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このスキル、やばスギル ~ガチャ沼に堕ちたら俺の負け~  作者: 明日乃風
第一章「逃げ場所から始まる生活」

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第3話 無料の一回だけ。だからヤバくない

一気に3話書きました 読んでください


「確認するぞ。今日は水を取りに行くだけだ」


 俺は《淫獄》の出口を前にして、人差し指を立てた。


「寄り道しない。知らないものには近づかない。戦わない。危険を感じたら即座に戻る」


「はい」


「これは冒険じゃない。生活物資の回収だ」


「はい」


「命を懸けて未知の世界を探索するとか、そういう話では断じてない」


「分かりました」


 ファステは素直にうなずいた。


 ただ、その口元がわずかに緩んでいる。


「……何かおかしいか?」


「同じことをお聞きするのが、これで三度目でしたので」


「大事なことだからな」


 危険を避けるには、事前確認が重要だ。


 決して外へ出るのが怖くて、決心がつかないわけではない。


 これは合理的な安全確認である。


 第1話で異世界へ放り出され、第2話では水も食料もないという現実を突きつけられた。


 それでも、俺とファステは少しの間、《淫獄》で身体を休めることができた。


 だが、休んでいるだけでは水も食料も湧いてこない。


 俺の理想とは違い、《淫獄》は素材を自動生産してくれる便利な拠点ではなかった。


 今のところ、安全なだけの灰色の箱だ。


 ファステが逃げる途中で見たという小さな水の流れ。


 まずは、そこを目指す。


「ファステ。本当に歩けるか?」


「はい。先ほど休ませていただきましたから」


「無理はするなよ」


「夜斗様こそ」


「俺?」


「先ほど、少し歩いただけで息を切らしていたと……」


「過去の話だ」


 数時間も経っていないけど。


 俺はファステと一緒に外へ出た。


     ◇


「水だけ。寄り道なし。戦闘なし」


「四度目です」


「声に出したほうが覚えやすいんだ」


 背の高い草をかき分けながら進む。


 先を歩こうとするファステを何度か止め、俺たちは互いに離れない距離を保っていた。


 どちらが前でも、戦力的には大差ない。


 それなら、せめて一人だけが危険へ近づく形は避けたかった。


「こちらです。もう少し進めば、水の音が聞こえると思います」


 ファステの言葉どおり、やがて微かな水音が聞こえてきた。


「本当にあった……」


「疑っていたのですか?」


「違う。感動してるんだ」


 飲み水に感動する日が来るとは思わなかった。


 日本にいた頃は、蛇口をひねればいくらでも出てきたのに。


 水音へ近づくにつれ、乾いていた喉が急に存在を主張し始める。


 木々の隙間から、光を反射する水面が見えた。


「よし。目的地到着――」


 低い唸り声が聞こえた。


 俺とファステの足が同時に止まる。


 水場近くの茂みが揺れた。


 暗がりの中で、何かの目らしきものがこちらを見ている。


 一つ。


 いや、その隣にもある気がする。


 そもそも、本当に目なのかどうかも分からない。


「夜斗様……」


「分かってる。静かに下がるぞ」


 俺は足元に落ちていた枝を拾った。


 前回より少し太い。


 だから何だという話だ。


 これで戦えるなら、俺はとっくに剣士を名乗っている。


 茂みから再び唸り声が響く。


 影が一歩、こちらへ近づいた。


「帰るぞ!」


 俺はファステの手をつかみ、《淫獄》への帰還を強く念じた。


     ◇


 次の瞬間、俺たちは灰色の床へ転がり込んでいた。


 水はない。


 食料もない。


 代わりに、命はある。


「これは撤退じゃない。戦略的撤退だ」


 床へ座り込んだまま、俺は宣言した。


「同じでは?」


「気分が違う」


 俺たちは水場を見つけた。


 だが、そこへ行けなかった。


 相手の正体も数も分からない。戦えるかどうか以前に、危険を判断する能力が二人ともないのだ。


 毎回、運よく何も出ないことを祈りながら水を取りに行く。


 そんな生活は長続きしない。


「申し訳ありません。私が、もっと周囲をよく見ていれば」


「ファステのせいじゃない。俺も何も分からなかった」


「ですが、水を持ち帰れませんでした」


「問題はそこだな」


 外界で安定して生活物資を集めるには、戦える人間が必要だ。


 少なくとも、危険を見つけ、戦うべきか逃げるべきか判断できる人物。


 俺とファステを守りながら歩ける護衛。


 そこまで考えたところで、頭の隅に昨日の表示が浮かんだ。


『《住民召喚》』


『通常単召喚』


『初回必要《淫獄石》:無料』


「これはガチャを回したいわけじゃない」


「がちゃ?」


 ファステが首をかしげる。


「誰が来るか分からない召喚だ。俺のいた世界では、そういう仕組みをガチャと呼んだ」


「それを、使うのですか?」


「必要だからな」


 即答した。


「俺たちには戦力がない。水を取りに行くことすらできなかった。このままじゃ生活基盤を作る以前の問題だ」


「はい」


「だから、戦える住民を増やす。生存と水の確保と《淫獄》の発展に必要な判断だ」


「誰が来るかは分からないのですよね?」


「そこが問題なんだけど……初回は無料だ」


 つまり損はない。


 しかも一回だけ。


 一度使える機能か確かめるだけなら、ガチャにハマったことにはならない。


 俺は合理的に考えている。


 水場から逃げ帰った直後だから回したくなったわけではない。


「ファステは、どう思う?」


「夜斗様が必要だと思われるのでしたら」


「反対はしないのか?」


「この場所のことは、夜斗様のほうがご存じですから。ただ……」


 ファステは少し迷い、続けた。


「新しく来る方が、怖い方ではないとよいのですが」


 もっともな意見だった。


 成人女性が来るということしか分からない。


 戦える人が欲しいと思っても、戦闘能力のない人物が来る可能性だってある。


 それどころか、俺たちと敵対するかもしれない。


 それでも、今のままでは何も変わらない。


「よし。回す」


 俺は《住民召喚》を開いた。


『通常単召喚を実行しますか?』


『初回必要《淫獄石》:無料』


 所持している《淫獄石》は一個。


 だが、初回無料なら減らない。


「念のため言っておくけど、これは必要だからだ」


「はい」


「無料だから飛びついたわけじゃない」


「はい」


「一回だけだからな」


「私は何も聞いていませんが」


 俺は表示へ意識を集中させた。


「通常単召喚、実行」


 灰色の空間に光が走った。


 床の中央へ淡い光が集まり、渦を巻く。


 派手だ。


 初めて見る演出に、心臓が早くなる。


 俺は別にガチャが好きなわけではない。


 ただ、結果が分からないものを待つ瞬間に少し興奮しているだけだ。


 それをガチャが好きというのでは、と指摘する人間はここにはいない。


 光の上に、最初の文字が現れた。


 **R**


「Rか……」


 最高レアではなさそうだ。


 いや、待て。


 レアリティだけで人間を判断するのはよくない。


 俺が自分に言い聞かせている間に、次の表示が浮かぶ。


 **《最後まで残った傭兵》**


「傭兵?」


 戦える。


 その一言だけで、期待が一気に跳ね上がった。


 最後に、名前が表示される。


 **リゼ・アルノール**


 すべての文字が一つに重なった。


 **R《最後まで残った傭兵》リゼ・アルノール**


 直後、光の中から一人の女性が現れた。


『リゼ・アルノールを《住民》として登録しました』


     ◇


 最初に見えたのは、俺へ向けられた刃だった。


「動くな」


「はい」


 俺は即座に両手を上げた。


 光の中から現れた女性――リゼは、完全な戦闘態勢だった。


 戦闘用の服と防具。


 汚れた外套。


 手には武器。


 腰には小ぶりな水袋らしきものもある。


 何より、その目が怖い。


 ファステの怯えた目とは違う。


 次に誰が動けば斬るかを、本気で見定めている目だ。


「ここはどこだ。お前たち、あいつらの仲間か?」


「違う! 少なくとも俺は、戦場に立てるような人間じゃない!」


 リゼは俺を上から下まで見る。


「見れば分かる」


「判断が早いな!」


 事実だけど。


 俺の後ろで、ファステも緊張している。


 リゼは武器を向けたまま視線を巡らせた。


「敵はどこだ」


「ここにはいない」


「私の仲間は?」


「分からない」


 空気が一気に冷えた。


「分からないだと?」


「俺たちも、君がどこから来たのか知らないんだ。俺が初めて《住民召喚》を使ったら、君がここへ現れた」


「召喚……?」


 リゼの視線が鋭くなる。


「私を呼んだのは、お前か」


「結果的には、そうなる」


「元へ戻せ」


「方法が分からない」


「役に立たない召喚主だな」


「初対面で評価が確定するの早すぎないか?」


「なら、役に立つところを見せろ」


「難しいことを言うな……」


 リゼはしばらく俺をにらんでいた。


 だが、すぐに襲いかかってはこなかった。


 俺とファステに戦う力がないことは、とっくに見抜いているのだろう。


 やがて、武器の切っ先がわずかに下がる。


「何があったんだ?」


 俺が尋ねると、リゼの表情が険しくなった。


「戦っていた」


「誰と?」


「説明しても、お前には分からないだろ」


 否定できない。


「仲間を先に行かせた。追いつかせないために、私が残った」


「一人で?」


「殿は最後まで残るものだ」


「それで……」


「敵に囲まれた。次の瞬間にはここだ」


 短い説明だった。


 だが、表示された二つ名の意味を理解するには十分だった。


 最後まで残った傭兵。


 格好いい肩書きだと思った。


 戦える住民が来たと喜んだ。


 けれど、リゼにとっては格好いい二つ名で済む話ではない。


 彼女には仲間がいる。


 守るために残った戦場がある。


 その結末を知ることもできず、突然ここへ連れてこられた。


 俺の知らない場所で、俺の知らない時間を生きてきた一人の人間。


 画面から出てきた便利なキャラクターではない。


「仲間が逃げ切ったか、分からないんだな」


「ああ」


 リゼはそれだけ答えた。


 俺には、気休めを言うこともできなかった。


「失礼します」


 ファステが控えめに声をかける。


「あなた、お怪我をされています」


「この程度は傷に入らない」


「ですが、血が」


「止まってる。問題ない」


 そう言ったリゼが、今度はファステを見る。


 視線が汚れた服、痩せた身体、疲労の残る顔を順番に確認した。


「人の心配をしてる場合か。お前、今にも倒れそうだぞ」


「私は大丈夫です」


「その台詞を信用するほど馬鹿じゃない。座ってろ。倒れられるほうが面倒だ」


「ですが、あなたもお怪我を」


「私は動ける。そっちの召喚主は……」


「俺を見るな」


 リゼは遠慮なく俺を観察した。


「戦えない」


「知ってる」


「体力もなさそうだ」


「否定はしない」


「危険への備えもない」


「今日この世界へ来たばかりなんだ」


「面倒なのが二人もいる」


 口ではそう言いながら、リゼはファステが座るまで視線を外さなかった。


「召喚されたばかりなのに、もう面倒を見る側へ回ってないか?」


「勘違いするな。放っておくと死にそうだから仕方なくだ」


 それを面倒見がいいというのではないだろうか。


 言えば怒られそうなので黙っておく。


     ◇


 リゼ自身の傷も、そのままにはできなかった。


 ファステが何度か頼むと、リゼは面倒そうに外套を脱いだ。


 続いて防具の一部を外し、傷の状態を確かめる。


 戦闘衣の隙間から、鍛えられた肩や腹部がのぞいた。


 細く見えていたが、無駄のない筋肉がついている。


 ファステとはまったく違う。


 戦場を生き抜いてきた身体だ。


「さっきから、どこ見てる?」


「傷だ。傷を見てた」


「私の傷は顔についてるのか?」


「……すみませんでした」


「正直でよろしい」


 リゼはまったく恥ずかしがっていない。


 むしろ、俺が慌てる様子を見て口元を歪めている。


 ファステの服が破れていたときとは、立場が逆だ。


「夜斗様。傷を確認するのでしたら、もう少し真面目にお願いします」


「ファステまで冷たくないか?」


「ふふっ」


「笑ったな?」


「いいえ」


 絶対に笑った。


 幸い、リゼの傷はすぐに動けなくなるほど深いものではないらしい。


 ただし、本当に問題がないかは俺には判断できない。


 ファステは汚れを落とす水も布もないことを悔しそうにしていた。


「そうだ。水だ」


 俺は思い出した。


「俺たちは水を取りに行こうとしてたんだ」


「それで?」


「水場の近くに何かいた。唸り声がして、俺たちだけじゃ危険かどうかも分からなかった」


「それで逃げたのか」


「戦略的撤退だ」


「同じだろ」


 今日二度目の指摘である。


「リゼ。頼めるか?」


「何をだ」


「俺たちを、水場まで守ってほしい」


 リゼは黙って俺を見る。


 召喚されたからといって、俺へ従う理由はない。


 仲間のことも気になっているはずだ。


「俺は戦えない。ファステも戦闘担当じゃない。でも、水がなければ三人とも困る」


「三人、か」


「システム上は、リゼも《住民》として表示されてる。でも、それを理由に命令するつもりはない」


 俺はリゼの目を見て続けた。


「これは命令じゃなくて、俺からの依頼だ。嫌なら断ってくれていい」


 リゼは不機嫌そうに眉を寄せた。


 俺の言葉を信用したわけではないだろう。


 ただ、少なくとも武器を向けて無理やり従わせるつもりがないことは伝わったらしい。


「状況を詳しく話せ。水場までの距離、獣を見た場所、お前たちが気づいたこと全部だ」


「引き受けてくれるのか?」


「放っておいたら、また枝一本で獣と戦おうとするんだろ」


「戦ってない。撤退した」


「威張るな」


 リゼは武器と防具を整え、立ち上がった。


「案内しろ。私が前を歩く」


     ◇


 同じ道のはずなのに、二度目はまるで違って見えた。


 先頭はリゼ。


 その後ろでファステが道を案内し、俺は最後についていく。


 リゼは何度も立ち止まった。


 地面の跡を見る。


 倒れた草へ触れる。


 風と物音を確かめる。


 俺には何もないようにしか見えない場所から、いくつもの情報を拾っていた。


「止まれ」


 リゼが片手を上げる。


 俺とファステはすぐに足を止めた。


「右の茂みを避ける。少し回るぞ」


「何かいるのか?」


「通った跡が新しい」


 俺にはただの草むらにしか見えない。


 言われて初めて、一部の草が倒れていると気づいた。


「よく分かるな」


「分からなければ傭兵なんて続けられない」


 水場が近づく。


 先ほどと同じ低い唸り声が響いた。


 茂みから獣の影が飛び出す。


「下がってろ!」


 リゼが前へ出た。


 刃が一閃する。


 獣の突進が止まり、土を蹴って距離を取った。


 リゼは深追いしない。


 俺たちと水場の間へ立ち、相手の動きを見続ける。


 やがて獣は低く唸りながら、森の奥へ消えていった。


「今のうちだ。水を取れ」


「た、倒さなくていいのか?」


「必要ない。目的は水だろ」


「そうだった」


 俺は戦いに見とれて、危うく目的を忘れるところだった。


 ファステと一緒に水場へ近づく。


 まず三人で最低限の水分を取った。


 冷たい水が乾いた喉を通っていく。


「生き返る……」


「大げさだな」


「蛇口のありがたさを失って初めて知ったんだ」


「何の話だ?」


「俺のいた世界の話」


 リゼが持っていた水袋にも、持ち帰る分を入れる。


 食料も探したかったが、今日は欲張らない。


 水だけ。


 寄り道なし。


 それが最初に決めた方針だ。


「戻ろう」


 俺が言うと、リゼが意外そうにこちらを見た。


「食い物は探さないのか?」


「今日は水を確保するのが目的だ。これ以上危険を増やさない」


「少しはまともな判断もできるらしいな」


「俺を何だと思ってる?」


「枝を持って獣に近づく馬鹿」


「近づいてない!」


 帰り道もリゼが先頭を歩いた。


 俺とファステだけではたどり着けなかった水場。


 リゼが一人加わっただけで、俺たちは水を飲み、持ち帰ることまでできた。


 ガチャを一度回した結果、生活が本当に前へ進んだ。


     ◇


 《淫獄》へ戻る。


 灰色の床と壁しかないことは変わらない。


 家具も、食料も、寝床もない。


 それでも今は、リゼの水袋に飲み水が入っている。


「すぐ全部飲まず、必要な分を考えて使いましょう」


 ファステが水袋を大切そうに受け取った。


「次に外へ出るときは、もっと水を運べるものが必要ですね」


「保存する場所もだな」


「水場までの道も、毎回同じとは限らない」


 リゼが口を挟む。


「獣は移動する。今日安全だった道が、次も安全だと思うな」


「分かった。次も頼めるか?」


「必要なら言え。勝手に死なれると後味が悪い」


 文句を言いながら、すでに次の護衛まで考えてくれている。


 本人は認めないだろうが、本当に面倒見がいい。


 ただし、それはリゼが俺へ忠誠を誓ったという意味ではない。


 頼まれたから引き受けた。


 俺とファステを放っておけなかった。


 今は、それだけだ。


 リゼが来た。


 外へ出られた。


 水場へたどり着けた。


 ファステを危険にさらす可能性も下がった。


 《淫獄》での生活が、わずかだが確実に改善した。


 誰が来るか分からない。


 来た相手が俺へ従うとも限らない。


 実際、リゼは俺へ武器を向けた。


 仲間のもとへ戻せとも言われた。


 それでも今回に限って言えば、俺たちが欲しかった役割を持つ人物が来てくれた。


 無料の一回で、生活が目に見えて改善した。


 ガチャは合理的ではない。


 そう思っていた。


 けれど、必要な場面なら使う価値はあるのかもしれない。


 もちろん、だからといってハマったわけではない。


 俺は《住民召喚》の画面を開いた。


『通常単召喚』


『召喚回数:1』


『次回必要《淫獄石》:100』


「百個か」


 現在の所持数は一個。


 次を回すには、あと九十九個必要になる。


 ――あと九十九個。


 そこまで考えてから、俺は固まった。


 なぜ俺は、すでに次を回す前提で引き算をした?


「別に次を回したいわけじゃない」


「何も聞いていませんが」


 ファステが首をかしげる。


「一応、必要数を確認してるだけだ」


「そうですか」


「今日の召喚が役に立ったからって、次も同じとは限らない。誰が来るか分からないんだから、安易に回すべきじゃない」


「なら、画面を閉じたらどうだ」


 リゼに言われ、俺は表示を消した。


 正論で殴るのはやめてほしい。


 俺はガチャなんかにハマっていない。


 今回は水を確保するために必要だった。


 しかも無料だった。


 だから回した。


 ただ、それだけだ。


 次を回したいわけではない。


 本当に、必要数を確認しただけである。


 それなのに、消したはずの表示よりも鮮明に、一つの数字が頭へ残っていた。


 あと九十九個。

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