表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/122

帰還

『マザーの人格プログラムの削除を確認。スキュラの管理権限をプラグイン化して第三者に譲渡可能にもできますがどうしますか、マスター?』

 マザーの人格など残しておいても邪魔なだけだからな。様々な権限だけ残して獣挽きに消してもらった。


「そのスキュラ管理権限には、カラマが言っていた女王個体を操ったりはできるのか?」

 眼紐を管理する上で邪魔な存在になるだろう、まだ見ぬ女王個体。そいつを従えられたら管理も楽になると思うんだが。


『恐らく無理ですね。強い拒否反応を示す個体がいます。それが女王個体でしょうが、相当我が強いです。直接マスターが対処する方が早いと思います』

 拒否反応を示さない個体は、獣挽きが直接操れるんだろう。管理権限プラグインはコピーして、大元は獣挽きに持っていてもらうか。

「そうか。まぁ、多少遊んでやれば己の立場を嫌でも理解するだろう。⋯⋯とりあえずプラグイン化はしておいてくれ。ずっと俺が管理するつもりはないからな」


 一時的に管理者になってもいいが、ずっとは無理だ。

 今は忙しいから後回しにするが、近いうちに女王個体討伐に素材を取りがてら来るとしよう。

「⋯⋯助けてくれてありがとうございます。マザーは消えてしまったんですね」


 俺とカラマだけが残った電脳空間。

 僅かな悲哀を湛えた目で、感謝を告げてくる。どことなく空虚な響きだ。

「あれはとうに狂ってしまっていた。長く生きすぎたAIによくある」

 テミス様のようにまともに動いてる方が珍しいくらいだ。


「それでも寂しさを感じますね⋯⋯。母のような姉のようなそんな風に思っていましたし」

 AIであるカラマが、人間が感じるような家族に対する愛情など通常持ち得ない。この女もジャスペロダスと同じく、何かバグがあるのだろう。

 バグのおかげで狂わずにいられるとは、皮肉なものだ。


「感傷に浸っているところ悪いが、俺は急いでいる。さっさと基底空間に戻してくれ」

「⋯⋯少しくらい慰めていただいてもいいと思いますが?」

 冗談もいい加減にしろ。何しろシュマが片腕を失っているんだ。ここまで付き合ってやっただけ感謝してほしい。


「はぁ⋯⋯、わかりましたよすぐ戻します! 向こうと此方では時間の流れが違うので、そう心配することはないんですけどね」

 そうなのか。まぁ、それでも早く戻るに越したことはない。得るものは得たし。


「——」

 パチン、とカラマが指を鳴らす。

 一瞬の視界の振れの後、景色が切り替わった。


「⋯⋯戻ったか」

 ジャスペロダスが俺とカラマの意識が戻ったのを認識したのか、どこか安心したように声をかけてくる。

 戻ってみれば、感覚的には一秒もたっていないだろうというのがわかる。


「え、もう終わったの?」

 エンジュにとっては始まったと思ったら終わっているのだから、戸惑うのも理解できる。


「あぁ、トラブルもあったが概ね想定上の成果を得られた。眼紐の管理権限を手に入れられたのは素直に嬉しいな。まだ十全に行使できるわけではないが、今回の探索の目的は達成と考えていいと思うぞ」

「⋯⋯ありがとう、イオド。⋯⋯うわ」

 疲れ切った表情のエンジュが、ようやく少し安堵したのか、フラフラ近寄ってきたかと思うと倒れかかってきた。


 咄嗟に受け止めた。無理もない。俺がいない間シュマが奮闘したみたいだが、ジャスペロダスの僚機らしきドロイドに追われたんだ、生きた心地はしなかっただろう。

 顔色をよく見ると真っ青だ。


「⋯⋯丸薬を飲んだのか」

「飲まなきゃ死んでたと思う。⋯⋯飲んでもシュマが大怪我しちゃったけど」

 役に立てなかったと考えてるのか、表情が硬い。


「あれほどのドロイドが相手だったんだ、二人が生きていてくれて俺は嬉しいぞ。それにあのドロイドの腕を義手として使えるなら儲け物だと思う」

 俺ならそう考える。純粋な人間は違うかもしれないが、それしかかける言葉は見つからない。


「⋯⋯ありがとう」

 慰めの言葉が届いたかはわからないが、俺にできるのはここまでだ。後は当人たちの問題だ。


「村に帰ろう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ