほぉ、役に立ってくれるじゃないか。そのまま抑えててくれ」

 触手の拘束はかなり固いのか、羽根犬はほぼ動くこともままならない様子。

 

 機獣相手でも慈悲の心は大切だ。

「———!!!!?」

 俺は羽根犬の胸に貫手を突き込み、機械の心臓を握り潰す。

 断末魔は一瞬。がくりと首が傾き、舌が垂れ下がる。レンズの眼からは何の感情も窺い知ることはできない。

 およそ僅かの苦しみもなかった筈だ。


「ありがとうな。もう離していいぞ」

 ビクッビクッと痙攣する死骸を降ろしてもらう。

「せっかくだ、このレンズくらいは持ち帰るか」

 眼窩から飛び出ているレンズ状の目を引き抜くと、汚れを払い腰のポーチに仕舞う。

 動かなくなった羽根犬を置いて、先を急ぐ。

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