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停戦

「⋯⋯消し飛ばすつもりだったんだが、まさか赫穿を斬られるとは⋯⋯」

 不意打ちで放った、ジャスペロダスにとっては初見の攻撃。

 真っ二つに切り裂かれた赫の熱戦は、フォトンブレードに斬られた影響か上へ下へ偏光され暴れまくって消えた。


「ギリギリだったがな⋯⋯。コイツじゃなかったら刀ごと溶かされてただろうよ。ったく、一張羅がボロボロだよ」

 煙が晴れると、着物がボロ切れになってほぼドロイドの素体が露出してしまっているジャスペロダスが愚痴をこぼす。


 フォトンブレードもエネルギー切れか、完全に光を失っており鈍い金属の輝きのみだ。

「光学兵装とは相性が悪かったか⋯⋯。斬られることは想定してなかったな」

 正直、これで決めるつもりだったし決まると思った。フォトンブレードをおれはまだ甘く見積もっていたな。

 これ以上の戦闘モードでの戦闘は極めてリスクが高い。


 前回の低出力しか出せない緊急起動と違い、今回の戦闘モードは極めて高出力で運用している。

 撃ててもう一発。フォトンブレードが恐らく使えない今が最大の好機に思えるが、まだ奥の手を隠し持たれていたら最悪だ。

 

 ジャスペロダスもこちらの更なる奥の手を警戒しているのか、動きがない。まぁ、こっちにはもう奥の手など無いんだがな。


 お互い攻めあぐねている。なまじ互いに当たれば一撃で消し飛ぶ攻撃を持ってるし、更に次の手を持っていたら厄介だと理解したが故の硬直。


「なんだぁ、とっておきを斬られちまってビビってんのか?」

「そちらこそ、虎の子のフォトンブレードもただの鉄の棒になってしまったな」

「「⋯⋯っち」」

「⋯⋯マスター、珍しいですね⋯⋯」

 ジャスペロダスの人柄と言っていいのか、ロボ柄に当てられてるな。調子が狂う。


 いかんな。若干空気が弛緩してしまっている。

 このまま殺し合い、という雰囲気からは遠ざかった。

 だが俺はどうしても先に進まないといけない。それも迅速にだ。もうジャスペロダスとの戦闘にだいぶ時間を取られてる。


 何なら赫穿をジャスペロダスではなく階層の天井に向けて撃ってしまうか? 奴の後ろのビルに入って欲しく無いだけならそれが手っ取り早い。もうすでに戦闘モードな訳だし。


 チラッと上を見て距離を測っていると、

「⋯⋯待て。それは止めてくれないか? もう結構壊れちまってるし、それ以上階層に攻撃を加えるのは控えて貰いたいんだが⋯⋯」


 若干の焦りを孕んだ声音で制止してきた。

 考えてみれば、天井が崩れれば後ろのビルも無事では済まないだろう。先程の暴れ回った赫穿で、階層の至る所が溶解し崩れている。


「止めて欲しいなら、素直にそこを退け。ビルの中の何かを盗むつもりもない。ただ俺は上に戻りたいんだ。一刻も早くな」

「はい、そうですかって通せるなら最初から戦ってないんよ。⋯⋯あぁ、ったく。少し待て。俺の一存だけじゃ決められん」


 ジャスペロダスはそう言うと、何処か⋯⋯と言っても十中八九ビルの中とだろうが通信を始めた。

 もう戦闘モードは解除していい気がする。そろそろ侵蝕が許容範囲を越え始める。


 それに今更解除したところで、ジャスペロダスがこれ幸いと斬りかかってくるとは思えない。

 そういう卑怯さは持ち合わせていないと、少し交戦しただけだが判断できる。


「⋯⋯獣挽き、戦闘モードを解除する。いつでもアーマーモードになれるよう待機しててくれ」

「了解です、マスター」

「戦闘モード解除。通常モードへ移行する⋯⋯ふぅ」


 強制移行ではなかったから、現時点で変な負担はない。ただ少し戦闘モードでいた時間が長かった。侵蝕は進んでいるとみて間違い無いだろう。

 帰還したら久々にメンテナンスも兼ねて、ナノマシンを走らせるか。

 俺が今後について考えていると、向こうも話がついたのか通信を終わらせていた。


「⋯⋯ついて来い。お前さんの事を説明したんだが、どうも会ってみたいらしい。⋯⋯俺がボロボロになってまで戦った意味は何だったのかね? 奥の手まで出しちゃったよ⋯⋯」

 悲壮感漂う背を向けて、付いてくるよう示す。

 通信をしていた時点でわかっていたが、彼が守っていた人物がいるようだ。何だか振り回されている雰囲気だが、俺の知ったことでは無いな。


「⋯⋯ん?」

 ついていこうと一歩踏み出した時、少し離れた頭上から大きな崩れる音が聴こえた。

 目を向けると、今まさに何かが上の階層から天井を破って落ちてきている。

 槍が胸に突き立った⋯⋯あれは戦闘ドロイドか? まだいるな。⋯⋯はっ!?


「——シュマ! それにエンジュも!?」

 謎の戦闘ドロイドと共に落ちてきているのは、合流を目指していた二人だった。

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