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ビルに

 落下してくるシュマは、どうも怪我をしているかつ気絶しているように見える⋯というか右腕が見当たらない。相当な激戦だったと窺える。

「獣挽き、アーマーモードだ。あの様子だとうまく着地できない」

「任せてください!」


 獣挽きを装着した俺は、落下現場付近まで急行する。触手を伸ばし、なるべく衝撃を与えないよう回収する。

「イオド⋯⋯だよね? シュマが大変なの!」

「あぁ、ひどい傷だ。切断された腕は何処かわかるか?」

「うぅん。階層が崩れる時に見失っちゃった」


 あの瓦礫の崩れ方だと最早探しようが無い。何より出血が酷い。

 相当な熱量で焼き切られた跡が見えるが、一瞬で焼き切られたためか燃焼が続かず切断面からは血が鼓動と連動して吹き出している。


 早急に止血しなければ命に関わる。

 シュマの腰のポーチを探る。取り出した治癒促進剤を右肩に注入する。

「——ぐっ!」

 

 みるみる間に新しく生成された皮膚が傷口を覆っていく。

 一瞬苦しそうに呻いたシュマだが、意識を取り戻す事はなく相変わらず苦しそうな顔で眠っている。

 一刻を争う状況からは脱したが、早く村に連れて帰って医者に見せたい。


「⋯⋯コイツは、その男が討ち取ったのか?」

 胸部にエンジュの槍が突き立ったドロイドの側に、ジャスペロダスがいつの間にか立っていた。

 倒れたドロイドを見下ろす犬面のドロイドからは、飄々とした雰囲気が失せていた。


「⋯⋯どうなんだ? 一応、今はコイツは敵じゃない」

 警戒の顔をしたエンジュに聞く。まぁ、状況を見る限りエンジュの槍をシュマが使って戦ったんだろう。


「⋯⋯誰が討ち取ったか何故聞きたいの?」

 あぁ、エンジュが警戒してるのはただ怪しい戦闘ドロイドだからではなく、敵討ちに走る可能性を考慮してるのか。


「安心しな、あんたらをどうこうしようなんて思っちゃいないさ。ただ単純に生身でコイツを討ち取った勇士を知りたかったのさ」

 無機質な機械音声に哀愁すら漂っている。あまりに人間的な話し口に、エンジュが少し動揺しながらも応える。


「⋯⋯そう。シュマっていうの。彼が頑張って倒したのよ」

「そうか⋯⋯。迷惑かけちまったな」

 雰囲気からすると元は仲間だったりするんだろうか。正直興味はないが。


「助かった部分もあるから、あんまり責められないかな⋯⋯。先に巨大な眼紐が襲ってきたんだけど、そのドロイドが倒してくれたんだ。まぁ、私たちのためじゃないんだろうけど」

「眼紐⋯⋯、あぁ、あんたらはそう呼ぶのね。コイツは色々壊れちまってるけど、最優先撃破目標は機獣だからな。⋯⋯それにしても、装甲の隙間とはいえよくコイツを仕留められたなこの槍は。相当な業物だぞ。この男はそれに見合った実力者という訳か」


 倒れたドロイドの胸から、無造作に槍を引き抜くジャスペロダス。

 俺が造った槍を褒められるのは気分がいいが、間違いは訂正しないとな。

「シュマが実力者なのはその通りだが、その槍は俺がこっちのエンジュに造ってやったものだ。シュマのじゃない」


「——はっ!? ⋯⋯お嬢ちゃんには悪いが、とても使いこなせるようには見えないぞ?」

「護身用だ」

「護身にしちゃ命を刈り取る形過ぎるだろう!? というかお前さんが造ったのか! ⋯⋯変に戦うよりこっちの道に行ったほうがいいんじゃないか?」


「いつか武器屋を開くかもな。⋯⋯ところで、俺に会いたい奴がいるんだろ? 早く村に帰りたい。手短に願う」

「ま、まぁいいか。正直お嬢ちゃんにはもっと扱いやすいのがいいと思うがね。⋯⋯それよりも」


 槍をエンジュに手渡すとジャスペロダスは、おもむろに刀を抜き残骸と化したドロイドの右腕を切り取った。

「これをその男に。義手として使ってくれ。この腕があればフォトンブレードも使える筈だ」


「⋯⋯いいのか? お前に関係深い奴なんだろ?」

「まぁな。ケジメをつけるためずっと追っていたがな。勝者は戦利品を持つ権利がある。何よりこういう男にこそ、コイツの装備を使ってもらいたい」


 事情は知らないが、余程このドロイドを倒したシュマを評価してるらしい。

「わかった。目を覚ましたら渡しておく」

「頼む。⋯⋯じゃ、改めてついてきな。お嬢ちゃんたちも一緒で問題ない」


  ジャスペロダスに先導され、俺たちは気絶したシュマを担いで上の階層に続くビルに入った。

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