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勧誘

「⋯⋯半ば無理矢理権限を渡しといて難だけど、貴方も一緒に来ない?」

 シュマを担ぎ、さぁ、村に帰るかと歩き出そうとする俺にカラマが誘いをかけてきた。ジャスペロダスは我関せずといった雰囲気で突っ立てる。


「俺にはやる事がある。今はついて行く事ができない」

 何しろ自分が何者なのか、機能以外はほとんど覚えていないのだ。目的の無い旅などしていられない。エンジュとの約束もあるしな。


「『今は』ね⋯⋯。これを持って行って」

 カラマが投げてよこしたのは、簡素な飾り気のない金属製のペンダント。

「貴方の優秀な武器に食べさせれば、解析して私たちのことを追えるはずよ。気が向いたら旅に付き合ってよ」


 アーマーモードを解除し、渡されたペンダントを獣挽きに渡す。触手で受け取った獣挽きは無言だ。

「⋯⋯考えておく」

 そう答えると、カラマは手をヒラヒラさせ部屋から出て行った。目的を果たしたらあっさりだな。何となくあの女っぽく感じる。


「俺からもコイツを渡しておく」

 後を追うジャスペロダスが、小さい何かを俺に親指で弾いてよこした。

「⋯⋯記録媒体か?」

 それは今ではなかなか残っていないチップタイプの記録媒体だった。


「そうだ。その中に俺の今までの戦闘記録が残されてる。お前さんらも探索は続けるんだろ? パワーだけじゃ守りたいものも守れんと思うぞ。ま、参考にするかどうかは好きにしな」

 むかつく機械人形だ。だが言ってることは間違っていない。

 

 あの隔絶した剣技を奴視点で観れるのなら非常にありがたい。使う剣の種別こそ違うが、参考にするべき技術はそれこそ腐るほどあるだろう。⋯⋯むかつくが。


「⋯⋯参考にさせて貰う。あくまで参考にだ」

「励めよ」

 鼓舞の言葉だが、どこか愉快そうな意地の悪い気配を感じる。俺の反応に満足したのか、カラマの後を追いジャスペロダスも部屋を出た。


「行っちゃったね」

「あぁ。掻き回すだけ掻き回して行ったが、得られたものはデカかったな」

 女王個体の問題が残ってるとは言え、管理権限が得られたのは僥倖だ。時間を作って、とっとと討伐してしまうか。


「さて、この部屋に上の階層に行くためのゲートがある筈だが⋯⋯」

 見渡す限りそれらしい入り口などは無い。まさか俺たちを騙して去って行くとは流石に思えないが。


「ゲートなら私が開けますよ、マスター」

 どことなく不機嫌そうな獣挽きがホログラムを浮かび上がらせる。

「開けられるのか」

「マザーをハッキングした時に既にこの辺りは掌握済みです」


 ふふん、と褒めて欲しそうな眼差しだったので本体を撫でておく。満足気な表情になったから正解だったみたいだ。

「わぁ! 貴女が獣挽きちゃんなのね! 本当に喋ってる、可愛い!!」

「私が可愛いのは当然です。マスターの優秀な武器なので」


 カラマに優秀と言われたのが地味に嬉しかったようだ。

「じゃあ、早速ゲートを開けてくれ。落ち着いてはいるようだが早めに医者に見せたい。悪いなエンジュ。コイツの紹介は村に帰ってからな」

 気絶したままのシュマだが、治癒促進剤が効いたのか顔色は悪いものの息遣いがゆっくりになっている。


「もちろんもちろん! あまりに獣挽きちゃんが可愛くてね、我慢しきれなかったわ! ⋯⋯セレンたちも変なトラブルに遭ってないといいけど」

 俺たちはとんでもないトラブルに見舞われたしな。ただ、セレンたちの方はそこまで危険がないエリアだし、こっち程ヤバいことは起きなさそうだ。


「あっちはクランで動いているしな、少数の俺たちよりは何かあっても対処はしやすいだろう」

「そうだよね。わかってるんだけど、なんか凄い目にあったから心配になっちゃって」


「彼女たちの無事も確かめたいしな、行くか」

「ゲート開けます」

 カチッと金属音が響くと、天井から階段が降りてきた。繋ぎ目など見当たらなかったが、そんなとこにゲートがあったんだな。

 

 シュマを肩に担ぎ直し、ジャスペロダスに託された僚機の腕を抱える。とてもこのままでは体格的にシュマの義手には出来なさそうだ。メギスにでも相談するか。

 フォトンブレードも獣挽きに持ってもらう。


 帰ったら少し休みたい。流石に戦闘モードを使いすぎた。精神にも肉体にも影響は出てしまうだろう。

「⋯⋯俺も疲れるものなんだな」

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