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卑怯とは言うまいな

「⋯⋯コイツを抜いた時点で、俺にとっては負けも同然なのよ。コイツは小型とは言えフォトンブレード。およそ斬れないモノは存在しない、反則なの」


 ジャスペロダスと名乗ったドロイドは、口調を元の砕けた感じに戻したが、発する威圧感は毛ほども衰えていない。


「マスター、彼の言ってることは間違っていません。始まりの時代よりさらに以前に存在した最強の光学兵装です。⋯⋯現存してるとは思いませんでした」

 そんなに珍しい武器なんだな。単純にジャスペロダスの雰囲気がヤバいから目立ってなかったから要警戒だな。


「お前さん単体なら問題はなかったんだがね、その武器との相性が良過ぎるな。こっちは万が一にも負ける訳にはいかないんでね。⋯⋯卑怯とは言うまいね?」

 締めの言葉と共に小刀の刃から光のブレードが現出する。蒼く輝く刃は直刀で先程まで振るっていた刀と同程度の長さになった。


 なるほど。小刀の刃部分は光刃発生器だったわけか。光ってるとは言えあの短さでどうするのかと思ったが、これで脅威度はだいぶ増したな。

 やはり長さは正義だ。


「獣挽き、今の状態でチェンソーブレードは使えるのか?」

「いえ、使えません。ブレードモードはアーマーモードを解除しなければいけないので今は推奨しません」

 獣挽きの言いたいこともわかる。先程まで俺はジャスペロダスの剣に全く反応できていなかった。


 人型ボディと機械の動きの制約の少なさのギャップに翻弄されまくったからな。

 だが、負けられないのはこちらも同じだ。

 相手が負け同然の手札を切ったんだ、俺も応えなければいけないだろう。


「⋯⋯戦闘モードを起動する。君はブレードモードに変わってくれ。次で決める」

「——あれは身体に負担が掛かりすぎます! フォトンブレードが相手とは言え、アーマーモードでも充分対抗できるスペックはあります。⋯⋯第一あれは侵蝕が——」

「——頼む」

「⋯⋯長くは使用しないでくださいね」

 

 俺の懇願に、渋々折れてくれる獣挽き。アーマー状態が触手が解けるように解除されていく。

「⋯⋯俺に有利だったそれをわざわざ解除するってことは、お前さんも何か札を切ってくるのかね。——いいぜ? 何を出されようとただ斬って捨てるだけよ」


 顔は仮面で分からないが、声の調子から不敵に笑っているだろうことがありありと想像できる。

 とてもドロイドの感情表現とは思えん。コイツも、何かしらのエラー個体のようなモノなのだろう。


「⋯⋯戦闘モード全力起動。『異星侵蝕・煌燬赫熔ブライトバーン』!!」

 スキンスーツが装甲に造り替えられ、顔の周りに黒い靄が纏わりつく。

「獣挽き、俺と接続しろ。力場、もう使えるんだろう? 全力で回すんだ」

「⋯⋯確かにエネルギーさえ足りていれば使えますが、マスターの負担が増えますよ? フォトンブレードと打ち合うなら相当なエネルギーが必要になりますし⋯⋯」

「問題ない。長く変わっていたくない。一気に決める」


 ブレードモードの獣挽きから触手が一本伸びてきて、俺に接続する。次第に、刃を成している牙の群れから陽炎のように淡い光が輝き出した。

 揺らぐ光の様子から、エラー個体の力場よりエネルギーの密度が濃いように見受けられる。


「ははっ、とんでもないのを隠してたな! ⋯⋯まぁ、それなら出し渋るのも納得だがね。俺は走査系はあまり良いの積んでないけど、それでもわかるくらいにはヤバいな。使わせといてなんだけど、あんまり使わないほうがいいぜ?」

「——邪魔なドロイドを解体したら、使用を控えるとするよ」

「ふふ、笑えるな。——この武器には技はない。ただ斬るそれだけで事が足りるからな。やっぱ止めたを言うなら、ここがデッドラインだぜ?」


 思考加速した視界の中、ジャスペロダスの動きの起こり。僅かな身体の沈み込みを俺は見逃さなかった。

「⋯⋯言う暇くらいはくれてもいいんじゃないか?」

「どうせお前さんは言わないだろう? 時間の無駄は嫌いなんだ」


 神速の横薙ぎを力場を全力展開した獣挽きで受ける。

 僅かな驚きを孕んだジャスペロダスの機械音声。


 鍔迫り合いは好ましくない。フォトンブレードを弾く力場の展開にガリガリとエネルギーを削られていくのがわかる。

 弾く。打ち込まれる。

 数合打ち合い、削られた力場の光が粒子になって煌めく。見えていても僅かずつ身体が斬られる。無理矢理剣を振るって距離を取る。


「———見えてるね。それにその武器は異常だよ。やんなっちゃうねフォトンブレードと打ち合える武器なんてさ。強引にスペックを上げれば対処できると思われるのは癪だけど、燃費は良くなさそうだね?」

「そうだな。だが何度か斬り結んで確信した事がある」

「何だよ? 剣の腕じゃ俺に勝てないってか?」

「それは割と最初からわかってた。⋯⋯俺が確信したのは、お前は相手に正道を求めすぎだという事だ」


 先程まではできなかった事。戦闘モードを全力で稼働しているからこその強引な一手。両眼にエネルギーを極限まで集中。

「——赫穿!!」

 赫い光の奔流を解き放った。

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